1 ある夕暮れに、誰かが笑う。
リョウはオタクで、一応普通の女子高生設定ですが。性格難あり。貧乳、普通顔です。
★★★★
リョウは普通の、どこにでもいそうな女子高生である。顔は美人とはほど遠く、かと言ってブスとも言い難い、まさに平均的な顔立ちである。そして体重も身長も、同年齢の平均値そのものであり。本人曰く、二年後にはGカップに成長するという絶対にありえない希望的観測をするaaaカップの女の子なのだ。
彼女は漫画、アニメ、ゲームをこよなく愛し、またそれらに骨を埋める覚悟を持つほど生きがいとしており、それでいて隠れ腐女子でもある。
リョウは自称普通の女子高生である。
だからこそリョウは願った。
普通とは違う、特別になりたいと。
いるかどうかは定かでは無いが、神は世界に絶望を与えた。
そして、神は、世界はリョウに試練を与えたのだ。
リョウは嘆き、叫び、涙を流す。
それでも彼女は立ち上がる。何度も何度も。
無い胸を張り、声を張り上げ、不敵に笑う。
リョウは普通の女の子である。
そしてまだ、彼女は絶望を知らない。
★★★★
「コンビニ行ってくるわぁ」
いつもの軽い調子でリョウは家を出た。兄貴の部屋から漏れ出る洋楽の音が、頭をループする。
リョウの声に応える者はいない。お母さんは風呂掃除。お父さんは食器洗い。
(うん、よく働くものダァ)
そう関心つつも、当人に彼らを労うつもりも、手伝いに興じるつもりも毛頭無いのだから、彼らはそんな薄情な娘に呆れ果て、すでに諦めの境地に達している。
リョウがどれだけ、親不孝ものかは置いといて。
自転車にまたがり、出発!
目指すは、約400メートル先のコンビニ。所持金、1000円。求めるものは、コーラとポテチ!いざ!
ギコギコと異様な音を鳴らしながら、自転車を一心にこぐ。
夜風が汗のかいた体に巻きつき、火照った体温を低下させる。
少し前まで夏で、六時という時間でもまだ明るかったというのに、もう日が暮れて肌寒くなってきている。
と。
「ねぇ、これ最高なんだケドォ」
「あぁ、私もワロタァ」
笑い声が聞こえて、少し目を細め前を見た。
部活帰りの生徒なのか、制服を着た少年少女たちが散見できる。
彼らはスマホを手にし、友達もとい恋人と楽しそうに話している。
リョウは少しイラつきながら、心の中で悪態を吐く。
(ムカつく。ちょームカつく。リア充マジ爆発しろ。というか、スマホ見んな、現代っ子め)
恨めし顏で彼らの間を縫うように通っていく。視界の端で彼らのスマホの液晶画面を盗み見ると、『E』の文字が印象的だった。
彼らが閲覧しているのは、きっとSNSサイトの1つである"Endless "だ。
通称エドサイト。かつて、数十社あった人気サイトを統合し、世界最大の規模を誇るようになったサイト。
まぁ、スマホ持ってない私には関係ないけどな。
二週間前、お母さんに没収されちった。
え、なんで取られたか?それはね、学生アルアルの1つ、テストの点数が悪かったからぁ。うーん、あの時は本当にお母様の顔がヤバかったね。鬼だよ、鬼。
リョウはその時の母親の顔を思い出し、身震いした。
コンビニにつき、自転車を止める。すると、あきらかに顔を真っ赤にした酔っ払いのじじいが、肩を掴んで絡んできた。
「お譲ちゃん、ヒクッ…………男?」
「女だ!」
おっと、やっちまったゼ。
リョウは短い髪のせいでいつも男と間違えられる。そのせいで、何度、からかわれたことか。だから、いつもの男子との掛け合いのように答えてしまった。酔っ払いがリョウの言葉に反応してゆらりと近づいてくる。
コイツ、私に襲いかかるとか、見境い無しかよ。私、貧乳だよ?1センチ厚さがあるかないかだよ?アハ、これもう女じゃないでしょ〜。
グサリ…
自分で傷をえぐってしまった。確かに私、貧乳で、短髪です。だけど、女だ。自信を持て。
と、酔っ払いが体を広げ、走り寄ってきた。しかし、リョウは間一髪のところで避ける。フッ、貴様のフラフラの足でこの私を倒せるわけがなかろう。
しかーし、流石に私も女の子よ。どうしたものか。
あー、もしゲームだったら…。
>酔っ払いが現れた
1逃げる
2攻撃
3アイテム
4助けを呼ぶ
リョウの頭に選択肢が流れる。フムフム、こんな感じだな。
ヨシ、2と3は無しだな。うーむ。4だね。私にはポテチ&コーラの取得という任務があるのダァ。
と、なると…あたりを見まわしてみる。
すると、車体の後ろから全身真っ白な人間がフラフラと出てきた。リョウは驚き、眼を見開いた。
その人は、髪と着ている服、ズボンが清潔で白く、顔も陶器のように滑らかで少し青白い。ズボンからはみ出る足は裸足で、爪が血でにじんでいた。
怖っ。明らかに普通とは違う。
酔っ払いか、白人間か……どっちもヤダ☆
怖いし、怖いし…。アレ、普通にコンビニの中入ればよくね?そうと決まれば、全部無視!突っ走るんだ、私!
「ねぇ、お嬢ちゃん。ヒクッ…気持ち悪っ」
「気持ち悪?おじさん、それ言いすぎじゃ……」
酔っ払いがリョウの肩に手を置いた。その目は虚ろで、何か口をモゴモゴしている。
………アレ、コレって…マジ無理。
もう、白人間でいい。
「た、助けてぇ!」
リョウは酔っ払いの手から抜け出し、全速で白人間に走り寄った。
「はぁ、これで助か……へ?」
リョウが白人間に触れた瞬間、ボトボトという音ともに視界が真っ赤に染まった。発狂しそうになるのと、白人間が自分の方に倒れかかってきたのは同時だった。リョウはその重量に耐えきれず、自分の身と共にコンクリートの地面に倒れこむ。
(重い、動けない、怖い。シクシクシク……。あぁ、もぉ……)
「誰か助けてェ!」
>返事がない。ただの屍のようだ。
これから、コツコツ頑張ります。