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18

「救助隊が来たんだわ!」


 美衣奈(ミイナ)は俺の腕を払いのけ、興奮してドアに向かって走っていった。


 おい!おい!

 こいつ、ここは異世界だと言った俺の言葉、1ミリも信じていなかったのか!


「やめろ!ドアを開けるな!」


 俺の言葉に耳を貸さず、美衣奈はドアを開けてしまった。


 案の定、ドアの外にいたのはゾンビだった。

 ゾンビは両手を突き出し、美衣奈に襲い掛かった。


「キャーッ!!カエル男さん!助けてぇ!!」


 ゾンビは美衣奈をポコポコ殴りながら、拠点の中にまで入って来た。


「痛いッ!痛いッ!カエル男さん!助けて下さいッ!!」


 知るか、ボケ!

 と、心の中で毒づきながら、俺は石の剣をサッと振るった。


 ゾンビはあっさりと倒れ、腐った肉の塊に変わった。


「ハアッ!ハアッ!ハアッ!あ~~~、怖かった!カエル男さんって強いのね!」


 俺は無言で美衣奈をにらみつけた。


 (このクソアマ!外に放り出してやろうか!)

 俺は美少女には弱いので、喉元まで出かけた言葉をグッと飲み込んだ。


「まあ、今度からは俺の言うこと、信じてくれよな!」


「――ごめんなさい」

 美衣奈は申し訳なさそうにうつむいた。



 キュルルル!キュルルル!


「な、なあに、この不気味な声!?」

 美衣奈が俺の腕にすがりついてきた。


大蜘蛛(スパイダー)だろうな。この拠点の上にいるみたいだな」


「ク、クモッ!?私、クモって大嫌いなの!!こ、怖いわ!」


 真由美はおじけづいた心配そうな眼で俺の顔を見つめた。

 そして、逃げ場を求めるように俺の胸に顔をうずめた。

 美衣奈の甘酸っぱい香りと柔らかな感触に俺の怒りが静まった。


(ピコーン!!またゲスいこと、思いついちゃった!!)


 俺は石窯の中に河原で採取した砂ブロックを入れた。

 砂は薪の炎で溶けて、たちまちガラスブロックへと変貌した。

 美衣奈は俺の背後で、手品でも見ているような不思議そうな顔をしていた。


 と、俺は無造作にドアの横の土壁を右手で殴りつけ、ボコッと穴を開けた。


「カ、カエル男さん!?何をするの!?そんなことしてモンスターが入って来たらどうするの!?」

 美衣奈は狼狽して、声を震わせた。


「大丈夫だよ。見てな」

 俺は素早く土壁の穴にガラスブロックをはめた。


「えっ!?窓だわ!?窓を作ったのね、カエル男さん!」


「そうさ。外が見えないと、朝になっても分からないからな。それにモンスターの中には、ドアの外で待ち伏せしているずる賢いヤツがいるんだ。そいつが外にいないか確認するためには窓が必要なのさ」


「さすがですわ、カエル男さん!」


 ”さすカエ!” いただきました!


 別に俺が詳しいわけじゃない。

 美衣奈が何も知らないド素人ってだけだ、と心の底でほくそ笑む俺。


 それに、窓を付けたのは安全のためだけではなかった。


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