表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第七章  エルフの里
76/83

第九話  決闘っぽい指導

「………何だと?」


ウルに抗議をしていたエルフが、俺の前に出てきたサリスを睨み付ける。


「聞こえなかったのか?今すぐお前の塵屑のような人生を終わらせてやるから、己の愚かさを嘆きながら咽び泣けと言ったんだ。」


おい、さっきより酷くなってるぞ。


「貴様……たかが人間の分際で、誇り高きエルフの狩人である私を侮辱しやがって………ただで済むと思うなよ。」


「それはこちらの台詞だ。ご主人様を侮辱するなど万死に値する。その大言、たとえ精霊が許そうとも、僕は決して許しはしない。覚悟しろ。」


「面白い。一体どのような瞞しでウルさんを惑わしたのか、見せてもらおうじゃないか。」


エルフは剣を抜いて構えた。


「おい、待てお前達!」


ウルが二人を止めようとするが、俺がそれを止めた。


「まぁ良いじゃないか。やらせてみよう。」


「しかしネクロ………」


いきがった雑魚(・・・・・・・)を叩きのめすのも、指導の内だ。」


この言葉にはサリスと向き合ったエルフだけでなく、周りのエルフも俺に対して怒気を孕んだ視線を向けた。


俺はそれを無視してサリスへと近寄る。


「ご主人様、勝手な事をして申し訳ありません。しかしーーー」


「いや、構わないさ。好きにやると良い。」


「…………宜しいのですか?」


サリスが意外そうな顔をする。


「そりゃ、最初から仲良くできるならそれに越した事はないだろうがな。向こうにその気がない以上、仕方がないだろう。依頼は受けた。俺達にはあいつらを指導する義務がある。なら、これもその一環だ。」


「……感謝致します、ご主人様。」


「感謝するのは俺の方だ。お前が出なければ、間違いなく俺が半殺しにしていた。お前の忠誠に感謝する。………一応言っておくが、これはあくまでも指導だ。殺すなよ。」


「承りました。指導して参ります。」


そう言ってサリスは俺に背を向けて歩き出した。


……………大丈夫かな、本当に。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「覚悟は良いな、人間?」


「偉そうな事を言う雑魚だ。自らの力量も読めないとは………貴様らエルフの指導には骨が折れそうだな。」


「……………クソが………殺してやる。」


何かあのエルフ、段々口が悪くなっていないか?


サリスの毒舌に晒されて、心が荒んできているような気がする。


ちょっと心配だ。


「さぁ、いつでもかかってこい。僕が愚鈍な貴様に指導をくれてやろう。」


サリスが二振りの細剣を抜いた。


エルフも剣を構えて睨み付ける。


相対する二人の間に、一陣の風が吹いた。


強い風にサリスが目を瞑る。


その瞬間、エルフは駆け出した。


「この未熟者めが!!」


風に目を瞑ったサリスに激昂したのか、叫びながらエルフは剣を振り上げる。


しかしーーー


「未熟者は貴様だ、戯け。」


ーーーサリスは振り下ろされた剣を左の剣で流し、右の剣で刺突を放った。


首の皮一枚を避けて。


気付けば振り下ろしたはずの剣は狙いを外し、首の真横に剣を添えられていたエルフは驚愕し、動けなくなっている。


サリスはゆっくりと剣を引き、一歩下がって口を開いた。


「この程度の簡単な罠にかかるとは、狩人の名が聞いて呆れるな。挑発に乗って怒りに我を忘れたのも低評価だ。更に、仮に僕が本当に風に目を奪われたのだとしても、態々声を上げて自らの居場所を教えるなど……………もはや、救いようがない。」


エルフはサリスの瞳に浮かぶ冷たさと自分を見下す色を見た。


しかし、次の瞬間には、その瞳に厳しくも暖かな灯火が浮かんだ。


「良く聞けエルフの狩人よ。貴様は確かに優秀な戦士なのだろう。先程の剣を振り下ろす速度、その鋭さ………一介の人間の剣士を越えているのは間違いない。しかし、しかしだ………上には上がいるものだ。貴様如き雑魚が、王をも超越したご主人様を侮辱するなど、あってはならない事だ。自らの力量を認識し、新たな一歩を踏み出すと良い。」


「わ、私は………私は……………強く、なれるのでしょうか?」


「ふっ……愚問だ。………僕の名はサリス。崇高なるご主人様に仕える従者にして、剣の王だ。僕とご主人様の力をもってすれば、たとえ猫の子であろうとも、獅子に変えてみせよう。」


「サリス……殿。………私を鍛えて下さいますか?」


「僕の指導は厳しいぞ?今まで甘ったれていた貴様では到底着いてはこれまい。それでもやるか?」


「………望むところです!誇り高きエルフの狩人として、必ずや力を手にしてみせます!!」


「それでこそ武人だ。励むと良い。」


「サリス殿!!」


エルフは暑苦しく涙を流し、サリスはどや顔で微笑んでいる。


……………何なんだこれ、何なんだよお前ら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ