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俺と美衣奈と娘の美衣の三人は、大穴を目指して出発した。
美衣奈は抱っこ紐を使って赤ん坊を前向きだっこしながら、俺の後をついてくる。
本当は美衣奈と美衣は足手まとい、いや、危険なので家で留守番をしていてもらいたかったのだが、美衣奈は言うことを聞いてくれなかった。
「だって、あなたは一度外に出たら、今度いつ帰って来るかわからないもの」
そう美衣奈に言われると、言い返せない俺だった。
「まあ、一度通った道なので整備して歩きやすくしているし、モンスターに襲われても俺がいるから家に残すよりも安全かもな」
というわけで、俺たちは森を北上し、密林を抜けて、大穴を目指して歩き続けた。
途中、俺はスマホ用の中継アンテナを立てるのを忘れなかった。
スマホがあれば念話が使えない娘達とも通話ができるし、マップも見れる。
元の世界では引き籠っていたのでわからなかったが、こうして外で冒険をしているとスマホは本当に有難い発明品だ。
錬金術師のレシピの中に入っていたわけだ。
「さて、気球用の球皮を錬成するには大量の牛革が必要だ。以前、来た時にはこのあたりにオーロックスの群れがいたのだが………」
俺はジャグルの大木に登って周囲を見渡したが、一頭のオーロックスも見つからなかった。
「牛さん、いませんねぇ。困ったわ。牛さんがいたらミルクがもらえると思ってたのに」
美衣に母乳を与えながら美衣奈がガックリ落胆した。
「もしかして……」
「どうかしましたか?」
「俺に思い当たる節がある……」
「ヒャッハー!汚物は消毒だ!さすがは炎の剣だぜ!」
以前ここに来た時、俺は殺戮の限りをつくし、オーロックスをあらかたステーキ肉に変えていた。
あの時、ほとんどのオーロックスを狩りつくしたのかもしれない。
だとしたら、別の土地に行かないとオーロックスが見つからないだろう。
「調子に乗って馬鹿な事をしちまった!」
「やっぱり、自然は大切にしないといけませんね」
「ああ。家畜化してもっと増殖させてから屠殺すべきだった」
「もう少し、オブラートに包んだ言い方をして下さいな」
「ともかく、大穴の縁まで行くしかないな」
巨木が密集したジャングルが途切れると、所々から岩が隆起した列岩地帯にたどり着いた。
前方はただ一面、岩が剥き出しになった草一本生えていない殺風景な場所だ。
途中、数話の兎を見つけたので、早速弓矢で狩って、少しばかりの肉と皮を手に入れた。
俺は兎の皮を集めて、錬金術師の大切な身だしなみのマントを練成してひとり悦に入った。
しばらく歩くと、剥き出しの岩盤地帯がいきなり途切れ、切り立った断崖絶壁が現れた。
崖っぷちから谷底を覗き込んで見ると、地獄にまで届くような暗黒が続いていた。
谷の向こう岸は霧のようにぼやけて見えなかった。
この前とまったく同じ風景だ。
「大渓谷に到着したぞ!実際は渓谷じゃない。巨大な大穴だがな!」
「凄いですねぇ!これが本当に錬金術師が掘った穴なんですか?」
「ああ!二人の錬金術師が協力して掘った大穴だ。大塚 美乃里がEnforceで菅原 瑠奈の能力を強化し、MINE ONで通常の何百倍もの範囲を掘削したそうだ」
「それでどこから降りるのですか?」
「この先に井戸があるはずだ。以前はそこから降りたんだ」
崖っぷちに沿って歩いていくと、見覚えのある土の塔が見えてきた。
土の塔の下には井戸があり、俺が掘ったプールも残っていた。
そのプールから崖に向かって伸びた水路があり、今でも奈落の底へと水が流れ落ちていた。
(そうだった。あの時は井稲 真耶と二人っきりだった。このプールで水の掛け合いをして、キャッキャウフフといちゃついたんだったなあ)
当時のことを思い出していると、いきなり俺の腕を美衣奈がつねった。
「イテッ!何すんだよ!」
「何かわからないけど、あなたの顔を見てたらイラッとしたの!」
よっぽど俺はだらしない顔してにやけたのだろう。
それにしてもいいカンしている。
「結局、あの時は家を建てなかったんだよな。水もあるし、家を建てるから美衣奈はここで待っていてくれ」
「えっ!?また留守番ですか?」
「この水流の中を降りてゆくんだ。美衣奈と美衣には無理だろ」
「そうですねぇ。仕方ありませんね」
「CALL! 豆腐小屋!」
俺は術式を唱え、井戸のそばに小屋を建てた。
小屋の周囲に松明を立てて明るくして、安全のために柵で囲っておいた。
そうこうしているうちに、夜になった。
「今夜はこの小屋で寝て、明日はオーロックスを探しにいくよ。何とか大量に牛革を手に入れないとな」
小屋に入って親子三人水入らずでのんびりと夕食を食べていると、突然スマホが鳴った。
(念話じゃなくてスマホ?なんか、嫌な予感がするぜ………)




