02
足元の穴に気を付けながら、俺は樫と白樺と杉の木の混交林を抜けた。
すると、目の前には高さ10メートルほどの丘が現れた。
俺は岩がむき出しになっている部分の「破合線」を目がけて右手を振り下ろした。
数回手刀を振るうと、直方体のブロック「石・01」が採れた。
俺はそのまま石を十数個掘り出した。
岩壁には、ポッカリと直方形をした洞窟が完成した。
「とりあえず、ここを拠点とするか」
俺は自分の掘った洞窟に入り、住み心地を確認した。
インベントリーから土ブロックを取り出すと、洞窟の入り口を土の壁でしっかりと塞いだ。
土壁で洞窟を塞ぐと中が真っ暗になってしまった。
「当たり前か」
俺は慌てて持っていた松明を地面に刺した。
一本では薄暗いので、もったいないが、壁にも松明を刺した。
これで手持ちの松明は、残り一本になってしまった。
この世界では、暗い場所にはモンスターが自然発生してくるらしい。
早く松明を作らないと。
俺は「E」と心の中で叫んでインベントリーの画面を開いた。
画面の中心には工作枠があり、簡単な品物ならここで作ることができるのだ。
俺はその工作枠に、「杉の木」を入れた。
すると、「杉の木」は「杉の材木」に変わった。
アイテムは最大100個まで一つの枠内にスタックできる。
俺は材木を100個作った。
次に材木を4個、工作枠に入れ、「作業箱を作り、目の前の地面に置いてみた。
作業箱は上面に格子模様の蓋があるだけの、何の変哲もないただの木製の箱だった。
錬金術師はこの作業箱にレシピ通りの材料を入れたら、より複雑な物を作れるのだ。
俺は作業箱の中に石と土を入れて「石窯」を作り、作業箱の横に並べて置いた。
石窯は上に燃やす物、下に燃料になる物を入れるようになっている。
俺は上に杉の木、下に杉の材木を入れた。
すると、石窯に火がともり、次々を木が燃やされ木炭に変わっていった。
次に俺は作業箱に材木を二つ放り込み、「棒」と心の中で念じてみた。
すると、木材は「棒」に変わって出てきた。
その棒と木炭を作業箱の中に押し込み、「松明」と念じた。
俺はようやく松明を手に入れたのだ。
この一連の作業は、似たようなことをゲームでやったことがあるので、すんなりと実行できた。
異世界の錬金術とゲームが似ているとは、偶然とはいえ恐ろしいものだ。
余裕ができたので、ついでに木材を組み合わせて、ドアと物入れを作った。
洞窟の入り口を塞いでいた土を縦に3ブロック横に2ブロック取り除き、そこにドアを置いてみた。
石窯の横に小さな物入れを2個、地面の上に並べておくと融合して、1個の大きな物入れに変わった。
一体どういう仕組みなのか不思議だったが、錬金術とはこういうものなのだ。
現実は受け入れるしかない。
俺はとりあえず不要なアイテムを物入れの中に仕舞った。
ドアを開けて外を見渡すと、辺りはそろそろ薄暗くなってきていた。
あまり外をうろつきたくなかったが、今夜は徹夜で作業をしておきたいので、思い切って外に出た。
俺は拠点のすぐそばを流れている川に向かった。




