殺神依頼(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の新たな物語。
平成17年9月17日。この日、龍は宙と美夜と柚に誘われて、ミナミに遊びに来ていた。
と言っても、ご存知のとおり普段の龍は召使い体質であり、この日も、宙と一緒に女子の荷物を持たされたり、色々なところに連れ回されたりと、扱いは決していいものとは言えない。
「よっし。次はあそこに行くよ」
「ちょっと待ってよ、黒川さーん。少しは休ませてよー。もうくたくただよー」
そんな意見も無視され、仕方なく歩いていると、何やら戎橋に人だかりができているのが見えた。
野次馬根性丸出しで見にいってみると、謎の制服集団とチンピラが揉め事を起こしており、近くの人に話を聞いてみると、どうやらフードを深く被った8歳くらいの少女に、チンピラがからんできたらしく、彼女のお付きだった制服集団の怒りを買って、こうなったんだそうだ。
周りの迷惑を顧みず、目の前でこんな騒動を起こす。そんな彼らを見て、ほっとけなくなった龍は、美夜や宙ら野次馬の反対を押し切って、彼らの仲裁に入った。
「まぁまぁまぁ。落ち着いて下さい。周りの人達だって迷惑してますし、ここは喧嘩両成敗でおしまいってことで」
「そうはいきません。姫に無礼を働く者は、我ら太陽神教近衛団が排除しなければなりません」
近衛団長が停戦を拒み、太陽神教という宗教というワードを耳にした龍は、その聞き覚えの無さから、一瞬、頭に『?』が浮かんだが、彼らが新興宗教の信者だということは一応理解した。
「姫って……彼女がですか?」
「えぇ。我が教祖のご息女であります」
それを聞いていろいろと納得できた龍だったが、彼とは対照的に放置されたチンピラ達の方は何一つ納得できず、イライラと我慢の限界に達していた。
「おい、てめぇ……さっきからウザってぇんだよ!」
チンピラはそう言うと同時に、龍を後ろから殴り倒した。
疲れと不意打ちがあったとはいえ、皮肉なことに止めに入った龍がノックアウトする音が、ゴングの代わりとなってしまった。
召使い体質のせいで疲労があったとはいえ、龍、情けなさすぎます。