白虎の武闘家(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の新たな物語。
午後1時前。龍は大牙にいわれたとおり、死獣神メンバーを屋上に集めて、彼から事情を聞いた。
大牙は平安時代にでき、天皇を守るために作られた門外不出の総合格闘術・白虎流護皇死神拳の最終継承者だと明かした。
白虎流護皇死神拳とは時代を経るごとに様々な格闘技を吸収し、改良して編み出した必殺拳であり、かつては『幻にして最強の格闘技』と称されていた。
だが、平和な世になって必要とされなくなっていくにつれて、しだいに没落していき、現代では大牙しか使い手がいなくなってしまった。
彼は家系の都合で叔父から流派を継承されたが、今まで『平和な世に白虎流護皇死神拳の出番はない』という叔父の遺言に従い、拳法を封じて普通の中学生として生きていた。
が、例の傷害致死事件を起こしたことで、白虎流護皇死神拳を活かせるのは殺し屋の世界しかないと思い、以来、最強の殺し屋集団と謳われる死獣神を徹底的に調べていた。
特に、龍に対しては憧れを抱いていたらしく、彼はフリーの頃はもちろん、先日の白浜旅行も陰ながら観察していたことをカミングアウトした。
「な!? ちゅーことはうちらのキスも……」
過敏に反応した雲雀が不安になりながらそう聞くと、大牙は親指を立てて、
「当然! 隣りの部屋の壁に小ーさい穴を開けて、バッチリと見させてもらいやした! ごちそうさまでーす」
と、笑顔で答えた。
この態度に雲雀が怒らないわけがなく、大牙に殴ろうとしたが、龍が間に入ったことで止められた。
「まぁまぁまぁまぁ、どうどうどうどう」
「うちは馬ちゃうわ! ドアホ龍!」
今にも雲雀が、龍もろとも大牙をボコボコにしそうな状況だったが、リーダーである武文は、無視して話を進めた。
「……で、大牙君。それだけのことを知ってて僕らのところに来たってことは、何かを要求しにに来たんだろう? でなきゃただの自殺行為だ」
「あぁ、そうっした。玄武さん。そういうわけなんで、俺を死獣神の仲間にして下さい」
大牙の入会要請を聞いた武文は、少し考えたあと彼に1つの試験を受けてもらうことを提案した。
それは、最近飽和状態になっている死獣神の依頼を1つ、完璧にこなしてもらうことだった。
失敗した時の後始末として、龍と雲雀に協力してもらうが、失敗すれば逮捕or死という条件に大牙は了承し、武文から自分に合う依頼を紹介してもらった。
白虎流護皇死神拳の異名に偽りは無く、武士が台頭したにもかかわらず、天皇を討ち取ることができなかったのは、白虎流護皇死神拳の使い手によって阻まれたからだと言われています。