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「カエル男さんのバカ!馬鹿!莫迦!」
目を覚ました美衣奈は、俺が無事なのを知ると、涙目で俺の胸を可愛く叩き続けた。
「まあまあ、そういうのはまた時間のある時にしてくれよ。それよりも、いい物見つけたんだ」
俺と美衣奈は、塔の頂上から見つけた光点目指して森の奥に足を踏み入れた。
探し物はすぐに見つかった。
それは見覚えのある4本の松明に囲まれた宝箱だった。
「何ですか、これ?」
「知らないのか?宝箱だよ。この異世界に転移した時に見なかったか?」
「私、気が付いたらすぐにゾンビに襲われて、逃げ回ってましたから。そう言えば、このあたり、見覚えがあるような………」
宝箱のそばで見つけた足跡は、サイズからして美衣奈の物で間違いないだろう。
「じゃあ、この宝箱は私の物ですか?何が入ってるのかしら?レアアイテムだったらうれしいな!」
(―――――また、俺、何かやっちまいましたぜ!)
俺は陰で舌打ちをした。
(嗚呼!美衣奈に黙って一人で来るんだった!そしたらアイテムを独り占めできてたのにぃ!カエル男さんのバカ!馬鹿!莫迦!)
俺は内心激しく後悔していたが、無理して笑顔を作り、温かいまなざしで美衣奈を見守った。
「さあ、早く開けてみなよ」
「はい!」
美衣奈が宝箱をパカッと開けた。
宝箱の中にはリンゴとパンとケーキ、そして、なんと深紅のルビー・タブレットが入っていたのだ。
「やったー!スゴイ物が入っていたわ!」
美衣奈は手を叩き、ピョンピョンと小躍りをして喜んだ。
俺は激しく動揺していた。
「お、おめでとう!」
「本当に私がもらってもいいのですか?」
「と、当然だろう。このパカは美衣奈の物だ」
「それじゃあ、遠慮なくいただきます!」
そういうと、美衣奈はケーキを取り出して、パクパクと美味しそうに食べだした。
「えっ!?そっち?」
「や、やっぱり、半分分けしましょうか?」
「いや。このルビー・タブレットは要らないのかな?」
「私、あんまりアクセに興味なくて……」
「きっとこれを使ったら、凄い魔法や能力が身につくと思うぞ」
「私、魔法少女になるのですか?」
「い、要らないなら、俺がもらっちゃおう…かな……」
「わかりました。資格や能力は色々持っていた方が、人生設計に役立ちますね。私、使ってみます」
俺は女性にモテる男の条件No1の「器が大きい男」を演じるため、タブレットの使い方を美衣奈に教えることにした。
俺の器なんて理科の実験に使うスポイトぐらいの容量しかないのに、たらい船ぐらいの器の大きさを見せたのだった。
「ルビー・タブレットを右手に持ったら、インベントリーに表示されるから、ダブルクリックするんだ」
「こうですか?チョンチョン……!何も起きませんよ?」
「えっ?おかしいなあ……」
左手で美衣奈の腕をつかんで彼女のインベントリーを見ながら、俺もルビー・タブレットを人差し指で2回クリックしてみたが、何の変化も起きなかった。
「ちょっと俺に貸してみて」
美衣奈のインベントリーから俺のインベントリーにルビー・タブレットを移動させてみた。
タブレットをじっと見つめると、アイテム情報が俺の頭に浮かんできた。
「ピジョン・ブラッド。深く透明な濃い赤色のルビー。ハトの血という意味合い。最高級のルビーと言われる」
特に注意書きは書いていなかった。
俺は人差し指でルビー・タブレットを二回、チョンチョンと触ってみた。
と、ルビー・タブレットは赤色に発光し、周囲は目もくらむばかりの閃光に包まれた。
石板に何やら象形文字が浮かびあがってきた。
「う、動き出したぞ!?」
「きれい……!!」




