鳳凰は僕らと共に(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の新たな物語。
午後8時10分頃。ようやく幹部や近衛団を発見した朱雀は、これまでの鬱憤を晴らすかのように、彼らを次々と惨殺していく。
ちょうどその頃、龍は地図を頼りに姫の部屋に着き、そこで待っていた彼女に通されて中に入った。
彼女の部屋は、思っていたより浮き世離れしておらず、むしろ普通の女の子の部屋といった印象だった。
「意外に普通でしょう? 幻想を抱かせてしまったのなら、ごめんなさい」
「ううん。気にしてないよ。えっと……姫さん」
龍がそう言うと、姫は首を横に振った。
「姫はあくまで敬称です。私の本当の名前は王賀澪。お父さんは王賀太一といいます」
「そっか。そっちの方がずっといい名なのに、君は見えない目で、見えない人達のために姫を演じているんだね」
龍にそう言われて、澪は驚きを隠せなかった。会って2回目の人間に、自身が盲目だということを見抜かれていたからだ。
龍がそのことに気付いたのは、初めて会った時のあの違和感を感じた時である。
「……あなたにはかないませんね。けどだからこそ、私達は繋がることができたんです」
澪はそう言うと、手探りで普段使っている音声案内機能がついたパソコンの方に行き、起動した。
澪が慣れた手つきでパソコンを操作すると、画面にあるものが映った。それはなんと、死獣神のサイトだった。
見慣れたサイトの画面を目の当たりにした龍は、風呂場でのこともあり確信した。
「やっぱり、君が内通者?」
「ご名答です。私も。あなたが殺し屋だということは、わかっていました。初めて会った時にあなたから発する気を見て」
「へー」
龍が感心してそう言うと、澪は意地悪く微笑んで、
「あと、これには気付きました? 私、こんな見た目をしてますけど14歳なんですよ」
澪の年齢を聞いて、龍は仰天した。どこからどう見ても小学校低学年ぐらいの彼女が、同い年には見えなかったからである。
「その成長の遅さと視力……もしかして原因は……」
「はい。この力のせいです。私はこの能力のせいで、色々なものを失いました。自由、視力、成長、それ以外にも……」
そう言ったあと、澪は内通者になった動機を語った。
次回、彼女が内通者として協力した真意が語られます。