村の秘密(4)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の新たな物語。
その頃、大牙は村の温泉に浸かり、体の痺れをとっていた。
湯の効能は素晴らしく、完全回復した大牙はしばらくの間ゆったりと温泉を楽しんでいた。
が、リラックスしてる内に、龍にかけられた屈辱的な言葉が脳裏に蘇ってくる。その内だんだん腹が立った彼は、とうとう我慢の限界に達し、温泉の底を一発殴った。
彼の怒りを物語るように、叩きつけられたお湯は高々と打ち上がり、鉄拳を受けた石の床は粉砕され、クレーターのようなものができていた。
「……くそ。くそくそくそくそくそぉ! 何が『守るだ』! 何が『すぐに飛んでくる』だ! 俺を馬鹿にしやがって! 今に見てろよ。俺が死獣神のナンバー1になってやる!」
大牙は、龍に憧れて死獣神に入ったはず。なのに、白虎流護皇死神拳の最終継承者である自分の誇りを、憧れの存在である龍にズタズタにされたことで、尊敬が憎しみに変化していた。故に、今の彼の心を占めているのは、憧憬ではなく青龍に対する敵対心。それ以外何もなかった。
そんな大牙の様子を、側で見ていた者がいた。
「ずいぶん荒れておるのう。静かにせぬか」
敵であるはずの黄泉だった。彼女を目視した大牙は、敵意を剥き出しにして怒鳴る。
「てんめぇ、黄泉! そこで何してんだ!」
「見てわからぬか? 湯治に来ておるのだ。ここの温泉は、消費した念も回復することができるのでな」
黄泉はそう言いながら岩場から下り、温泉に浸かった。
眼前には先の戦いから回復しきれてないであろう敵がいて、しかも油断している。
この好機を逃す手はないと思った大牙は、小型通信機を破壊し、彼女を仕留めようと構えた。
だが、黄泉は命を狙われているにもかかわらず、余裕を保ったまま、停戦を呼びかけた。
「まぁ、待て。妾は戦いに来たわけでもなければ、殺されに来たわけでもない。入浴しに来たのだ。それに、お前も青龍も、いつまであの女に踊らされてるつもりだ?」
「……どういう意味だ?」
大牙はがそう尋ねると、黄泉は不敵に笑い、
「知りたければ教えてやろう。裸の付き合いのついでに、な。その代わり、不意打ちなどするでないぞ」
「するかよ。それは、武闘家としての誇りに反する」
大牙は彼女の提案を呑み、胸を張って誓った。
そこで話が始まれば、少しは格好がついたのだろうが、ここは風呂場。先程まで1人だと思っていた大牙が隠すものなど身に付けてるはずがなく、すっぽんぽんの彼の股関を凝視した黄泉は、
「それは大いに結構だが……その凶暴な一物を、いつまで妾の前に晒しているつもりだ? 妾とて女だぞ?」
と、指摘した。敵に言われてハッとした大牙は、恥ずかしい思いをしながら腰にタオルを巻き、気を取り直して彼女の話を聞いた。
色々と大牙のお見苦しいところをお見せしました。彼に代わって、お詫び申し上げます。
ちなみに、指摘している黄泉もタオル的なものは巻いていません。




