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「お前らもなんかできるのか?」
そう俺が問いかけると、双子の女の子達は顔を見合わせて、ニヤッと笑った。
「ジャーン!」
「魔法の弓や!」
そう言うと菜々の手には黄金色に輝く弓が、そして萌々の手には銀色の矢が現われた。
「お前ら、どこでそんな物手に入れた!?」
「宝箱の中に入っとったんや」
「宝箱を知ってたのか?お前ら、転移した時に空中に現れたわけじゃないのか?」
双子は同時に頭上を見上げて指さした。
「うちら、気が付いた時は地上の岩場におったんや」
「そばに宝箱があったから、中開けたら食べ物やこの弓矢が入っとったんや」
「そんで、二人してこれからどないしよって話てたら、急に足元の岩場がなくなってもうたんや」
「そうか。やっぱりこの大穴は最初からあったわけじゃなかったんだな。ジュリアも#宝箱__パカ__#を開けたのかい?」
「ジュリアは、気が付いた時、地面ありませんでした。だから、何もありません」
「そうか。それは残念だったね」
人によって、転移した場所も時刻もバラバラのようだった。
もしかしたら、トラックに跳ねられた場所と時刻に関係があるのかもしれない。
「それで――双子………?」
「菜々と萌々や」
「名前ぐらい覚えてや」
「それで、お前らの魔法の弓にはどんな効果があるんだ!」
「そんなん、知らんわ」
「どうやって使ったらええのか、わからへんもん」
「なんだ、弓も使えねぇのか!ちょっと俺に貸してみろ!」
(うまいこと言って、取り上げてやるぜ)
俺が手を伸ばすと、双子は疑いのまなざしで俺を見た。
「あんた、うまいこと言って取り上げる気やないやろな」
(ギクッ!)
「ひ、人聞きの悪いこと言うなよ」
「なんか動揺してへんか?」
「怪しいなあ」
双子は渋々弓と矢を俺に手渡した。
俺はインベントリーからリンゴを取り出すと、双子の片割れ(#菜々__なな__#と#萌々__もも__#の区別がつかない)に差し出した。
「リンゴを放り投げてみろ。試しに弓で射貫いて見せてやるぜ」
「リンゴや!リンゴや!食べ物や!」
「うちも食べたい!」
双子は目の色を変えて、二人で一個のリンゴを取り合いをした。
「こらこら!お前ら猿か!食べ物で兄弟ゲンカするなよ!もう一個やるから!」
二人ともにリンゴをあげると、双子は嬉しそうにさっそくかぶりついた。
「ジュリアはお腹すいていないのかい?」
俺はとっときのモモとケーキを取り出して、ジュリアに差し出した。
「カエル男!あれ、見て下さい!」
ジュリアが震える指で俺の背後を指さした。
「どうしたのかなあ?」
ニコニコと笑顔で振り返ると、剣や斧を振りかざした三十匹ほどのゴブリンの大群が、こちらに向かって水辺を走ってくるとことろだった。
すっかり油断していたが、今は夜で、周囲は暗闇に支配されている。
俺たちはモンスターどもが闊歩するデンジャラスゾーンにいるのだった。
「ヤバイ!あんなに来られたら矢が足りねぇぞ」
矢が無くなってしまったら、剣で接近戦を行うしか手がない。
果たしてジュリアやついでに双子を守りながら戦えるだろうか。
「AIM !」
一本も矢を無駄にはできない。
俺は一番先頭を走るゴブリンに照準を合わせて、矢を放った。
矢はまっすぐゴブリンに命中し、その瞬間、爆発した。
「えっ!?」
打ち終わった俺の右手を見ると、銀の矢が1本残っていた。
「もしかして……」
俺は黄金の弓を構え、次のゴブリンに照準を合わせると銀の矢を放った。
確かに銀の矢はゴブリンに命中し、粉々に吹き飛ばしたが、次の瞬間、再び俺の右手の中に矢は復活していた。
「この銀の矢は、いくら射ってもなくならないぞ!」
弓矢をじっと見つめると、アイテム名が浮かび上がって来た。
「ぼくの考えた最強の魔法の弓矢」、「レベル マックス」、「弾数 ∞」、「飛距離 ∞」「爆裂属性」。
「すっげぇ!」
俺は興奮して、次々とゴブリン達に照準を合わせてはぶっ飛ばしてやった。
ゴブリンの大群は爆音とともに掻き消え、跡にはオレンジ色の石「魔石」が転がっていた。




