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 取り敢えず、俺達は全員が徹夜明けで疲れていたので、適当に分かれて小屋で寝ることにした。


「うちらはこの小屋、もーらい!」


「おやすみなさーい!」


 岩田 萌々と岩田 菜々の双子姉妹は、早々と二人で小屋の中に消えていった。



「私は一人がいいわ」


 俺のクラスメート、西 香菜子は他人を寄せ付けないオーラーを全身から発しながら言った。


「西さん。そうすると、私と井稲さんとジュリエットさんの3人になってしまいます。どうせなら、女性陣は二人ずつに分かれて眠りましょうよ」


 彩香先生がそう言うと、井稲 真耶はスッと体を俺に寄せ、俺の腕にしがみついた。


「アタシは彼と一緒に寝るわ」


「い、井稲さん!全然、いいね!じゃないわよ。年頃の男女が同衾するなんて、先生、許しませんわよ!」


「センセー。ドウキン?どういう意味デスか?」


 ジュリアが興味津々の顔で彩香先生に尋ねた。


「ジュリエットさん。同衾というのはね、ひとつのお布団で一緒に寝るってことなのよ」


「残念ながら布団なんかねぇよ。みんな我慢して床の上に雑魚寝してくれ」


「カエル男くん。そう言う意味じゃなくてね………」


「先生!井稲さんとカエル男がそうしたいって言ってるんだから、好きにさせたらいいのでは。私はお先に失礼します」


 そう言って、西 香菜子はさっさと一人で小屋の中に消えていった。



「アタシらも行こ!カエル男さん!」


 俺はマヤに腕を引っ張られて、小屋の中に入っていった。


「それじゃ、彩香先生。おやすみなさい」




「お待ちなさい、カエル男くん!あら、あら、どうしましょう!」


「センセー。ジュリア、もう眠たいデス」


「仕方ないわねぇ。あの二人、間違いを犯さなければいいのだけど。何かあったら、引率者の私の責任問題だわ」



 彩香先生はブツブツと文句を言いながら、ジュリアと一緒に小屋に入っていった。


 俺とマヤ、双子、彩香先生とジュリア、そして西 香菜子がそれぞれ別れて小屋に入ったことになる。




「カエル男さん。無事に帰って来てくれてよかった!」


 小屋に入ったとたん、マヤは自分のインベントリーから茶色の小ビンを取り出した。


「何だい、それ?」


「リンゴの果実酒よ。暖まるから飲みなよ」


「こんなもの、どこで手に入れた?」


「#西 香菜子__にし かなこ__#にもらった」


「へぇ~~~!こんないいもの、この異世界にあったんだ!知らなかった」


「彼女の宝箱に一杯入っていたそうよ」


「へぇー。今度、レシピを教えてもらうか」




「はい。どうぞ」


 マヤは小さなグラスに果実酒を注ぎ、手渡してくれた。


「乾杯!」


 二人でグラスを交わし、俺は一気に果実酒をあおった。


 身体が奥の方で少し熱を持ち始め、内側がもぞもぞと波立つのを感じた。


「美味しいお酒だ。体中が暖かくなって、疲れがとれてゆくよ」



 マヤがギュッと俺にしがみついてきた。


「アタシ、寂しかったわ!」


 マヤが瞳を潤ませて、上目遣いで俺の眼を見つめながらデレた。


 さすがモデルをしているだけあって、男心をくすぐってドキドキさせるテクニックに長けている。


「よせよ。彩香先生に怒られるぞ」


「あんなBBA!気にすることないわ」


 俺の下腹が熱く、キュンとなった。




 どれくらい時間がたったのだろう。


 俺は背中を丸め、小屋の固い床に直接寝ていた。


 背後からマヤが身を寄せて眠っている。


 背中にマヤのぬくもりを感じながら、俺は死んだようにぐっすりと眠っていた。


 と、額に何か微かな衝撃を感じた。


 誰かが指で俺の額をはじいたのだ。

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