姫の初登校(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の新たな物語。
1時間目終了後。龍は翔馬から澪が転校してきた経緯を聞き、行方不明扱いになってる彼女に取り調べがこないように、すでに警察に圧力をかけていることも知らされた。
そんな彼から事情を聞いた正人と美夜らは、彼女に同情し、心を改めた。
「澪さんも大変だね~。そんな力を持ってて目もよく見えないんじゃ、色々と不便しない?」
「確かに不便ですが、それくらいの罪は背負わなければなりません。でないと、信者だった方々に申し訳がありませんので」
柚の質問にも真摯に答える彼女を見て、宙らクラスメートらは好意的に感じた。
「ふーん。立派だね。辛いこともあったはずなのに。あんなお父さんでもいなくなって、悲しいとか寂しいとか思ったりする?」
そう聞かれて、澪は首を横に振り、
「全く無いと言えば嘘になりますが、私は父の死を望んでいました。なので、父の死は自業自得ですし、そんな父が死んで今は清々しています」
と、答えた。それを聞いた柚は納得し、職員室に用があったことを思い出して、当たり前のようにコケてから教室を出ていった。
彼女が退室した後、澪はしばらくの間は、何も気に留めていなかったが、ふと何かを感じ、表情を曇らせた。
「どうしたの? 澪さん」
「あぁ、龍さん。いえ、今、この教室にどす黒い闇のようなものを感じたのですが……」
澪の感じたことを聞いた龍は、とりあえずあたりを見回したが、彼女の不安を煽るそれらしいものはない。多分気のせいだろうと龍は結論づけた。
澪がほっと安堵のため息をつくと、彼女ととにかく仲が悪い雲雀が、近寄ってきた。
「きっと、あんなこと言うたから、クラスの奴らの反感を買っただけやろ。気にしすぎや。かまってちゃんのデコ姫」
「ヤキモチですか? 雲雀さん。私と龍さんが同居してるのが、本当は羨ましくて仕方ないんでしょう?」
雲雀と澪はそう言うと、互いに火花を散らし合い、そんな美女2人に取り合いされてる龍は、
「龍、お前ぇ。羨ましいぞ。このこの」
と、正人と宙と美夜からからかわれ、武文ら他の同級生からも茶化された。
休み時間があけたあと、澪は例の不安や雲雀とのいざこざを一旦忘れて、熱心に授業を受けた。
途中、テストがあり、龍は少し心配したが、姫時代に家庭教師がいたこともあって、ぶっつけ本番の小テストを彼女は楽々答えた。
ただ、体育だけはどうも苦手なようで、クラスメートらの前で無様な姿を晒し、雲雀に腹を抱えて笑われた。
綱手中学校は翔馬の他にも、彼の歴代の彼女や友人に異種族やその混血がいるため、澪の力程度では誰も驚きません。