表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/89

01

「よく考えたら俺、異世界に来てまだ宝箱(パカ)を開けただけじゃないか!もっと主人公らしい活躍をしないと!まずはチート能力を活かして資源を集めるのだ!」


 俺は「破合の眼」を使って、目の前の樹高4m程の杉の木を見つめた。

 すると、木の幹に伐採するための光の線「破合線」が見えてきた。


 俺は右手でその光の線に沿って手刀を繰り出した。

 数回、手刀で幹を叩くと、モクッと木の幹に穴が開いた。

 俺のインベントリーにはサイコロ型の木のアイテム「杉の木・01」が自動的に入った。


 穴が開いた木の上部が空中に浮いている。

 ゲームでは見慣れた光景だったが、現実に目の前に木が浮いているとかなりシュールだ。

 ともかく目の前の杉の木の幹を手刀だけで黙々(モクモク)と伐採していった。


 結果、4つの杉の木、1つの苗木、1つのリンゴを手に入れた。


 何故か、木を切ると時々リンゴも落ちてくるのだ。


(リンゴの木じゃないのにな!?)


 今の俺には大変ありがたい食料なので、深くは考えなかった。


 俺はリンゴ欲しさに夢中になって木を切り倒していった。




 ふと、気付いて空を見上げると、太陽が空の真ん中で輝いていた。


「いっけねぇ!もう正午じゃねぇか!?」


 俺が体内に吸収したエメラルド・タブレットには、この異世界の(コトワリ)も記載されていた。

 この異世界では夜になると、様々なおぞましいモンスターが現れ、人間を襲うのだ。

 夜が来るまでに、安全な拠点を作らないと殺されてしまう。

 時間との勝負だ。


 俺は樫と白樺と杉の木の混交林を抜けたところにかすかに見える、小高い丘に向かって走っていった。


 しばらく走っていると急激に腹が減ってきた。

 自分の満腹度ゲージを見るとほとんどゼロだった。


「そうだった!走ると腹が減るのが早いんだ!」


 俺はリンゴを食べようと、慌てて立ち止まった。


 すると、俺の足元の前方1メートルほどの地面に、ポッカリと四角い穴が開いていることに気が付いた。


「――――立ち止まらなかったら、穴に落ちてたところだ!」


 俺は冷や汗をぬぐった。


「どれぐらいの深さがあるのだろう?」


 俺は地面にしゃがみこんで、穴の中を覗き込んだ。


 ガサガサッ!ゴソゴソッ!

 穴の下は真っ暗だったが、かすかに何かが動く気配を感じた。

 シュッ! 

 何かが穴から飛び出し、俺の頬をかすめた。


 俺は驚いて飛びずさり、背後を振り返った。

 杉の木の幹に、一本の矢が突き刺さっていた。

 俺の頬をかすめたのはこいつだ。


 暗い穴倉の底には弓を携えたゴブリンがいて、俺に向かって矢を射ったのだ。

 俺は再び、額の冷や汗をぬぐった。


「夜になる前に早く仮住まいの拠点を作らないと、モンスターが沸いてきて殺されちまうぞ!」



 俺は見通しをよくするために穴の周りの木を少し切り倒し、目印に松明を一本立てておいた。

 穴は塞がずにそのままにしておいた。

 後で鉱物を掘るために、ここから地下に潜るかもしれないからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ