白虎の武闘家(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の新たな物語。
止めに入ろうと龍が1歩出しかけたその時、後ろ髪をくくった男子生徒が、抗議をする生徒と教師の間に入り、拳を止めた。
「何だてめぇ!」
「俺っすか? 俺は今日からこの学校に転校してきた1年3組の白橋大牙っす。以後よろしくお願いしやーす」
新しい後輩である大牙の挨拶に、生徒は一瞬怒りを忘れて挨拶しかけたが、すぐに怒りを思い出した。
「……って、そういうことを言ってんじゃねぇ! てめぇ、いいからさっさとどけ! でねぇと、こいつをぶん殴れねぇだろ!」
生徒がそう怒鳴ると大牙は冷静に、
「せんぱーい。自分の力を自覚した方がいいっすよ?」
と、言って、拳を止めてる手を注視させた。
驚いたことに大牙は小指の先だけで、彼の拳を止めていたのである。
「まぁ先輩、ここは落ち着いて。こんなところで時間を潰してたらそれこそ遅刻確定っすよ?」
後輩にそう言われてぐうの音も出なくなった生徒は、捨てゼリフだけを吐いて、その場をあとにした。
見事に解決し意気揚々と大牙は校舎に戻る途中で、龍と雲雀を見かけ、2人に声をかけた。
「ちわっす。龍先輩、雲雀先輩」
初対面の後輩に名前を呼ばれ、2人はびっくりした。
「どうして、僕らの名を?」
そう尋ねられると、大牙は龍の間近に行き、
「それについては、人目があるんで今は言えないっす。すんません。詳しくは昼休みに話すんで、死獣神の皆さんを屋上に集めといて下さい」
と、耳打ちし、またあとでといった感じで手を振り、去って行った。
自分達のことを死獣神だと知る謎の少年の登場に、龍は戸惑い、彼が何者なのか疑問に感じた。
この話の主役であり、龍にとって殺し屋として初めての後輩となる少年・白橋大牙。
彼が何故龍達のことを知っているのか、そして、何故接触してきたかは、次で明らかとなります。