白虎の武闘家(4)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の新たな物語。
その日の夜。血の気の多い社員らを連れて、今回のターゲットである安藤金融の社長・安藤はとある廃工場に来ていた。
夕方頃に死獣神から挑戦状メールが届き、『犯罪の証拠をバラされたくなければ社員全員連れて来るように』と脅されたからである。
「おい。来てやったぞ! どこにいやがる!?」
社員の1人がそう言うと工場のライトが点き、天井で逆さ吊りになった青龍と朱雀が彼らの前に現れた。
「レディースアーンドジェントルメーン! 今日はここ、廃工場コロシアムにて文字通りのデスマッチを行いまーす! 実況は僕、死獣神の青龍と……」
「朱雀でお送りすんでぇ。なんてな」
楽しそうに実況ごっこをする2人に、安藤らは降りるよう口々に言ったが、青龍は拒否し、朱雀は無視して彼を呼び込んだ。
「ほな、早速始めよか。青ーコーナー、安藤金融御一行。赤ーコーナー、白虎流護皇死神拳最終継承者・白虎ー!」
先輩に呼ばれて大牙こと死獣神の新入り・白虎は、学生服姿で初めての殺しのリングに登場した。
白虎が入って来たのを確認すると、青龍と朱雀は開始の合図を出して、逆さ吊りをやめ、観客として彼の殺しを見物した。
安藤らは、強制参加させられたデスマッチに苛立ちを感じながらも、とりあえず、目の前にいる白虎を倒さないことにはどうすることもできないと思い、一番若手の社員が、先陣切って彼に挑みかかった。
「こんなガキに負けっかよ! 俺は高校の時、ボクシングで全国3位だったんだ!」
そう言う男の拳を、いなしたりよけたりしながら、
「そう。だから俺が来たんだ。あんたらみたいな格闘家崩れを殺すためにな。いくぜ、掌!」
と、言って、社員の拳を掌打ではじき、すぐさま背後にまわって片手で首を鷲掴みし、
「天・地・転撃砕ぃ!」
と、言いながら、背負い投げの要領で若手社員の頭を思い切り床にたたきつけ、首から上が無くなるほど粉砕した。
あっさりと仲間が死んだことに安藤らに動揺が広がる中、白虎は手をじっと見つめる。
これが自分の意思で初めてやった殺しの感覚。拳を強く握り締め、それを実感した彼が沈黙していることから、朱雀らは後悔しているのではと思っていたが、彼にそんな感情は微塵もなく、それどころか、この感覚に感激しているらしく、笑みを浮かべている。
まだまだ人を殺す快感を味わいたい。そう思うほど狂った白虎は、まるでゲームを楽しむ少年のように、震え上がる社員らの方へと駆け出していって殺していき、社員6人をおよそ10秒で秒殺した。
わずかな時間で行われた惨状を目の当たりにして、安藤は恐怖でたじろぎ、腰を抜かす。
拳1つで人を殺せる男・白虎。
彼は間違いなく、即戦力級の実力者になり得る存在でしょう。