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暖かい夏  作者: 佐藤 隆之介
1/1

特別の日

きっかけは些細なことだった。

次のテストだか、課題だか。大学の推薦受験に関わることへの不正の手伝いをしろと言われたが断った。

ただそれだけ。

少しの正義感と不正への抵抗感。僕にとってのごく普通の感覚、普通の行動。

その『僕にとっての普通』が、『僕にとっての普通』を全て奪い去っていった。


そこからの『僕にとっての普通』は、いじめ被害を受ける日々。

殴られ、蹴られ、罵倒され、持ち物は隠され、壊され、捨てられる。

周りは見て見ぬ振り、庇えば自分にも害が及ぶから。ごく普通の行動と普通の感覚。

始まって3ヶ月過ぎた僕の高校生活2年目は毎日が『普通の日々』だった。



あの日までは。









夏休みを2週間後に控えた猛暑日、「昼休み部室棟に来い。」と山崎に呼び出された。

だいたい予想はつく。午前中の授業で返された学期末テストの結果が悪く、イラついているのだろう。

どうせいつも通り殴られ、気が晴れたら解放というサンドバッグパターンだ。最初こそ苦痛ではあったが今ではもう普通。分析する余裕すらある自分に少しだけ笑ってしまった。



部室棟にいくと、去年まではまるで縁がなかった部室棟だが最近では各部の部室の位置まで覚えていることに少し笑った。今日は少し笑いのツボがおかしいなと続けて笑った。


バスケ部の部室に行くと山崎が不機嫌そうにタバコを吸っていた。


「おせえんだよ、俺のこと舐めてんのか?」


タバコの火は念入りに消してから近寄ってくる。少し真面目だなと思った。瞬間、拳がみぞおちに入る。少し息が詰まった。


「まぁいいわ、お前今日午後早退しろ。」


言葉とともに普段はこない顔面に拳が飛んでくる。

鈍い衝撃とともに口の中で鉄の味がする。

そこからは普段通り。

遅れてやってきた高橋と一条も加わりひたすら殴られる。

普段と違うのは時折顔にも拳が飛んでくることくらいだ。早退しろというのはそう言うことかと1人で納得していた。

殴られ、蹴られ、殴られ、殴られ。

そろそろ終わりだなと、いつもより少しだけ強い痛みの中呑気に考えていると、


「何してるんですか!!!」


いつもは聞こえない声が聞こえた。







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