表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/89

13

「落ち着くんだ、カエル男!これはあれだ、よくある出会いがしらのワクワクドキドキエピソードの一つだ。ベタすぎるぜ!こういう時は自然数を数えるのだ。1,2,3,4,5………。あれ?」


 少々狼狽したが、自然数を数えて落ち着いた俺は扉越しに尋ねた。


「お前、誰だよ?ここは俺が作った拠点だぞ」


「あ、あなた、安藤君でしょ? わ、私、同じクラスの長沼 美衣奈(ナガヌマ ミイナ)です」


「長沼 美衣奈……?ああ、確かに同じクラスにいたなあ」


 さっきは下着にしか目が行っていなかったので、顔なんか見ていなかった。

 長沼 美衣奈は物静かで小柄でスレンダーな美少女だ。

 ほとんど学校に行っていなかった俺だが、美少女だけは印象に残っていたので覚えていた。


「長沼 美衣奈。あんたもこの世界に転移したのか?」


「転移……?転移か何だかわかりませんが、昨日、気が付いたら、この森の中にいました。そうしたら恐ろしいモンスターに追われて、川の中に飛び込んだのです。一晩中、泳いで逃げ回って、ようやく朝になってモンスターがいなくなったから、川から上がりました。そして、森の中をさまよっていたら、ドアを見つけたので、この部屋に入って濡れた服を乾かしていたのです」


「長々と説明セリフ、ご苦労さん!開けるぞ!」


 俺は問答無用で扉を開けて、拠点内に入った。



「キャーッ!!」


 美衣奈は脱いだ制服を抱えて、うずくまった。


「エッチ!見ないでください!」


「知るか!ここは俺の作った拠点だ。文句があるなら出て行け!」


 長沼 美衣奈は仕方なく、今にも泣きだしそうな顔で物入れの陰にうずくまっていた。


 まったくもって、美少女をいたぶるのは快感だった。


 少し落ち着いたのか、 美衣奈がおずおずと俺に話しかけてきた。


「――――本当にこの部屋、安藤君が作ったの?」


「ああ。木を切ったり、穴掘ったりしてな」


「たった1日でこんな立派な部屋を作ったの!?安藤君ってすごいのね!」


「俺を安藤と呼ばないでくれ。俺たちは異世界に来たのだ。これからは全く別の新しい人生を送るのだ」


「えっ!?だったら、安藤君のこと、何て呼べばいいの?」


「俺の顔をよく見てみろ」


「えっ!?」


 いぶかしげに美衣奈は俺の顔を真正面からまじまじと見つめた。


「じっくりと見つめる程のイケメンじゃないけど………」


「うるさいわい!俺の頭上に文字が見えないか?」


「えっ!?あっ!?あったわ!安藤君の頭の上に何か文字が浮かんでいるわ!」


「それがこの世界での俺の名前だ!」


「あのう………?『カエル男』って書いてますけど………?」


「そうだ!俺の名は、カエル男だ!」


「エエッ!?本当にそれでいいの!?」


「しょうがねぇだろ!最初に、自分で決めちまったんだからな」


「うーーん?よくわからないけどわかったわ。カエル男くん」


「それじゃあ、俺は忙しいから、少し黙っといてくれ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ