表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第七章  エルフの里
77/83

第十話  狩人の頭

良くわからない師弟関係が結ばれたのを尻目に、ウルが仕切り直すように咳をした。


「………まぁ、これでわかっただろう、この者達の実力が。」


ウルは話を進めようとしたが、しかしまたしても邪魔が入った。


「ちょっと待ってくれウルさん。確かにあの執事は強かった。そこから考えると、そこのフードを被った男の力というのも聞いた通りなんだろうよ。だが、後の二人はどうなんだ?」


「どう……とは?」


「俺だってできれば人間から指導なんざ受けたくねぇさ。それでも実力があるのなら納得もできるってもんだ。」


そこで俺が口を挟んだ。


「………つまり、残りの二人も実力を見せろ、と言いたいのか?」


「話が早くて良いやな。そういう事さ。」


飄々とした態度で肩を竦めるエルフ。


見たところ、狩人の中でも特に強い者のようだ。


それだけ力に対する欲求も強いという事か。


「ふむ………だったらどうすれば良い?」


「そっちの二人にも俺達の誰かと戦ってもらえりゃ、わかりやすいんだがな。」


「良いだろう。セレス、レイ、軽く揉んでやれ。」


「畏まりました。」


「うへぇ………了解っす……。」


セレスは優雅に一礼し、レイも渋々ながら承諾した。


「ならこっちからは俺とーーー」


飄々としたエルフがもう一人を指名しようとした時。


「私が出よう。」


狩人の頭、ウルが参戦を告げた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「そんじゃまずは、俺とそこの嬢ちゃんがやろうか。」


「畏まりました。宜しくお願いしますね。」


セレスはニコリと笑って答えた。


「……何か調子狂うな………あんた、本当に戦えるんだよな?武器も持っていないようだが。」


「私は魔術師ですから。……あなたと同じく。」


「………へぇ、俺が魔術師だってわかんのか。」


「魔力の流れを見れば一目瞭然です。」


「それがわかっていてそんな余裕持ってんだな。エルフの魔術師に人間の魔術師が勝てるとでも?」


「やってみればわかりますよ。」


笑顔を崩さずに淡々と喋るセレス。


「まぁ、そう言うならやろうかい。」


二人が距離を置いて相対する。


最初に動いたのは、エルフだった。


魔力を練り上げて風の刃を打ち出す。


しかし、セレスが巻き起こした風によって刃は霧散してしまう。


次に、大きな風の弾丸がセレス目掛けて飛んでいくが、その軌道上に現れた土の壁によって防がれた。


その壁によってセレスの姿が隠される。


エルフは迂回して魔術を発動させようとしたが、壁の後ろには、既にセレスの姿はなかった。


気配を感じて後ろを振り返る。


飛んできた土の槍を転がって回避し、そちらに向けて無数の風の矢を打ち出した。


しかし、そこにもやはりセレスの姿はなく。


困惑した彼の後頭部に高速で飛来した風の弾丸が当たり、意識を失う寸前、彼は風を纏ったメイドが空に浮かんでいるのを見た。


飄々としたエルフが意識を失って倒れると、セレスは静かに地に降り立った。


そして俺の下へ来て、優雅に一礼する。


「終わりました、ご主人様。」


「あぁ、ご苦労だったな。それにしても、中々魔術の扱いが上手い奴だったな。」


「えぇ、それなりに熟練した者だったようです。」


「それでも、お前の相手にはならなかったか。」


「当然です。私はご主人様の従者ですから。」


「………まさか、あれほど簡単に敗れるとはな。」


ウルが呟くように言った。


「ウル、俺達の実力はもう十分わかってると思うんだが、それでもやるのか?」


「無論だ。」


「そうか………レイ、行ってこい。」


「了解っす。」


倒れたエルフは他の狩人に回収され、替わりにウルとレイが相対する。


口を開いたのは、ウルだった。


「さて、君の名はレイだったな。」


「そうっすよ。お手柔らかに頼むっす。」


「そんな余裕などないよ。なにせ、君の実力はネクロのお墨付きだからな。」


「いや、自分は本当に大した事ないんすよ。うちの傭兵団の中じゃ間違いなく最弱っす。それに、自分は戦闘にはあまり向いてないんすから。」


「だとしても、私にとって君が強者である事に変わりはない。………さぁ、やろうか。」


「はぁ………宜しくっす。」


試合前の口上が終わり、互いに武器を構える。


ウルは短槍、レイは短剣だ。


ウルが槍の先をレイに向けて、腰の辺りで両手で構える。


レイは左前の半身になって、右手で短剣を持って背面に隠すように構えた。


「それじゃ、こちらから行かせてもらうぞ。」


そう言うと、ウルはゆったりとした動きで踏み込んだ。


しかし、その緩慢な動きに似合わぬ速度で、気付いた時にはレイの目の前で突きを放っていた。


間違いなく達人であると言えるその槍さばき。


これがセレスであれば、もしかしたら避けられなかったかもしれない。


そう思う程、洗練された一撃だった。


しかし、細かい動きと瞬発速度だけならばレイはサリスにも勝る。


ウルが繰り出した一撃を、レイは軽く身を捻る事で避けた。


更に踏み込んで短剣を薙ぐが、これはウルが短槍を跳ね上げて払った。


そして、跳ね上げた勢いで短槍を反転、石突きにて腹を殴打しようとする。


レイはしゃがんでそれを避け、素早く足払いをして転倒させようとするが、ウルは持ち前の身体能力で転倒を免れた。


しかし、転倒しなかったとは言え、バランスが崩れて隙を晒してしまう。


レイが立ち上がる勢いを生かして左手にてアッパーカットを放とうとしたのに反応したウルが顔を反らすが、それを見越したレイはアッパーカットを中断して無防備な右腿へ渾身のローキックを放つ。


意識外の攻撃、それも腿の急所である伏兎への強烈な一撃に、ウルが堪らず膝を折るが、それでも倒れないように耐える。


しかし、身体を若干折った状態で静止したウルを逃がすレイではなかった。


短剣を左手に持ち換え、右手でアッパー気味に胃を打ち抜き、更に右手を引くと同時に右膝にて下がった顎を捉えた。


そして、右手にて駄目押しの掌底を繰り出し、ウルを吹き飛ばした。


ウルは地を擦りながら転げ回り、意識こそあるものの、暫くは動けずにいた。


周りのエルフ達は、狩人の頭であるウルが、こちらの最弱者になす術もなく敗れたのを見て、驚愕していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ