表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/89

04

 この回想シーンの間、俺はボーとして和泉 康平(イズミ コウヘイ)がゾンビに殴られているところを見ていた。


「あなた、なにをボケッとしているのよ!早くコウヘイを助けなさいよ!」


 高見 真央(タカミ マオ)が偉そうに俺に命令した。


「助けろっと言われましても、俺にどーしろと?」


「あなた、剣を持ってるじゃないの!それでこのゾンビをぶっ殺しなさいよ!」


 ここに駆け付ける際、俺はインベントリ―から石の剣を取り出して右手に持っていた。

 インベントリーの中身は他人には見えないが、手にした物は見えてしまうのだ。


 真央に偉そうに命令されて、俺はむかついた。


(やっぱ、ここはスルーして帰ろう)


 すると、和泉が真央の手を引いて、俺の方に向かって駆け出してきた。


「あいつを殺るんだ!このグズ!」


 和泉と真央は俺の背後に回って、おれの背中を押した。

 ソンビは両手を前に突き出し、ゆっくり俺に向かって来る。


「――――しかたねぇなあ!」


 俺は石の剣を振るって、破合線に沿ってゾンビを切り刻んだ。

 ゾンビは煙とともに姿が消え、後にはアイテム化した一片の腐った肉の塊が落ちていた。


「おい!カエル男!お前、いい物もってるじゃないか」


 和泉は俺が右手に持っている石の剣を指さした。


「貴様みたいなグズが持っていても宝の持ち腐れだ。僕によこすんだ!」


「そうよ!早くコウヘイに渡しなさい!」


 真央もさも当然といった顔で、俺に命令した。



「助けてやったお礼もなしかよ」


「何をブツクサ言ってるんだ!相変わらずキモい奴だな」


「コウヘイ!ホッとしたら私、お腹がすいちゃった!何か食べたーい!」


「弱ったなあ。残念なことに僕は何も持っていないんだ。おい、カエル男!貴様、何か食べ物持っていないのか?」


「リンゴなら持っているが、これは俺の分だ。腐った肉でも食うか?」


「ふざけたことを言うんじゃない!今は非常事態なんだぞ。貴様みたいなクズが死んでも誰も困らないが、委員長で未来の政治家である俺、和泉 康平が死んだら大変な損失だ」


「そうよ!そうよ!コウヘイの言う通りだわ。とっとと武器と食べ物、よこしなさいよ!」


「やなこった!」



「な、何ッ!?貴様、今、何て言った!?」


「コウヘイ!あいつ、やなこった!って言ったのよ」


「うぬぬぬぬ!!貴様、カエル男のくせに僕に逆らうのか!また、みんなでイジメて、学校に来れなくしてやるぞ!」


「―――お前ら、バカか?」


「何だと!クラスのカースト最下位のカエル男が、学年トップの僕に向かってバカだと!?」


「底辺這いずり回ってるカエル男のくせに、コウヘイにバカって言うなんて!?身の程しらずの大馬鹿ヨ!!」


「大馬鹿はお前らの方だ!ここはもう異世界なんだ。お前らがヌクヌクと暮らしていた学校も家もないんだぞ」


「いいから、よこせ!」


 業を煮やして、和泉が俺の右手から石の剣を奪い取ろうとした。


「ぐさっ!」


 俺は何のためらいもなく、「ぐさっ!」と口に出しながら石の剣を和泉の右胸に突き刺した。


「ぎゃああああ!!」


 和泉が甲高い金切り声をあげた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ