殺神依頼(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の新たな物語。
その夜。龍は雲雀の店に集まった死獣神メンバーに、その時のことを話した。
「手ぇかざしただけで傷を治す力か……まるでペガサスみたいやな」
「違いねぇ。ま、そっちの方は大方の予想がつくからともかくとして、俺としてはその太陽神教ってのが、どうも気になる。人智を超えた力を持ってる子を担ぎ上げるなんて、まるでタチの悪いカルト教団みてぇだ」
幼い少女を利用していることに、フェミニストである翔馬が腹を立て、不機嫌そうに言うと、武文は湯呑みを静かに置き、
「……まるでどころの話じゃないよ。翔馬君」
と、述べた。
龍達が理由を聞くと武文は、およそ3時間前の午後7時に太陽神教の教祖・出光神太郎と近衛団と教団幹部を4200万円で抹殺するよう、信者の親兄弟から依頼があったことを語った。
依頼者から知らされた情報によると、太陽神教は麻薬の売買で利益を得てるだけでなく、その麻薬を信者らに聖薬と称して飲ませ、莫大な金額のお布施をむしり取っているらしい。
武文の言うとおりのひどさに、メンバー全員呆れたが、情報はこれだけではなかった。
彼いわく、施設全体の見取り図とターゲットのリストが別に送信されており、このことから、太陽神教を快く思わない内通者がいる可能性があることが判明した。
それだけではない。犯した犯罪が犯罪なだけに、教団は以前から警察に目をつけられており、明後日の夜明けを迎えると同時に、強制立ち入り捜査が行われることも依頼者からの情報で明らかとなっていた。
「よって、明後日の午前0時までに内通者と接触し、可能なら保護。その後、ターゲットを皆殺しにすること。いいね?」
武文からそう言われて、雲雀と大牙は頭を抱えた。
無理もない。見取り図があるとはいえ、内通者を保護しながら大人数を殺し、その上、タイムリミットまである。そんな高難易度のミッションを想像しただけで、気が滅入りそうだった。
それでも、プロの殺し屋である龍のやる気は変わらなかった。
「僕はやるよ。恩を仇で返すのは少し気が引けるけど……」
そう言う彼に感化されたことで、雲雀と大牙も参加を決意し、翔馬と紫乃もそれに乗ると、武文は全員参加の確認をとり、当日の役割を発表し、メンバーに発破をかけた。
この時点で、タイムリミットまであと25時間30分。死獣神始まって以来、最大級の依頼が今、始まった…………
4200万はあくまで死獣神全体の報酬です。龍達の取り分は、ペガサスを抜いた5人で山分けとなります。