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「きゃああああ~~~!!」
美衣奈が拠点中に響き渡るほどの悲鳴を上げた。
ヴァンパイアが窓にぶつかる!
そう思った瞬間、ヴァンパイアの身体は霧散し窓の隙間をすり抜けた。
「ギェェェェェェェ!!」
ヴァンパイアは美衣奈の目の前で再び実体化し、鋭い牙をむいてうなり声をあげた。
「ぎゃああああああ!!」
美衣奈の悲鳴が窓ガラスを振るわせる。
エメラルド・タブレットで知識としては知っていたけど、やっぱり実際に目の前で見るとヴァンパイアは凄まじい迫力があった。
しかし、俺はあらかじめヴァンパイアの弱点を調べていたので余裕だった。
「はい、グサッ!」
俺はニンニクを塗り付けた石の剣で、ヴァンパイアの壊合線を突き刺した。
「グガアアアアッ!!」
ヴァンパイアは断末魔の悲鳴を上げ、煙のように掻き消えた。
「もう、ダメ……………」
美衣奈はクラクラとめまいを起こして卒倒してしまった。
崩れ落ちる彼女の小柄な身体を、俺はガッシリと受け止めた。
美衣奈は歯を金物のようにガチガチ慣らし、俺の腕に必死にしがみついてきた。
「ムリ!ムリ!無理!こんな化け物だらけの世界で、私、生きていけないわ!!」
「大丈夫!大丈夫!俺がついているからね!」
俺は震える美衣奈の身体を抱きしめ、背中を優しくさすってやった。
「カエル男さん!!私、怖いわ!!」
美衣奈は体中の血液が逆流するほどの恐怖を感じていた。
「心臓がドキドキして苦しいの!ほらッ!」
美衣奈は俺の右手を取ると、そっと自分の左胸の上に導いた。
俺は無言で彼女の少し小振りの胸の上に手のひらを乗せた。
早鐘をつくように彼女の胸の鼓動は高まり、それに伴って呼吸が荒くなった。
「ハア!ハア!ハア……!」
美衣奈の頬はすっかり紅潮し、今にも泣きだしそうな声であえぎだした。
(計画通り!)
超悪人面でほくそ笑む俺。
「つり橋効果」とは、揺れるつり橋を渡ったことによるドキドキを、一緒につり橋を渡った相手へのドキドキだと勘違いし、恋愛感情だと思い込んでしまう効果のことだ。
お化け屋敷や絶叫マシーンでスリリングな体験を共にした相手に対し、「あの時のドキドキは恋に違いないわ」と思い込み、恋愛感情が芽生えやすくなる効果のことを言う。
俺が窓を作ってわざと美衣奈に外のモンスター達を見せたのは、この「つり橋効果」を狙ってのゲスい行動だったのだ。
(今ならどさくさにまぎれて、オッパイもんでも気づかないぞ!ゲロ!ゲロ!)
「美衣奈…………」
俺が顔を美衣奈に近づけると、ごくあっさりと唇が触れた。
唇に触れた瞬間、美衣奈はピクリと細い肩を跳ねさせ、俺を上目遣いに凝視した。
驚いて首を振って離れようとする美衣奈。
俺は腕を美衣奈の首にまわし、優しく唇を押し付けた。




