殺神依頼(4)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の新たな物語。
翌日午後1時頃。与那国島にある太陽神教の総本山・太陽の聖なる里へと向かうバスの車内に、龍と雲雀の姿があった。
自宅で指揮を執る武文に指示されて、信者志望として正面から潜入することになった2人は、他の志望者らと共に信者であるバスガイドの太陽神教関連の話に、内心嫌気がさしながら、彼らにとっての神である神太郎を早く殺したいとウズウズしていた。
バスに乗ること20分。目的地に到着した一行は、バスガイドに連れられて施設内に入り、神太郎と謁見するために彼がいる太陽神の間という部屋に通された。
中に入ると、何千人もの信者がすし詰め状態で立って祈っており、彼らの視線の先にある玉座に、丸々と太った大男が座っていた。
そう、この男こそが神を自称する教祖・出光神太郎である。
「よく参られた。太陽の使徒を望む者達よ。諸君らは、実に素晴らしい判断をした。何故なら、我らは人の心の光を強め、世界に平和と協調性をもたらすことを教義としている。それを実行できる人物になるには、これまであったあらゆる負念を捨て去らなければならない。故に、私がその手助けをしよう」
神太郎は信者志望らに向かってそう言うと、手から強烈な光を発した。
その光に目が眩んだ龍は、やはり教祖の方が姫より強い力を持っていると痛感した。
それほどまでの力を公使しているのに、彼の表情は力の強さに反して優しく、慈愛に満ちている。
「さぁ、この優しき光を受け入れるのだ」
神太郎が穏やかな口調でそう言うと、信者や志望者の一部が過去の辛い経験や後悔を思い出し、人目をはばからずに号泣した。
そんな彼らを見てドン引きした雲雀は、先に行くことを龍に小声で伝えた。
「え!? もう行くの!?」
「あぁ。時間急ぇてるしな。そういうわけや。うちは近衛団と幹部探して、やってチューしてくるから、あんたは内通者探しをしといてな」
雲雀の言葉に龍は焦った。早くしないと、彼女に獲物を総取りされると思ったからである。
「ほなな。残しとかんかったら堪忍なぁ」
「残しといてよ~」
2人はそう言って別れたあと、それぞれの仕事をこなしに向かった。
タイムリミットまであと10時間35分。
実際の与那国島にこんな施設も宗教もありません。あくまでフィクションなのでご安心下さい。