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「経済的利益のために熱帯雨林を伐採するのは、料理のために名画を燃やすようなものだ」


                      エドワード・ウィルソン



 俺は密林の巨木を次々と伐採しては、材木に加工し、「万能無限収容箱」を作っていった。


 あれだけ樹木が密集していたジャングルが、あっという間に更地に変わってしまった。


 この異世界には「錬金術師が歩いた後には、草も生えない」という言葉があるそうだが、俺はみずからの行為に、そして錬金術の威力に恐怖した。


「生き物は森林なしには生きられない。これ以上、森林破壊という暴挙を許してはならないのだ」


 そろそろ生活に余裕ができてきたので、俺は自然に優しい錬金術師をモットーに掲げようと思う。


「読者の好感度を上げて、ブックマークに追加してもらうのさ!」


 そう言うわけで、俺は木を切ったら、ちゃーんとその跡に苗木を植林してまわった。

 こちらの世界では、苗木を植えたらわずか数日で元通りの巨木になるのだ。




 と、密林の奥に何か動物の気配を感じ、俺は剣を握りしめてた。


「―――何か、いるぞ?」


 そっと、木の陰から覗いてみると、2本の鋭い角を持ち体長3メートル、体重1トンはありそうなこげ茶色の長毛の牛の群れだった。


「牛………?じゃないな。ありゃあオーロックスだ!」


 オーロックスとは牛の原種で17世紀には絶滅した獰猛で巨大な生物だ。


 さすが異世界!こちらでは牛はまだ家畜化されていないらしい。



GRANT FIRE(グラント ファイアー)!」


 俺は持っていた石の剣に「炎の属性」を付与した。


 そして、のんびりと草を食んでいたオーロックス達の背後に忍び寄り、壊合線をばったばったと斬りまくった。


 オーロックス達はたちまち焼け具合ミディアムのステーキ肉と骨とモツとなめした牛革に変わった。


「ヒャッハー!汚物は消毒だ!さすがは炎の剣だぜ!」

 

 俺は殺戮の限りをつくし、オーロックスをあらかたステーキ肉に変え、インベントリーに収納した。


「万能無限収容箱」には「ステーキ肉 139」が収容され、当分肉には困らないだろう。


この調子でいくと、この異世界でもオーロックはすぐに絶滅してしまうかもしれない。


「しまった!食べ物のことになるとついつい我を忘れてしまう!どうせ誰も見てないと油断して、ヒャッハーな醜い姿を晒してしまったぞ!ああ!読者が引いているのを感じるわ!」


 たちまち読者の好感度が下がり、ただでさえ少ないブックマークがどんどん削除されていった。




 閑話休題(それはさておき)



CALL(コール) 豆腐小屋!」


 俺は休憩のため、更地の中央に豆腐小屋を建てた。


 そして小屋の中でゆっくりとステーキ肉を頬張りながら、工作箱で牛革を加工して服を作っていった。


 牛革のシャツ、ジャケット、ズボン、靴、そして、マント。


 パンツ1丁だった俺は、マントを羽織り、ようやく錬金術師らしい格好になってきた。


「そもそも俺は錬金術師に会ったこともないので、どんな格好が錬金術師らしいのか知らないがな」




 さて、腹も膨れ、服装も整え、ようやく少しヤル気が出てきた俺は南に向かって歩きだした。


 南の大渓谷に着けば、きっと貴重な鉱物を手に入れることができるだろう。


 エメラルド・タブレッタから得た知識によると、地下には「魔石」と呼ばれるダイヤモンドより高価で希少な宝石が埋まっている。


「魔石」は錬金術や魔力のもとになる宝石で、例の宝箱_(パカ_)に入れて術式を唱えると、高確率でレアなマジックアイテムが錬成されるのだ。


 錬金術師の中にはこの魔石パカを引くために、全財産を課金して破産したやつがうようよいるらしい。



 と、ジャングル中に「カコーン!」という木を叩く甲高い音が響いた。


 俺は驚いて足を止め、耳を澄ました。


「カコーン!」


 再び、南西の方角から音がした。


 俺はアイテム生成のレシビの中に「太鼓」があることを思い出した。


 慌てて材木と牛の皮を取り出すと、作業箱に入れて太鼓とバチを作った。

(なんでこんなレシピがあるんだ?)


 むずかしさ「鬼」の達人のように、俺はマイバチで太鼓を叩いて音を出した。


 俺は「ドン」と太鼓を叩くと、遠くで「カコーン」と音が帰ってきた。


「ドン!」

「カコーン!」

「ドン!ドン!」

「カコーン!カコーン!」

「ドドンドン!ドン!」

「カカコーン!カコーン!」


「大成功だドン!あれは井稲 真耶(イイネ マヤ)だ!」

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