お前の眼に映る色は
前回のエドガーとシェリアの接触から中庭での接触までの、エドガーsideです
『聖女』が何を考えているのかを理解するために、とりあえず行動を監視することにした
普段はキツイ態度であたり、1人でいる『聖女』だが
ふとした瞬間に人を労ったり、お礼を述べたりしている
(様子を見る限り、こっちが素のようだな)
つまり優しい方が素で、無理して高圧的な態度つくっているという予想は正しかったらしい
(理由は、未だにわからないが)
その後もしばらく監視を続けていると
『聖女』は庭に咲くある花を愛でていることに気づいた
(あの花...何かあった気がするんだが)
花になど興味がなかったので、噂程度のことしかわからない
(調べてみるか)
『聖女』を知る手がかりになるかもしれないと、早速行動に移す
人に聞いたり本を読んだりと、いろいろ調べるうちに
あの花はクリスタルローズと呼ばれ、人によって見える色が違うらしいということがわかった。
人によって見える色が違う。
ならば
(『聖女』は何色に見えているのだろうか)
どう見ても水色にしか見えない花だが、『聖女』には別の色に見えているかもしれない
だいたいの人は色が見えないらしいが、あれだけ愛でているということは、少なくとも色は見えるということだろう
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ある日エドガーが1人で散歩をしていると
『聖女』がいつもの小さな庭ではなく、いつも俺が使っている中庭に向かうのを見かけた
(聞いてみるか)
聖女の後を追うと、いつものようにクリスタルローズを見ている
「聖女様も散歩か?」
後ろから声をかけると『聖女』は俺の声にビクッと震える
(声だけで俺だとわかるのか)
嬉しいような悲しいような、複雑な気分になりつつ
恐る恐る振り向く『聖女』を見つめる
ニコニコしながら返事を待っていると
『聖女』は口をパクパクしながら、しばらくしてやっと声を出した
「ご、ご機嫌麗しゅう...」
咄嗟のことに、完全に"素"の方になってしまっている。
その様子に必死に笑いを堪えつつ、ずっと気になっていたことを聞く
「そこにある花が好きなのか?」
俺はクリスタルローズを見ながら『聖女』に尋ねる
「このピンクの花の話ですの...?まぁ、嫌いではないですけれど」
今さら取り繕っても仕方ないだろうとは思いつつ
そんなことより、と『ピンクの花』という言葉に衝撃を受けていた
(ピンク!『聖女』はずっとピンクの花を見ていたのか)
本当に違う色に見えるのだと、思わず声が出てしまった
しかしクリスタルローズについては知らなそうだ。
王宮のことについてはあんなにも知っているのに珍しいと思いつつ
せっかくなのでクリスタルローズについて説明することにした
俺がクリスタルローズについて説明していると、『聖女』は呆けた顔になる
(俺が花について語るのはそんなにおかしいか?)
確かに、花に興味などない。
でも『エドガー』は花に詳しくてもおかしくない性格をしているはずだ
いつまでも呆気にとられている『聖女』
(ふむ。ならば人によって見える色が違うことを教えたら、この単純な『聖女』はもっとアホみたいに驚くに違いない)
その様子を想像したエドガーは、思わず性格の悪い笑みを浮かべてしまう
その様子に気づいたのか、呆けた顔をやめて『聖女』は少し身構えてしまった
(おっと、思わず素が出てしまった)
気を取り直し、エドガーは口を開く
「聖女さまはピンクと言ったが、俺には水色、要は青に見える」
「はっ?」
顔だけでなく声までアホっぽい。
(さすが、期待に応えてくれるじゃないか)
笑い出したい衝動を堪えつつ、エドガーはクリスタルローズについての説明をしていく
「ほとんどの人は雑草に見える」という言葉に少し反応していたが、
好きな花を雑草扱いされたことが嫌だったのだろうか
まぁいいかと特に気にせず、『聖女』なら色が違って見える理由がわかるかもしれないとだけ伝えてその場を離れた
自室に戻り、エドガーは『聖女』の言葉を思い出す
「そうか...ピンクか...」
『聖女』の見ている景色を少し共有できた気がして、エドガーは無意識に頬を緩めていた
マルクとシェリアの出会い編(むしろエドガーとの出会い)の、エドガーsideはこれだけで終わりです
次回からはシェリア目線に戻り
別の警戒対象と、シェリア専用の侍女が出てきます(たぶん)




