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「逆らっても無駄だぞ。私にはこの史上最強の防具がある。何者も私を傷つけることができないのだ!ワハハハハ!」
森はゲームのラスボスのように天井を見上げて高笑いをした。
(彼、こんないかれたヤツだったの?)
(いけすかないエリート野郎だったが、ここまでヒドクはなかったなあ。この異世界に来て、超人的な力を手に入れ、本性が現れたんだろうな)
(どうするのよ?こんなキモイ男、生理的に無理だわ)
(取り合えず、逆らっても無駄だから大人しく言うこと聞いとこう)
(またノープランなのね!情けないわね!ホント、君って頼りにならないわ!)
香菜子が念話で冷たく言い放った。
いつもの俺なら香菜子に冷たく罵られるのは御褒美だったが、今は直接ダメージを受けていた。
実際のところ、俺は今の森の姿を見てかなり落ち込んでいたのだ。
森がやっていることは、程度の差こそあれ俺もやろうと企んでいたことだからだ。
せっかく異世界に転生したのだから、ゲスでクズな自己中と呼ばれても、好き勝手やって生きてやるつもりだった。
だが、森の姿をこうして外から客観的に観ていると、心が黒雲に覆われ、すっかり気が滅入っていた。
香菜子が俺の顔を覗き込んで言った。
「どうしたの?顔が悪いわよ」
「顔色が悪いだろ?」
「顔も顔色もどちらも悪いわ。しっかりしなさいよ!」
香菜子はそう言うと、俺の背中を手のひらでパーンと叩いた。
彼女はこれでも励ましたつもりなのだろうが、俺はよろめいて前に倒れそうになった。
宝物庫を出ると、次に森は敷地の隅に建てられた粗末な小屋の中に入っていった。
その小屋には、地下に降りるための石造りの階段があった。
嫌な予感がしたが俺たちは逆らうこともできず、大人しく森に従って階段を降り、暗く湿った地下室に入っていた。
案の定、そこは地下牢だった。
剣と槍を携えった数体のメイドゴーレムが眼を光らせて警備をしていた。
メイド達はみんな美少女なだけに、よけい薄気味悪かった。
いかにも不衛生な地下牢の一番奥にある鉄の檻の中には三人の囚人が捕らわれていた。
三人とも俺たちと同年齢の少女だった。
顔に見覚えがなかったら、俺たちと同様、この世界に転移してきた女生徒だろう。
彩香先生が落下するのを目撃したとかいう女生徒に違いない。
三人は髪はぼさぼさで、全身泥だらけ、肌もガサガサに荒れて、ひどい待遇を受けているのがすぐに分かった。
全員、全裸で石積みの床に横たわっていた。
「誰なんだ、この子たち?」
「三年生の小田 桃歌と菅原 瑠奈、そして陸上部の二年生大塚 美乃里だ。三名ともこの異世界に来て、錬金術師になった」
「どうして同じ学校の生徒に、こんな酷い目をあわせるのよ!」
「こいつらが素直に私の言うことをきかなかったからだ。懲らしめのためにこの牢屋で反省させている」
と、牢の中の女の子たちが森に気づいて、床を這いながら近寄って来た。
「も、森様………。お助け下さい………」
「何でも言うことを聞きます。だから、食べ物をちょうだい………」
俺は跪くと、牢の柵越しに三人の手を握り、彼女たちのステータスを読み取った。
三人とも体力も満腹度もほとんどゼロで、今にも餓死寸前だった。
「この子たちに食べさせていないのか!?このままだと餓死するぞ!」
「うるさい!うるさい!うるさい!いちいち大袈裟に騒ぐんじゃない!!」
森が急に狂ったように甲高い声を上げた。
「餓死する前には食料を恵んでやるさ。死んじまって、どこかにリスボーンされるとやっかいだからな。生かさず殺さずでずっとこの牢屋で飼い殺しにしてやるのさ!」
「―――あんた、イカレてるよ……」
俺は燃え上がるような怒りを覚え、立ち上がった。
そして、俺は魔法の弓矢をつがえ、森の胸倉にビタッと照準を合わせて術式を詠唱した。
「AIM !」
本来自己中な俺が、急に正義心に目覚めたわけではない。
ただ、自分がイジメを受けていたこともあり、同じ年頃の少女が過酷な扱いを受けているのを見て、黙ってはいられなくなった。
「何のつもりだ?」
「この子達を開放しろ!さもなくば、撃つ!」
森は失笑し、兜の中から低い笑い声が響いてきた。
「クククク……。バカか!お前の指図は受けない」
「どうしてだ!お前ほどの錬金術師なら、自分ひとりで好き勝手に何でもできるだろう。この子達や俺達みたいなザコなんか放っておいてくれ!」
「――――私は錬金術師ではない!」
「はあ……!?そんな、バカな……!?」
「私のJOBは剣士だ!」




