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「さあて、私は何をしたらいいのかしら?」
美衣奈がやる気満々で俺に尋ねた。
「俺が外で作業してくるから、その間、木炭を作っておいてくれ」
俺は100個の原木を3ブロック取り出すと、美衣奈の目の前に放り出した。
原木のブロックはアイテム化し、美衣奈の足元でプカプカと浮かんでいる。
美衣奈は不思議そうな顔で、それを見つめている。
「手を伸ばしてそれに触れてみなよ。美衣奈のインベントリーの中に入るはずだ」
美衣奈がおずおずと手を伸ばすと、原木ブロックがスッと消えた。
「消えてしまったわ!?一体、どこに消えたのかしら?」
「『E』と口に出してみろ」
「?………。いぃ~~~?あっ!?私の目の前に四角い枠が見えます!?」
「枠の一つに、木の絵みたいな物が入っているだろう。それが原木ブロックだ。100個ある」
「本当だわ!原木・100と書いてあります。どうして、日本語なのかしら?とっても不思議ね!?」
「異世界の言語システムはどこでもマルチ ランゲージなんだ。そうでなければ、俺たちみたいな転移人は言葉を習得するまで路頭に迷うし、そんな苦労話、誰も読みたくないだろう」
「なるほど!ちゃんとした合理的な理由があるんですね」
「神は乗り越えられる試練しか与えない―――ってことさ!」
「さすがです!カエル男さん!」
「ささ!そんなことより、インベントリーの真ん中に作業枠ってところがあるだろう。その木を作業枠に入れて材木に加工するんだ」
「どうやって入れるのですか?」
「はあ?マウスを使うみたいにドラッグするんだ」
「ドラッグって何ですか?危ないクスリは嫌です!」
「―――もしかして美衣奈、パソコン使ったことないのか?」
「だって、スマホがあればパソコンなんか要らないですし………」
なるほど。今どきのJKのパソコン離れはここまできていたのか。
俺は家で引き籠ってPCゲームばかりしていたので、すんなりとこの世界の操作方法を覚えたが、他のリア充どもはPCを使えないんだ。
こいつは俺にとって大きなアドバンテージだぞ。
俺は右手の人差し指と中指を使って、クリックやドラックするところから美衣奈を教育した。
美衣奈は物覚えがよく、すぐにインベントリーの使い方をマスターした。
「それじゃあ窯の中に木と薪を入れて木炭を作ってみろ」
「はい!やってみます!」
美衣奈は自分でも錬金術が使えることが分かって興奮していた。
俺は美衣奈に大量の原木を渡し、松明の作り方を教えてから、外に出て行くことにした。
「それじゃあ、俺は食料調達のために出かけてくるからな」
「はい!気を付けてね!早く帰ってきてね!」
美衣奈は、まるで新婚家庭の若奥さんのようなセリフを言った。
ふむふむ、なかなか素直で可愛い娘だ。




