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 俺は豆腐小屋の石壁を1個だけ壊して穴を開けると、そこから手を伸ばして溶岩を「鉄の手桶」ですくい取った。

 もちろんこの「鉄の手桶」も錬金術師のマジックアイテムの一つだ。

 およそ水でも溶岩でも液状のものなら何でも運搬、収納ができる優れものだ。


 「鉄の手桶」で溶岩を石窯下部に流し込み、上部に原木のブロックをセットすると、原木は炭化し次々と木炭ができていった。


 これから行く予定の大渓谷地下の暗闇の中では、松明はいくらあっても足りないだろう。

 松明を作るには炭が必要なのだ。

 石炭を殆ど持っていない現状では、松明を作るために大量の木炭が必要だった。


「原木はいくらでもあるんだ。溶岩が干上がるまで木炭を作ってやるぞ」


 俺は石窯を一挙に10個作って小屋の中に並べ、「鉄の手桶」で溶岩を汲んでは流し込んでいった。


 10個の石窯はフル稼働で木炭を量産していった。


 石窯に溶岩と原木をセットしてしまうと、あとは木炭ができるのを待つだけなので手持ち無沙汰だ。

 俺はまだまだ原木を大量に持っているので、「万能無限収容箱」を作ることにした。


 「万能無限収容箱」とは同じアイテムを無尽蔵に収納でき、自由に出し入れ出来る究極の物入れのことだ。

 インベントリーが満杯になる心配もなくなり、いくらでもアイテムを持ち運ぶことができるのだ。


 原木から材木を作り、材木から物入れを作り、その物入れを100個合体させてようやく1個の「万能無限収容箱」ができる。

 普通なら原木を集めるだけで一苦労なのだが、俺はここに来るまでに「CUT ON」の術式でジャングルの巨木を切りまくっていた。

 おかげでインベントリーの中は、巨木の原木で満杯だった。

 俺は持っていた巨木の原木を作業箱で加工し、試しに1個「万能無限収容箱」を作ってみた。


 見た目は普通の物入れと変わらなかったが、中に松明を1本を入れてみると、たちまち「万能無限収容箱」は松明ブロックの外見に変わった。


「なるほど。これなら中に何が入っているかすぐに分かるな」


 俺は松明を作っては「松明の万能無限収容箱」に入れていった。

 松明入れるたびに松明の数がどんどんカウウトアップされてゆく。

 遂に手持ちの原木をすべて加工し終わった時、「松明の万能無限収容箱」には3034本の松明が納まっっていた。


「これは本当に便利なマジックアイテムだな。明日、地上に上がったら、ジャングルの木を伐りまくって『万能無限収容箱』を一杯作ってやるぞ」


 夜も更けた。

 さすがに疲れ果てて、俺は黒樫の床の上に泥のように眠った。



 翌朝、目覚めた俺は大きく背伸びをした。


「あっ!?」


 そのとたん、俺の全身から黒焦げになった皮膚や服の燃え残りがボロボロっと落ちた。


 マグマに落ちて殆ど炭化していた俺の足は、ビンク色ですべすべした新しい皮膚に生まれ変わっていた。


(空腹でさえなければ、どんな怪我をしても時間が経てば自然と治ってしまう。やはり、異世界に来て、俺はまともな人間ではなくなっているんだなあ………)


 肉体は元通り再生したが、着ていた学生服の方は悲惨だった。

 奇跡的に股間に残ったトランクス以外は焼け落ち、ほとんど丸裸になってしまった。



 俺は例によって例のごとく、土ブロックをトントンと積み上げて地上に戻った。


 明るい日差しの下で周囲の巨木を見てみると、確かに森林火災を起こした跡があった。

 俺が始まりの塔から見つけたのは間違いなくここだったのだ。


SNEAK(スニーク) !」


 俺は両手両足に細かい繊毛を生やし、スルスルとカエルのように垂直にそびえ立つ巨木をよじ登っていった。

 巨木の頂上に立ち、周囲を見渡した。

 

「今度は服を作らないとな。そのためには動物の皮が欲しいな。どこかに牛でもいないかなあ」


 辺り一面、緑に覆われていて、この世界には樹木以外何も存在しないような気がしてきた。

 俺は深くため息をついた。


(あ~~~~~~あ!めんどくせー!異世界に来てから作業ばっかりだ!家に引き籠っておやつ食べながらゲームをしていたあの世界に帰りたい………。俺はこんな所、来とうなかった。異世界に転移したり転生した諸先輩の方々は、元の世界に戻りたいと思わなかったのだろうか)


 まだ第2章が始まったばかりなのに、俺はもうホームシックにかかったみたいだ。

 そのうえ、俺は低血圧なので朝は機嫌が悪い。


(昨日の夜はテンション高かったのになあ。どうしたんだろう、俺?やっぱ、あれかな。バンツ一張の今の格好で心が折れたんだな)


 俺はパンパンと頬を叩いて自分で自分にカツを入れた。

 そして、両手を広げて、手のひらに太陽を透かして見た。


「さあ、新しい朝が来たんだ!希望に燃える朝だ。今日は一日がんばるぞい!」


(ン?何か大切なことを忘れているような…………)

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