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「救助隊が来たんだわ!」
美衣奈は俺の腕を払いのけ、興奮してドアに向かって走っていった。
おい!おい!
こいつ、ここは異世界だと言った俺の言葉、1ミリも信じていなかったのか!
「やめろ!ドアを開けるな!」
俺の言葉に耳を貸さず、美衣奈はドアを開けてしまった。
案の定、ドアの外にいたのはゾンビだった。
ゾンビは両手を突き出し、美衣奈に襲い掛かった。
「キャーッ!!カエル男さん!助けてぇ!!」
ゾンビは美衣奈をポコポコ殴りながら、拠点の中にまで入って来た。
「痛いッ!痛いッ!カエル男さん!助けて下さいッ!!」
知るか、ボケ!
と、心の中で毒づきながら、俺は石の剣をサッと振るった。
ゾンビはあっさりと倒れ、腐った肉の塊に変わった。
「ハアッ!ハアッ!ハアッ!あ~~~、怖かった!カエル男さんって強いのね!」
俺は無言で美衣奈をにらみつけた。
(このクソアマ!外に放り出してやろうか!)
俺は美少女には弱いので、喉元まで出かけた言葉をグッと飲み込んだ。
「まあ、今度からは俺の言うこと、信じてくれよな!」
「――ごめんなさい」
美衣奈は申し訳なさそうにうつむいた。
キュルルル!キュルルル!
「な、なあに、この不気味な声!?」
美衣奈が俺の腕にすがりついてきた。
「大蜘蛛だろうな。この拠点の上にいるみたいだな」
「ク、クモッ!?私、クモって大嫌いなの!!こ、怖いわ!」
真由美はおじけづいた心配そうな眼で俺の顔を見つめた。
そして、逃げ場を求めるように俺の胸に顔をうずめた。
美衣奈の甘酸っぱい香りと柔らかな感触に俺の怒りが静まった。
(ピコーン!!またゲスいこと、思いついちゃった!!)
俺は石窯の中に河原で採取した砂ブロックを入れた。
砂は薪の炎で溶けて、たちまちガラスブロックへと変貌した。
美衣奈は俺の背後で、手品でも見ているような不思議そうな顔をしていた。
と、俺は無造作にドアの横の土壁を右手で殴りつけ、ボコッと穴を開けた。
「カ、カエル男さん!?何をするの!?そんなことしてモンスターが入って来たらどうするの!?」
美衣奈は狼狽して、声を震わせた。
「大丈夫だよ。見てな」
俺は素早く土壁の穴にガラスブロックをはめた。
「えっ!?窓だわ!?窓を作ったのね、カエル男さん!」
「そうさ。外が見えないと、朝になっても分からないからな。それにモンスターの中には、ドアの外で待ち伏せしているずる賢いヤツがいるんだ。そいつが外にいないか確認するためには窓が必要なのさ」
「さすがですわ、カエル男さん!」
”さすカエ!” いただきました!
別に俺が詳しいわけじゃない。
美衣奈が何も知らないド素人ってだけだ、と心の底でほくそ笑む俺。
それに、窓を付けたのは安全のためだけではなかった。




