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「完璧な計画を来週実行するより、まあまあの計画を今すぐ断行する方がはるかに良い」

                  ジョージ・S・パットン




 始まりの塔から見えた南方の密林、その奥にある溶岩溜まりと大渓谷、そこを目指して俺は一人旅立った。

 持ってゆくのは作業箱、石の剣、パン20個、松明100本、土100個。

 たったこれだけだった。

 

「それ以外に俺が持っている物は、知恵と力と勇気ですべてであった!」


 俺はまた、独り言を言いながら歩いて行った。

 まるでファンタジー小説の主人公にでもなったような気分だった。


「いや、お前、一応ファンタジー小説の主人公でしょうが!」と言う読者の暖かいツッコミもなく、俺は期待と不安の入り混じった何とも言えない複雑な気分だった。


 黒樫と白樺と杉の木がそびえ立つ混交林を俺は黙々と進んだ。

 途中、帰り道がわかるようにと、目印の松明を木の幹に突き刺していった。


 ちなみに便宜上「松明」と呼んでいるが、この世界の錬金術師が作る松明は炎を出しているわけでもないのにずっと発光している。

ソーラー電池内臓のLEDライトみたいな品物で、よくご家庭のお庭に刺してる照明みたいな物だと思っていただきたい。



「こんなベースじゃ大渓谷に着く前に暗くなっちまうぞ!」


 本当はジャンプダッシュで走りたいところだが、木が密集していてなかなか思うようには進めなかった。

 俺は術式を使うため、例のごとく「T」と舌打ちして術式詠唱用画面を開け、剣を振るった。


「CUT ON(カット オン) !」


 俺がチートコマンド、いや、術式を唱えると、右手は眩いばかりの光に包まれた。

 俺は目の前の杉の幹めがけて赤紫色に輝く手刀を振りおろした。

 杉の木は枝も葉っぱも含め一瞬で伐採され、数個の原木ブロックがアイテムと化して地面の上を浮遊していた。

 

 次に小高い丘に突き当たった俺は、見通しを良くするために丘を丸ごとなくしてやろうと考えた。

 俺は丘の頂上に上がって術式を唱えた。


「DIG ON(ディッグ オン) !」


 俺の右手は魔法のスコップの能力を帯びた。

 俺は自分の足元の地面に右手を突き刺した。

 すると、足元の土がすべてアイテム化し、俺は剥き出しになった岩の塊の上にストンと着地した。


「よし!今度は岩を砕くぞ!MINE ON(マイン オン) !」


 俺の右手は魔法のツルハシの能力を帯びた。

 右手が岩肌の壊合線に触れるとたちまち巨大な岩の塊はアイテムと化し、消え失せた。

 と、俺は地面にズドーンと落下して結構なダメージを受けてしまった。


「痛テテッ!今度から自分の足元を掘るのは止めとこ!」

 俺は体力を回復するために持って来たパンをパクパクと食べながら反省をした。


 岩がゴッソリと無くなった空間には、大量の石炭とわずかばかりの鉄鉱石の鉱脈が浮かんでいた。


「やっと念願の鉄鉱石を手にいれたぞお!」


 俺はいそいそと石炭と鉄鉱石を右手で採掘し、インベントリーに収納した。




 混交林を抜けて密林地域に足を踏み入れると、今度は下草と巨木が行く手を遮った。

 樹高50から100ブロックもある巨木は、「CUT ON(カット オン)」術式を使えば、一瞬で消えて「巨木の原木」アイテムが嘘みたいに沢山手に入るのでとってもお得だ。

 しかし、下草は一括して刈り取る術式はないので、俺は石の剣を使って道を切り開いて行くしかなかった。

 「巨木」に生えた「ツタ」は工作箱で「縄」に加工できた。

 ついでだから、「縄」と「棒」から「弓」と「矢」も作ってインベントリーに仕舞っておいた。

 弓矢は「AIM(エイム)」という術式を使えば、必ず当てることができるからこれまたお得だった。

 

 こうして俺は、目の前に立ちはだかる木々や岩山を次々と破壊しながら進んだ。

 たちまち俺のインベントリーは、原木や土や岩で満杯になった。

 

 西の地平線を見ると、沈みかけの夕日が周囲を黄金色に染めていた。、

 もうすぐ夜のとばりが降りて来て、モンスター達が闊歩する恐怖の時間になる。

 俺は用心のため、右手の石の剣を硬く握りしめた。


「ちょっと、寄り道しすぎたかな。夜になる前に、溶岩溜まりまで辿り着きたかったのに…」


 俺は少し焦っていたのかもしれない。

 足元に人ひとりがやっと通れる小さな穴が開いているのに気がづかなかった。


「うわああああっ!?」


 俺が穴を潜り抜けると、地面の下には空洞がポッカリと穴を開け、熱風と灼熱の溶岩が待ち構えていた。

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