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「錬金術師って何でも作れるのでしょ。だったら羊も作ればいいのではないですか?」
「――残念ながら生き物を作るのは禁忌項目なんだな」
「ふーん。錬金術師と言っても万能なわけではないのですね」
「そうらしい。(他人事)大体、錬金術って言うくせに金塊を作るのもダメなんだぜ。貨幣価格の混乱を招くからだそうだ。だから金が欲しけりゃ、金鉱石を採掘して精錬するしか方法がない」
「地道に素材を集めるしかないのですね」
「――てなわけで、朝飯食ったら畑に出かけるぞ」
「はーい!」
俺は美衣奈の手を引いて、昨日川辺に作った畑にまでやって来た。
畑のところどころ、既に収穫可能なまでに成長した麦が重そうにコウベを垂れていた。
俺は畑のすぐそばに工作箱、石釜、物入れの3点セットを並べて置いた。
そして、工作箱を使って石製の鎌を作って美衣奈に手渡した。
「茶色くなった麦はもう収穫できるから、この鎌で刈入れをしてくれ。麦はそのまま工作箱に入れたら、小麦粉とワラに分かれて出てくる。小麦粉と水を混ぜて石窯に入れたらパンができる。ワラと水を混ぜて石窯に入れたら紙ができる……」
「ちょ、ちょっと待って下さい。そんなにいっぺんに言われても覚えられません!」
「悪りぃ!ちょっと待ってな」
俺はお手本として少しばかりの麦を刈ると、作業箱を使ってパンと紙を作って見せた。
それから、工作箱に木炭と棒を入れて鉛筆を作った。
俺は出来立ての紙と鉛筆を美衣奈に手渡した。
「今から調理器具と料理のレシピを言うから、しっかりメモってくれよ」
「はい!お願いします!」
俺は美衣奈に作物の栽培、収穫、加工について詳細に教えてやった。
俺はこんな(チマチマした)作業は苦手だが美衣奈は必死にメモを取り、すぐに面白そうに調理に精を出していた。
食料に関しては美衣奈に任せておけば、少なくとも二人とも飢え死にする心配はなくなった。
だが、人はパンのみにて生きるにあらず。
「肉が食いてぇ!」
「お肉なら昨日、焼き豚を食べたじゃありませんか?」
「この世界には豚以外に、牛、羊、馬、兎、魚、猪、鹿、鳥等がいて、みんな俺に食べられたいと待っているんだ」
「も~う、カエル男さんったら、ホント肉食系男子なんだから!」
「そのためには、まず動物を探さないとな」
俺は川の浅瀬にジャブジャブと入って行った。
インベントリーから土ブロックを取り出し右手に持つと浅瀬の上に1個置いた。
「カエル男さん。何をするつもりなのですか?」
「高い所から周囲を捜索してみるのさ!」
俺は土ブロックの上に飛び乗ると、例のごとく土ブロックを次々と積み上げては上昇していった。
「あわわわわあ!?」
美衣奈は麦畑の真ん中で立ちすくみ、驚いて口がきけない。
どんどん積みあがってゆく土の塔を、地表からホゲェーと見上げていた。
100個のブロックを積み上げた土の塔の頂上に俺は立った。
足元を幾つも白い雲が通り過ぎてゆく。
高所恐怖症の人間には1秒といられない場所だ。
「馬鹿と煙は高いとこのぼる」と言うが、俺は高い所が大好きなお利口さんなのでワクワクしながら周囲を見回した。
北は白い雪に覆われた高山地帯。
南には深い森とうっそうと茂るジャングル。
東は海と小島が見えた。
西には草原が広がり、点々と黒い背中の生き物が見える。
牛か馬の群れのようだ。
俺は目を凝らして白い羊の姿を追い求めたが見当たらなかった。
「近くに村もないみたいだな。この世界、ハズレだぜ!」
俺はひどく落胆した。
原住民を見つけたら、コロンブスみたいにガラス玉と砂金を交換して大儲けをするつもりなのに。
それから「硬貨は10枚一組にして数えると便利だぞ」とか、「生肉は焼いて食べた方が美味しいよ」とか、「雨の降る日は天気が悪いんだぞ」とか、「犬が西向きゃ尾は東」とか、現在人の持つ高度な専門知識を披露して圧倒してやろうと思っているのに。
と、目の端に何か赤い光が見えた。
南のジャングルの奥の方だ。
「なんだ、ありゃ!?」




