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自称悪役聖女は今度こそ生き延びます!  作者: りおん
ネタバレ後 主要シーン切り抜き(なお時系列はランダム)
35/37

本当の名前は

内容も設定もあんま覚えてないけど書きました()

流れにスピード感ありすぎて微妙に感動できないですがご容赦ください


あと、シェリア目線にし損ねました

「ねぇ、キース?ずっと聞きたかったことがあるの」




今までの人生ではなかなか会えなかった第3王子だが

今回の人生では、なんだかんだ第1王子であるエドガーより会っている気がする



「ん?どうしたの?急に改まって」



キースの別荘で当たり前のようにお茶を飲んでいるこの光景も、最近では違和感を感じなくなっていた





「あなたの、本当の名前は?」



シェリアの言葉に、ティーカップを持とうとしていたキースの動きが止まる



「僕は派生しただけの人格だから、本当の名前って言うならエドガーだろうね」



よく見ていなければわからない程度ではあるが、キースは動揺していた



第1王子であるエドガーが王位を継承すると決まっているため、本名もエドガーであると公表している



「いいえ。あなたの名前はエドガーでもフィリップでもキースでもないわ」




「...どうしてそう思うの」



それは肯定ともとれる言葉だったが、理由を聞くまでは認めないという意思を感じる言葉でもあった




「予想ではないわ。事実よ」




実際は、今までの人生でそれを知ったからなのだが

シェリアはそれを説明しようとは思わなかった



「...覚えてないんだ」



「それは、人格を作り出す以前の自分を思い出せないってこと?」



「っ!...やっぱり、僕が多重人格じゃないって気付いてたんだね」



驚いてはいるものの、何となく予想はしていたらしいキースは自重気味に笑った




「何となくは、わかるんだ。

エドガーの人格は本当の性格とかけ離れてること。

フィリップの人格は僕の願望だったこと。

キースの人格は僕の心の中を体現してること。

そういう意味では、僕が1番近いのかもしれない。まぁ、そもそも本当の性格なんてのが何なのかなんて、わからないのかもしれないけど」




「それで、名前も忘れちゃったの?」




「必要なかったからね。元の人格は王子として合わなすぎたんだ」




「そうなの。国王様みたいな性格だったのかしら?」



「いや、無能ではあるけど王としてはある意味間違ってないよ。

僕はむしろ庶民みたいな考え方をしていたんだ」



「なら、王妃様に似たのかしら?」



「そう...かもね。母さんは元々庶民だったし、ずっと母さんに育てられてきたから

僕は気弱だったけど、母さんに強く生きる方法を教えてもらったんだ」



「じゃあ、あなたは一生懸命強く生きようとする人だったのね」



「そう...僕は...あれ?」



いつのまにか涙を流すキースに、シェリアは微笑む



「なんだ、覚えているんじゃない」



「...母さんは死んだんだ。無能な父のせいで。だから強くなろうとした。けど、気弱なオレじゃ無理だと思った、だからっ」



泣きじゃくりながら苦しそうに声を絞り出す"彼"に、シェリアは背中をさすりながら声をかける



「大丈夫よ、落ち着いて。大丈夫。

王妃様が死んだのはあなたのせいじゃない。あなたが弱いからじゃないわ」



だんだん落ち着いてきた"彼"に、シェリアは諭すように言葉を並べる



「だから、思い出していいのよ。...ロータス」



その言葉に、"彼"は驚いたように顔を上げた




「ロータス...そう、だ。オレの名前は...ロータスだった」



噛みしめるように自分の名前を何度も口にすると、ふと気付いたようにシェリアの方を向いた



「なぁ、聖女様。あなたの名前は何なんだ?」




「えっ?名前?」




何千年と、一度だって呼ばれなかった名前

自分ですら言ったことのない名前は、忘れていてもおかしくなかった



「...シェリア」



でも、想像に反してその言葉は自然と出てきて

親の顔もわからないシェリアが、誰につけてもらったものだったのかも思い出せなくて


それでも、シェリアはこの名前が大切なものだった気がした

何千年と忘れることができなかった、自分の名前を初めて口にした時、何となく照れ臭くてそっぽを向いた



「シェリアか...いい名前だな」



「ロータス、あなたもね」





そう言って楽しそうに笑う2人は、王子でも聖女でもなく

この時だけはただの友として笑っていた

召喚直前にネアに名前をつけてもらって以来、一度も言ったことなかった名前を何千年経って覚えてるってすごいね。ネアのこと大好きだね、すごい怖がってたけど。


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