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「落ち着くんだ、カエル男!これはあれだ、よくある出会いがしらのワクワクドキドキエピソードの一つだ。ベタすぎるぜ!こういう時は自然数を数えるのだ。1,2,3,4,5………。あれ?」
少々狼狽したが、自然数を数えて落ち着いた俺は扉越しに尋ねた。
「お前、誰だよ?ここは俺が作った拠点だぞ」
「あ、あなた、安藤君でしょ? わ、私、同じクラスの長沼 美衣奈です」
「長沼 美衣奈……?ああ、確かに同じクラスにいたなあ」
さっきは下着にしか目が行っていなかったので、顔なんか見ていなかった。
長沼 美衣奈は物静かで小柄でスレンダーな美少女だ。
ほとんど学校に行っていなかった俺だが、美少女だけは印象に残っていたので覚えていた。
「長沼 美衣奈。あんたもこの世界に転移したのか?」
「転移……?転移か何だかわかりませんが、昨日、気が付いたら、この森の中にいました。そうしたら恐ろしいモンスターに追われて、川の中に飛び込んだのです。一晩中、泳いで逃げ回って、ようやく朝になってモンスターがいなくなったから、川から上がりました。そして、森の中をさまよっていたら、ドアを見つけたので、この部屋に入って濡れた服を乾かしていたのです」
「長々と説明セリフ、ご苦労さん!開けるぞ!」
俺は問答無用で扉を開けて、拠点内に入った。
「キャーッ!!」
美衣奈は脱いだ制服を抱えて、うずくまった。
「エッチ!見ないでください!」
「知るか!ここは俺の作った拠点だ。文句があるなら出て行け!」
長沼 美衣奈は仕方なく、今にも泣きだしそうな顔で物入れの陰にうずくまっていた。
まったくもって、美少女をいたぶるのは快感だった。
少し落ち着いたのか、 美衣奈がおずおずと俺に話しかけてきた。
「――――本当にこの部屋、安藤君が作ったの?」
「ああ。木を切ったり、穴掘ったりしてな」
「たった1日でこんな立派な部屋を作ったの!?安藤君ってすごいのね!」
「俺を安藤と呼ばないでくれ。俺たちは異世界に来たのだ。これからは全く別の新しい人生を送るのだ」
「えっ!?だったら、安藤君のこと、何て呼べばいいの?」
「俺の顔をよく見てみろ」
「えっ!?」
いぶかしげに美衣奈は俺の顔を真正面からまじまじと見つめた。
「じっくりと見つめる程のイケメンじゃないけど………」
「うるさいわい!俺の頭上に文字が見えないか?」
「えっ!?あっ!?あったわ!安藤君の頭の上に何か文字が浮かんでいるわ!」
「それがこの世界での俺の名前だ!」
「あのう………?『カエル男』って書いてますけど………?」
「そうだ!俺の名は、カエル男だ!」
「エエッ!?本当にそれでいいの!?」
「しょうがねぇだろ!最初に、自分で決めちまったんだからな」
「うーーん?よくわからないけどわかったわ。カエル男くん」
「それじゃあ、俺は忙しいから、少し黙っといてくれ」




