第六話 エルフの里
「それにしても、君は恐ろしく強いのだな。ノールはあの若さにして狩人の一員となった才人なのだぞ。………私も狩人の一人として、尊敬するぞ。」
「まぁ、これでも戦闘には自信がある。」
現在、俺達はエルフの狩人達に囲まれて里へ向かっている。
あれから暫くして我に返ったウルシアル………ウルやエル達が一時騒然としたが、何とか落ち着かせて里へ案内してもらえる事となった。
気を失っているノールは狩人の一人が背負っている。
エルフの狩人というのは、選ばれた特別な者なのだという。
戦闘民族であるエルフの中でも本当に実力のある者しか入る事はできない。
その為、若くして狩人となったノールは一時は注目の的となったらしい。
それを一瞬で……それも目にも止まらぬ首トンで呆気なく終わらせてしまった為、あれほど驚かれたのだ。
「あれほどの身体能力は、正直なところ人間だとは思えんな。君は何者なのだ?」
鋭いなウル。
その通り、俺は人間ではないのだ。
「何者……と言われてもな。………指定傭兵団、というものを知っているか?」
「むっ、その名は父上から聞いた事があるな。確か、大陸に数える程しか存在しない、真に選ばれた実力者の集団だとか………もしや君達が?」
「あぁそうだ。俺達は指定傭兵団【屍霊祭】っていうんだ。傭兵団とは言っても、団員は四人しかいないんだがな。」
正確には四人と一匹か。
ちなみに、物凄く今更だがグラニは森の外で好きにさせている。
何かあればすぐに呼び出せるので、それまで自由にさせてやっているのだ。
「たった四人でその指定傭兵団とやらに選ばれたという事は、君達は一人一人がとてつもない力を秘めているという事だな。」
「間違ってはいないな。俺達の中で直接的な戦闘が一番苦手なのはレイだが、それでもノールを瞬殺する事くらいはできるだろうし。」
「ちょっ、旦那、そんな余計な事言わないで下さいっす!!自分はそういうキャラじゃないんすよ!!」
レイが慌てた様子で止めてきた。
「……君達がエルフに仇なす存在でなくて、心底ホッとしているぞ。」
ウルが苦笑いでそう言った。
「当たり前だ。俺達はエルフと友宜を結びに来たんだからな。」
「ふむ……私としては悪くない話だとは思うが、残念ながらそう上手くはいかないだろうな。ノールは極端な例ではあるが、やはり他種族を忌避するエルフは多いのだ。」
「だよなぁ………まぁ、細かい事は後で考えるさ。それよりも、まだ里には着かないのか?」
「もうそろそろだ。………ほら、見えてきたぞ。」
その言葉の通り、遠くの方にいくつもの家が並んでいるのが見えてきた。
更に近付くと、より細かく里の内部が見えてきた。
家があるのは地上だけではない。
木の上にまで幾つも家が建てられたりしているようだ。
家は全て木造、木の蔦が絡まったりもしているが、古ぼけたり汚かったりするような印象は受けない。
むしろ表面に苔などはほとんど生えておらず、青々とした自然が日光に映えて美しく思えた。
「ここがエルフの里か………綺麗だな。」
「そう言ってもらえると嬉しいな。………さて、ようこそエルフの里へ。まずは父上のところへ案内しよう。」
「ありがとう、頼むよ。」
案内されて更に奥へと入って行く。
周りのエルフから驚愕や畏怖、嫌悪の目を向けられるが、ウル以外の狩人達が俺達を連れてきた経緯を説明する為に散開した。
それでもほとんどの視線は変わらなかったが、俺達は持ち前の図太い神経でそれらを無視し、案内されるままに移動した。
やがて、里の奥の方にある大きな家に着いた。
ウルが先に中に入り、やがて俺達も中に通された。
エルは俺の隣におり、ニルはその反対側で未だに俺と手を繋いでいる。
通された一室は、長老の書斎のようだった。
室内には、長い真っ白な髭を蓄えた綺麗な白髪のお爺さんがいた。
長寿なエルフなのにもかかわらず年寄りの姿でいるという事は、この長老はとんでもない高齢者なのかもしれない。
「よう来たの。お主達が儂の孫娘達を助けてくれた傭兵じゃろ?感謝するぞい。」
いかにも喋り方をする爺さんだった。
俺は書斎に置いてある木の椅子に座る。
「あぁそうだ。俺の名はネクロだ。宜しくな。」
「うむ、儂はエルフ族の長老をしておる、ユルシアルじゃ。好きに読んで良いぞい。」
「んじゃユル爺な。」
ユル爺の隣に立ったウルが吹き出した。
笑ったというよりは、驚いたという感じだ。
これでもかと目を剥いている。
「ほっほっ、ユル爺とな。良い呼び名ではないか。気に入ったぞい。」
「それは良かった。……紹介しておくよ。俺の従者であり、傭兵団の団員でもあるセレス、サリス、レイだ。」
「セレスと申します。宜しくお願いしますね、ユル爺様。」
セレスは良い孫って感じだな。
「ほっほっ、これはまた別嬪さんじゃの。宜しく頼むぞい。」
「サリスだ。宜しく頼む、長老殿。」
サリスは意外にも敬称を付けて深く一礼をした。
「セレス嬢と似ておるな。姉妹かの?」
「そうだ。僕は妹になる。」
「ほっほっ、このような美人姉妹を従者に侍らすとは、ネクロもやりおるのう。」
何がだよ。
「自分はレイっす。宜しくっす、ユル爺。」
レイは相変わらず軽いな。
俺が言える事じゃないが。
「うむ、宜しくのうレイ。お主は随分と奇抜な格好をしておるな。はいからじゃの。」
何でハイカラなんて知ってんだよ。
「………さて、これで互いの紹介は終わったかの。それでは、良ければお主達の事を聞かせてもらいたいのじゃが?」
「それは構わないが………何を聞きたい?」
「ふむ、それではまず、お主達がこの森に来た訳を聞こうか。」
「わかった。俺達はーーー」
俺達がどういった傭兵団なのか。
森に来た目的。
エル達を助ける事になった経緯。
全てを話し終えた時には、すっかり夜になっていた。
俺達のこの里での扱いなど、詳しい事は明日話す事にして、今夜は長老邸で世話になる事になった。
とりあえずいきなり追い出されるような事はなくて、俺は安心するのだった。




