兄と妹
初投稿作品となります。
『綺麗な長くて黒い髪が好きだ』
『透き通るような真っ白な肌が好きだ』
『俺を応援するか細い声が好きだ』
『俺の飛んでいる姿を見る優しい瞳が好きだ』
『---俺は妹に恋をしている』
「ハァッハァッハァッハァ」
雪も溶け季節は春の暖かな風が吹くなか、俺こと《天地 双羽》は毎日の日課である朝5時からの10㎞のランニングをしていた。
小学校からバレーボールをやっているのだが、身長には恵まれず高校2年になった今でも175㎝で高いほうではなかったのだが、自信の取り柄であるスピードとジャンプ力を生かし今では巷ではちょっとした有名なエースストライカーになっていた。
その為、足腰をさらに鍛えるためにも部活以外で毎朝のランニングを欠かさずすることが今の俺にとってはかなり重要だった。
ここは北海道の海側に面した町で田舎というわけではないが特別都会と言うわけでもなかったが、海を横目にし、昇り始めた太陽を浴びながら走るのは気持ちが良いものがある。
ランニングを終え家へと帰宅すると、まず流した汗をシャワーで洗い流し、学校の支度を済ませたころには時計の針が7時を指している。
ここでもう一つの日課があった。
準備を済ませた俺はキッチンに行き二人分の朝食の用意を始めるのだ。
うちの両親は海外に仕事に行っているため、この家にいるのは俺と2つ下の妹だけで暮らしている。
この生活を続けてもう3年にもなるのだが、両親は自由気ままというか能天気というか子供だけで住ませて何も思わないみたいだ。
俺自身も特に困ったことはないし、何か行事があればすぐに帰って来てくれるので別にいいのだが・・・・・・妹がね。
朝食を作り終える頃になると二階から人が降りてくる音が聞こえてきた。これもいつも通りだった。
「おはよう、お兄ちゃん」
リビングのドアを開けて立っているは天使・・・ではなく俺の妹の《天地 双葉》だ。
綺麗な黒髪を腰の辺りまで伸ばし、幼さを残しつつも整った顔、日の光を浴びていない透き通った真っ白な肌をし、天使を思わせるかのような白のワンピースを着た女の子。
兄の贔屓目から見なくても誰もが美少女だと思うはずだ。
「おはよう双葉。ご飯できてるよ」
「ありがとう。でも前にも言ったけど、お兄ちゃんには学校もあるし部活もあるから私が朝食を作るよ?私はその・・・えっと・・・ずっと家にいるし」
「気にしなくて大丈夫だよ。双葉には夜ご飯作ってもらってるから俺も何かしたいだけだから」
「でも・・・」
両親がいないため家の分担は朝のご飯を俺が作り、夜ご飯とかその他の家事を双葉がすると前に決めていたのだが、双葉は自分が学校に行っていないことを後ろめたく思い全部を自分がやると前から言っていた。
俺が今一番心配しているのはそこだった。
双葉も学校に行っていれば中学3年生なのだが、小学校の時にイジメにあいそれからは学校にいかなくなり家に引きこもるようになってしまったのだ。
引きこもり方が部屋ではなく家だったので、家にいる俺や昔から仲が良かった俺の幼馴染には逢って話をしてくれるだけよかったと思う。
イジメの原因はすごく単純なものだった。
昔から容姿がよかった双葉は同級生の男子にすごくモテていたし、それに俺と一緒にバレーをやっていたので同級生の中では格段に上手だったこともあって、女子達から目の敵にされ、それが段々とエスカレートして妬みによるイジメとなったのだ。
それを知った時はどうしようもない怒りを覚えたと同時に、俺がバレーを続けていたら双葉はきっと思い出してしまうだろうと思い、バレーをやめようともしたがそれを双葉が許しはしなかった。
俺はあの時の双葉の『お兄ちゃんのバレーしている姿が好き』という言葉があり今もバレーを続けているんだと思う。
将来有名になりたいとか、春高で優勝したいとかではなく、ただ《妹のために》バレーをしている。
両親は『双葉が行きたくなったらいけばいい』と言って居ない今、双葉を支えられるのは俺と俺のバレーだと思っているのだ。
「ほら双葉。朝からそんな顔してないで早くご飯食べよ」
「・・・うん!」
笑顔を取り戻した双葉とご飯を食べながら、俺はいつもながらに考えてしまうことがある。
(いつか学校にいけるようになって、また一緒にバレーができたらいいな)
そんなことを思ってしまうのだった---。