プロローグ:破
「―――まあ、腹が減ったしリンゴでも食うか。いや。やっぱり腐りやすいモモから食べるとするか」
(『続 プロローグ』の回で言い訳した通り、俺は説明口調の独り言が多い)
俺はインベントリーからモモを取り出して、パクッとかぶりついた。
甘いモモの果汁が口いっぱいに広がった。
と、目の前の空間に赤や青い色のゲージが現れ、少しだけ青いゲージが伸びた。
俺は勉強ができないが、元々賢いのですぐに理解した。
目の前に現れたのは、俺の現在の体力、経験値、満腹度を示すステータス欄だ。
「JOB:無職」、「Lv:俺TUEEEE!!」と記載されていたが、スルーした。
「ゲゲゲッ!?」
ステータス欄を見ていて、俺は思わず叫び声を上げた。
そこには俺の名前が「カエル男」と登録されていたのだ。
「俺の新しい名前は『カエル男』かよ!俺は一生、この名前で呼ばれるのか!?嗚呼!!バカなことをしてしまった!」
俺はDQNな親にキラキラネームをつけられた子供の気持ちを味わっていた。
俺の場合は、自分で名付けたのだから親を怨むわけにもいかない。
「名は体を表すという。せいぜいゲスなクズ男になってやるぜ!ゲロ!ゲロ!ゲロ!!」
すっかり不貞腐れて、俺は逆ギレしていた。
俺はパカの中身をひとつずつ、自分のインベントリーに移動させた。
インベントリー内のアイテムの移動は、右手の人差し指と中指で空間を触ると、マウスを使う要領で操作できた。
パカにあった品物が現実空間から掻き消え、インベントリーの中に納まる様は奇妙奇天烈であった。
すぐに俺は、声に出さなくても、頭の中で「E」と言う単語を思い浮かべるだけでインベントリーの開け閉めをできるようになった。
最後に緑色の石板をインベントリーに入れようと右手の人差し指で触ってみた。
ところがこの石板がインベントリーの中に入らない。
石板の上には恐らくアイテム名なんだろう「エメラルド・タブレット」と言う文字が見て取れた。
「もしかして………」
俺は人差し指で、エメラルド・タブレットを二回、チョンチョンと触ってみた。
と、エメラルド・タブレットは緑色に発光し、周囲は目もくらむばかりの閃光に包まれた。
石板に何やら象形文字が浮かびあがってきた。
下のものは上のもののごとく、上のものは下のもののごとし。
これは錬金術の基本原理である。
俺は勉強ができないが、元々賢いのですぐに理解した。
この石板は、錬金術のハウツー本、マニュアルだったのだ!
ちなみに、俺はさっきから普通に文字を読んで理解しているが、もちろん日本語ではない。
きっと、この世界の人間と出会っても日本語で会話できるのだろう。
異世界とはそういう摩訶不思議な世界なのだ。
やがて、エメラルド・タブレットは光とともに消滅した。
「あっ!なくなっちまった!」
俺は間違えて、レアアイテムを無駄に使ってしまったのだろうか。




