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 俺と美乃里達三人は分かれて豆腐小屋の様子を見に行った。


 俺が見に行った豆腐小屋は彩香先生がいる小屋だった。


「彩香先生!俺だ!ゾンビはもう退治したから出て来いよ!」


 外から扉を叩きつけて呼びかけたが、まったく返事がない。


 窓には俺の指示通り石ブロックが置かれていて中の様子を見ることもできない。


「ええい!面倒くせぇ!」


 俺は一括破壊の術式で豆腐小屋の壁と中の石のバリケードを一挙に破壊した。


 壁が無くなって床と天井だけになった豆腐小屋の中から、赤ん坊を抱きかかえてうずくまっている彩香先生が現れた。


「彩香先生!」


 俺は焦って駆け寄ると、彩香先生の肩を大きく揺すってみた。


 眼を閉じていた彩香先生がゆっくりと目を覚ました。


「―――ううーん!カエル男君?あらあら、会いたかったわ」


「……寝てたな、先生?」


「ち、違いますよ!失礼ですね。怖くて部屋の中で耳を塞いで震えていたら、いつの間にか気を失ってしまったのですよ」


「やっぱり、寝てたんじゃないか。まあ、何はともあれ無事でよかった」


 俺は彩香先生を助け起こして立ち上がった。


「他の子達はどうなったのかしら?」


 二人して隣の豆腐小屋の様子を見に行くと、ちょうど美乃里達の呼びかけに応じて、残りの三軒の豆腐小屋から恐る恐る女の子達が出てくるところだった。


「どうやら、全員、無事みたいだな」


「よかった!これでみんなで地上に戻れますね」


「はい?」


「早くカエル男君が持って来てくれた牛革で熱気球を作りましょう」


「牛革ねぇ…………」


 俺が口ごもっていると、みんなが俺の周りに集まって来た。


「カエル男くん、来てくれたのね!」


「助かったわ!よかった!」


 みんな嬉しくて落ち着いていられない様子で抱き合って喜びあった。


 あまりにみんながはしゃいでいるので、非常に言いにくい雰囲気だったが、俺は事実を告げた。


「みんな、聞いてくれ!俺は牛革を持っていない。だから熱気球は作れない!」


「ええええええっ!?」


 全員、俺の言葉に絶望のどん底に突き落とされ、ガックリと肩を落とした。


「もうイヤダ!こんな辛気臭いところには一秒だっていたくねぇ!」


 井稲真耶が興奮して、今にも暴れだしそうに取り乱した。


「なんで牛革持って来なかったんや、あんちゃん!」


 菜々か萌々のどっちかわからないが双子の片割れが血相を変えて食ってかかった。


「カエル男君。もう一度、地上に戻って牛革を取って来て下さいよ。赤ちゃんには陽の光を必要なのですよ」


 彩香先生までが俺にすがり付いてきた。


「いや、地上に戻れと言われても、そう簡単には戻れねぇよ」


「そうだ!死ねばいいやん!」


 菜々か萌々のどっちかわからないが双子の片割れがポンと手を打った。


「死ねば地上にリスポーンするんやろ。すぐに牛革集めて、もう一度戻って来てや」


「そうだ!そうだ!死ねばいい!」


「死~ね!死~ね!死~ね!」


 みんなが手拍子をしながら、血走った眼で俺に詰め寄って来た。


「お前ら、こう言う時だけ一致団結しやがって!」


 長い間暗く湿った地底に暮らしていたため、みんなかなり精神的に追い詰められているようだ。


「みんな、落ち着いてよ!」


 西 香菜子が俺をかばうように両手を広げて前に出てくれた。


「カエル男は私達をゾンビから救うために危険を冒して駆け付けて来てくれたのよ。牛革を揃える余裕がなかったのは無理ないわ」


 香菜子にそう言われ、みんな憑き物が落ちたようにシュンと大人しくなった。


「――ありがとう、香菜子。助かったよ」


 俺はホッと胸を撫でおろした。


「礼は言わないで。私が防具や武器を装備していたら、ゾンビぐらい自分たちで退治できていたのよ。そうすれば、あなたを駆け付ける必要もなかったし、牛革が準備できてから来てくれてたはずだわ。みんな、自分たちの甘さが招いたことだわ」


「香菜子……」


 俺は香菜子の凛々しい顔を見つめながら、感心していた。


 相変わらず男前すぎる女だぜ。





「あのう……」


 突然、紅毛碧眼の美少女、フランスからの留学生のドゥ・レイモン・ジュリエットが俺に話しかけてきた。


「おっ、ジュリアか。久しぶりだな。どこもケガしなかったか」


「はい……」


 ジュリアは何か言いたげにもどかしそうに指の爪を噛んだ。


「どうしたのかな?何か言いたいことがあるのかな?」


 ジュリアは無言でコクリと頷いた。


 どうやら言いたいことがあるのだが、拙い日本語でもうまく言えないようだった。

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