幼馴染と仲間
食事も終え、教科書が入っている鞄とバレー道具が入っている鞄を手に俺は家を出ることにした。
「じゃ、行ってくるね双葉」
「うん。気をつけていってらっしゃい。お兄ちゃん」
そんなやり取りをしながら俺は家を後にし学校へと歩いていると、前方に茶色い髪をポニーテールにした見知った姿をした女子生徒を見つけたので歩く足を速めた。
「よう!美月」
「ん?あっ!双おはよう」
元気いっぱいで挨拶をしてくるのは俺の幼馴染の《藍原美月》で、俺の他に双葉が唯一逢って話をする人物だった。
美月はなぜか俺がバレーを始めて部活に入りだしてからずっとマネージャーをしていて、みんなからは美人マネージャーとまで呼ばれていた。
「ってか、いつも俺が投稿するときいるよな?もしかして毎回俺が行くの見計らっているんじゃないだろうなぁ?」
俺はニヤニヤしながら冗談っぽく美月にからかうように言った。
「え!!ち、ちがうからぁ。な、な何で双を待っていないといけないのさ!バ、バカじゃないの!」
美月は顔を真っ赤にしながら怒ってきたので「冗談だって」と謝り話を続けた。
「まぁ、美月はモテるから俺なんか待つわけないしなぁ」
実際美月は年下から年上までと幅広い層で人気があるのだ。
「モ、モテてないし!それに・・・双だって・・・」
「ん?ごめん、最後聞き取れなかったぁ」
「な、何でもない!」
聞き直すのに美月に耳を近づけて聞くと、なぜか照れたような感じで怒りスタスタと歩いていった。
俺は頭の上に?マークをつけながら、朝から忙しい奴だなと思い美月の後を追いかけるように歩きだした。
俺たちが通っている学校は《天ノ川高校》という中高一貫の学校だ。
その為、受験はなく中学からそのままエスカレート式になっている。
双葉はここの中学に在籍していることになっているが、一度も校舎に来たことはなく、自宅学習として扱われてるいるのだった。
美月と他愛もない話をしながら歩き、校門を潜ると中学生やら高校生やらで賑わっているなか、俺と美月は校舎には向かわずバレー部の朝練が行われている体育館へと歩みを向けた。
その道中では・・・・・・
「天地先輩!おはようございます」「双羽君おはよう!」ーーー
毎度のことなのだが、年下から年上までの女子生徒たちに声を掛けられるのであった。これじゃ美月のこと言えないな・・・
「さすが双。モテモテだねぇ~」
美月は不適な笑みを浮かべて俺をからかってきていたが、もちろん声を掛けられるのは俺だけなわけがないのだ。
「「「あ、藍原先輩!お、おはようごいます!!」」」
年下だと挨拶をするのにも緊張する感じだ。年上はとなると・・・
「「「おー美月!!おはよう」」」
かなりフレンドリーに挨拶をしてくるのだった。
中にはどさくさに紛れて「今度デートしようぜ」などど誘い、美月に即答で「無理です」と断られている人もいるのだ。
「ほぉら、美月だってモテモテだろう?」
「ち、ちがう!あれはただの挨拶!」
「まぁまぁ照れない照れない」
「照れてない!!!」
そんな風にお互いにからかいあいながら俺たちは体育館への道をいつもあるいているのだ。
声を掛けられるのも好かれるのも悪い気はしないのだが、バレーでエースとして注目されるようになってから知らない女子に声を掛けられたり、告白も何度もされるようになったが、俺はそれらすべてを断ってきたのだった。
その為、今まで一度だって彼女なんか居たことはないのだが、誰の告白も受けずに常に一緒にいるせいか、実は美月と付き合っているんじゃないかと噂が流れてたりするのだ。
俺も美月もそんな噂が流れているのは知っているのだが、今更お互い意識することもないので至って普通に接していた。
もちろん他の人から聞かれれば正直に付き合っていないと言うつもりなのだが、今のところバレー部員以外で聞いてきた人はいなかったのである。
そうこうしているうちに体育館に近づいてくると、既に他の部員達は来ていたようで練習をする音が外まで聞こえてきていた。
うちのバレー部は俺たち2年生と1年生しかおらず、ひとつ上の先輩方は3年になると同時に受験勉強のため引退していった。
部員数は少ないが今年の天ノ川高校のバレー部はそれなりに強いんではないかと俺は思っている。
優秀な1年生も入り、今俺たちは6月にあるIH予選に向けて気合い十分であった。
「「おはようごいます!」」
俺と美月は体育館のドアを開け一斉に挨拶をして中に入っていった。
「あっ!双先輩、美月マネージャーおはようございます」
最初に俺たちに気がついて挨拶してきたのは、1年生の《月田静男》だった。
身長が180㎝あり、中学の時にたまたま俺の試合を観たらしくそれから俺に憧れてバレーを始めたと本人が言っていた。
ポジションも俺と同じWSといういわゆるアタッカーである。
「双くん、美月ちゃんおはよう」
次に少し大人しめに挨拶をしてきたのは、2年で中学の時から俺と一緒にプレイしてきた《亜狩都九子》だった。
身長は163㎝とかなり小さいが、都九子のボールコントロールはずば抜けていた。
ポジションはセッターでアタッカーにボールを上げるチームの司令塔をやっているのだ。
「おう!双羽、マネージャー」
「おはようございます」
「おっはよう!マネージャー今日もかわいいねぇ」
男気溢れているのが2年の《豪力猛》。身長が185㎝でポジションはWSだ。
真面目そうな挨拶をしてきたのが1年の《西城類》。192㎝の長身でMBというブロック中心のポジションだ。
そして元気よくてチャラい感じの奴が2年の《新川三喜男》。158㎝のリベロという攻撃できないが守備専門のポジションだ。
「あれ?聡はまだ来てないのか?」
「もう来ると思うけどね」
俺が辺りをキョロキョロしながら言うと近くにいた都九子が時計を見ながら答えてくれた。
それと同時に後ろから走ってくる音が聞こえ振り替えると、聡が汗まみれになって走って向かってきた。
「わ、悪い。ハァハァ。寝坊しちまったぁ。ハァハァ」
「聡が寝坊なんて珍しいなぁ」
聡が息を切らせながら謝ってきたので、俺は気にするなと言わんばかりに冗談を言って返した。
こいつがこの天ノ川高校バレー部のキャプテンで中学の時からの親友の《砂田聡》だ。
身長は182㎝でポジションはMBである。
この7名が今の天ノ川高校バレー部の主なレギュラーメンバーだ。
この他にも1、2年合わせて13名がおり、総勢20名とマネージャーが1人でやっているのだった。
そんなこんなで朝練も終わり、各々授業を受けて、そしてまた放課後に練習するというのが大会までの日課である。
本日の放課後の練習を終えて、家に帰宅するころには19時を回っていたのだった。