私は悪役聖女になるのです
「おぉ!」
右にいた騎士が歓喜の声を上げるのを見て、私は心の中でため息をつく
(『こんなところで喜んでないで早く帰った方がいいんじゃない?奥さん浮気してるよ』
なんて、まぁ言ったところで信じないだろうけど)
「成功だ!」
今度は左にいた騎士が嬉しそうに叫んだ
(1ヶ月後にはリストラされるのにあんなに喜んじゃって。
まぁ、私には関係のないことだけど)
その声を皮切りに周りが騒ぎ出したが
その中心ともいうべき私は特に何も感じていなかった
現在、王宮の広間の真ん中に大きな魔法陣が描かれており
その真ん中で座っているのがこの私、シェリア。
この世界にある唯一の召喚術、『聖女召喚』によって喚び出された直後だ。
「異世界からきた聖女よ。突然のことで戸惑ってはいるだろうが話を聞いてほしい。5年後、我が軍は魔王軍の殲滅を開始する。その時、此方の力を使って助力してほしいのだ」
前に座っていた王様が、何度聞いたかわからない言葉を話しだす
そう、私がこの世界のこの時間に召喚されたのは初めてではない。
そもそも『異世界からきた聖女』というのが間違っている。
なぜなら私はこの世界で死に、そしてこの時間にまた召喚されているだけなのだから。感覚的にはただのタイムリープだ。
いや、もしかしたら最初は異世界からきたのかもしれない。もう覚えていないが。
王様の言葉を全部聞き流しつつ
そういえば、と前回の人生を思い出していた
前回も同様、シェリアはこの世界に召喚され
そして聖女としての役割を全うできずに人生を終えた。
そう、今まで1度も聖女としての役割を全うできたことなどない。
なぜなら魔王軍殲滅の予定は5年後。そして私は3年後に何者かに殺されるのだ。
私は今まで、必死にその未来を変えようと奔走した。
召喚された瞬間に未来のことを全て話してみたりとか
王宮の人と関わりを多く持ってみたりとか
むしろ関わらないようにしたりとか
それはもう端からやっていった。
そして前回をもって、その全てを終えたのだ。
にも関わらず3年後に殺された。
いつもと同じように、背後から刃物で一刺し。
あぁ、もうこの運命は変えられないのか
そんな絶望と共に今回の召喚に至ったわけだが
シェリアはふと気付いた
自分の思いつく限りのパターン
それは大前提として「犯人に嫌われなければ殺されない」というものがあった
それはそうだろう。普通、殺すということはその人に恨みがあるということだ
しかし、そもそもシェリアは最初から誰かに嫌われた記憶など一切なかった。好かれた記憶も一切なかったが。
つまりいくら好かれようとしてもみんなシェリアに無関心なのだ。聖女というモノとしてしか見ていない。
(なら逆に嫌われるのなら簡単なんじゃないかしら?...そうよ!むしろ3年経つ前に王宮中の人間に嫌われて追い出されればいいのよ!そしたら殺されることもないわ!!)
そして
シェリアは新たな決意を胸に、未だにペラペラ喋っている王様を見つめた
(これからは悪役聖女として生きるのよ!)
しかしその決意が多くの波乱を呼び、想像もしない展開になることをシェリアが知るのは、もっと先の話だった
鈍感系女主人公の逆ハーレム譚です
頑張って書きます、よろしくお願いします!