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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第七章  エルフの里
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第五話  エルフの狩人達

半透明の結界を通り抜ける。


粘着質の液体が身体に張り付くような感覚がしたが、それでも前に進むとその感覚もなくなった。


「ど、どうして私達が開いてもないのに通れるんですか!?」


結界の外でエルが何やら叫んでいる。


通れるんだから通れるんだろ。


「そんなのどうでも良いから、早く来いよ。」


「どうでも良いって………もう、わかりましたよ。」


その後、エルが結界を開いてセレス達を通し、全員が結界内へと入った。


「やっぱりネクロさんはおかしいです。絶対におかしいです。」


エルがブツブツと呟いている。


ニルはテクテクとこちらに歩み寄ってきて、俺と手を繋いだ。


………随分と気に入られたもんだな。


片方の手でニルの頭を撫でる。


にひひっと悪戯っぽく笑った。


何か………どことなく真冬に似ている気がする。


それはそうと。


「早く行こう。日が暮れてしまうぞ。」


「えっ、あ、はい……それでは行きましょう。ついてきて下さい。」


先導はエル。


その後ろに手を繋いだ俺とニル。


そして後ろがセレスとサリス。


最後尾はレイだ。


「なぁエル、エルフは他種族を嫌っているって聞いたんだが、実際どうなんだ?」


「間違ってはいませんよ。私達も人間は怖いって教えられましたから。それでも、他のエルフに比べたらまだましですよ。極端な家系では、人間は悪魔だなんて伝えられたりもしていますから。」


「家系によって違うのか?」


「エルフは個々の家系の伝統などを重んじるんです。一族の繋がりも強いですが、それ以上に家族の繋がりが強いんです。」


「それだと家系ごとの対立とかが起きたら大変じゃないのか?」


「そういう時は長老が調停する決まりなんです。長老は一族の総意によって決まるんですよ。そして、現長老は私達のお祖父様なんです!」


「ほう、そうなのか。今の長老は他種族に対して敵対的だったりするのか?」


「いえ、どちらかというと穏健派ですね。昔、結界の外で人間と旅をしていた時期があるらしく、人間に対してそう悪い感情は持っていないです。」


「だからエルとニルはそこまで人間に忌避感を持っていなかったのか。………でも、人間に食われるとか何とか言ってたよな?」


「あれは家系というよりもエルフ達の中では有名な話で………お祖父様もあまり否定はしませんでしたし。」


ふむ……穏健派の長老が否定しなかったのか。


まぁ、エルフはみんな容姿端麗なようだし、変な人間に捕まったらロクな目に合わないだろうから、注意しておくに越した事はないのかもしれない。


下手に興味を持たれて結界の外に出られては堪らないから、そういった嘘で好奇心を抑制しようとしたとか、そんなところだろうか。


確信はないが、そう外れてもいないように思えた。


「でも、やっぱり人間も悪い人ばかりではないのですね。ネクロさん達を見てると、そう思います。」


「そんな簡単に信じて良いのか?いや、嬉しいんだけどさ。」


「エルフは見抜く(・・・)種族ですから。精霊様は生き物の本質を視る力をお持ちなんですよ。その精霊様のご加護のお陰で、私達エルフもそれに近い力を持っているんです。」


「へぇ、見抜く種族………ね。」


理由もなく信じられるよりはまだ良いか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



雑談をしながら進むこと十分ほど。


突然、レイが前方から迫る多数の反応を感知した。


「むっ……旦那、前の方から十人のエルフがこっちに向かって来てるっす。」


「あっ、もしかしたら里の人達が私達を捜しに来ているのかもしれません。」


エルが口に手を当ててそう言った。


「このまま進めば顔を合わせる事になるか。よし、行こう。」


という事で更に進む。


数分後、エルフ達が前方から現れた。


「むっ!……エル!ニル!無事だったか!!」


「あっ、お父さん。」


お父さん……この男がエルとニルの父親、つまり現長老の息子か。


容姿的には俺よりは年上そうだが、中年というほどでもない。


まぁ実年齢はもっと上なのだろうが、見た目はかなり若く見える。


「お前達が無事で良かった。…………だが、何故人間と共にいるんだ?まさか、そいつらが拐ったのか!?」


エルパパはこちらを睨み付けて警戒している。


他のエルフ達も武器を手にして警戒している。


サリスが反応するのでやめていただきたいのだが。


後ろでサリスが「矢の一本でも打ってきた時は、全員血祭りにあげてやる。」などと物騒な事を呟いているのが聞こえる。


まじでやめてくれ、頼むから。


「ち、違うの!この人達は結界の外で魔物に教われていた私達を助けてくれたのよ!!」


「むっ、それは……本当か?」


「本当………だよ、パパ。」


疑ってかかるエルパパに、ニルがコクコクと頷きながら肯定する。


その後、いくつかの質問に回答して、俺達が敵でない事が信用された。


少なくともエルパパには、だが。


他のエルフは少しは信用したり、相変わらず睨んできたりなど、様々な反応をしている。


「さて、まだ君達の事を完全に信用した訳ではないが、どうやら娘達を救ってくれたのは事実のようだ。礼を言わせてもらう。本当にありがとう。」


そう言って頭を下げてくるエルパパ。


「気にするな。助けられて良かった。俺の名はネクロだ。宜しくな。」


「私はウルシアルだ。こちらこそ宜しく頼む。」


渋い声でそう言ったエルパパ改めウルシアルと握手を交わす。


セレス達の事も紹介した後、一先ず里へ連れて行ってもらえる事となった………のだが、ここで一人のエルフの兵士……狩人と呼ぶらしい……が、異論を上げた。


「ウルさん!人間なんかを里に招き入れるなんて、何を考えているんですか!?」


「ノールよ、ネクロ達はエルとニルの命を救ってくれたのだ。礼の一つもしないのでは、エルフの名折れだろう。」


「だとしても人間ですよ!!何をされるかわかったものではない!!」


そう言ってこちらを睨んでくるエルフの若者、ノール。


それに賛同する声がいくつか上がる。


「私の決定に逆らうと言うのか?」


ウルシアルがそう言って一睨みすると、声を上げてたエルフ達が黙りこんだ。


しかし、ノールはそれでも諦めなかった。


「俺は認めません!おい貴様、ネクロとか言ったな!!何が目的でここに来たんだ!?」


「ちょっとノール!何て失礼な事を言うの!!」


エルが間に入って止めようとする。


同じ年頃のようだし、友達なのかもしれない。


「エル、こっちに来い!そんな奴の近くにいたら危ないぞ!!」


「何を言っているのノール!?ネクロさんに謝って!!」


「何で俺が!!」


「ネクロさんは貴方の言うような悪い人間ではないわ!私達を助けてくれたんだから!!」


「それだって何か目的があったのかもしれないだろ!!」


「だとしても助けて貰ったのは事実よ!そのお礼をしようとして何がいけないの!?」


「ぐっ………き、貴様!俺と戦え!!」


何でやねん。


突然の決闘申請につい突っ込んでしまった。


「えっと………何で?」


「貴様がエルフに害なす人間かどうかを見極めてやる!!」


戦って何がわかるんだよ。


呆れてしまった俺だが、驚く事にウルシアルやエルまでもがその方向に話を進めようとした。


「すまないネクロ、我々エルフは最終的な解決法として決闘する事が良くあるんだ。恐らく、君の力を見せてやればあやつらも認めるはずだ。」


戦闘民族か。


エルフは戦闘民族だったのか。


「ノールが失礼な事を言ってすみません。彼は私の幼馴染みなんです。気が短くて浅慮なところがあって。………それにしてもどうしてあんなに怒ってるのか………。」


幼馴染みだったのか。


それにしても、ノールの気持ちは気付かれていないようだな。


哀れなり。


好きな人が結界の外で死の危機を迎えていて、それを自分ではなく見知らぬ……しかも人間に助けられたとなれば歯痒い思いもするだろう。


オマケにその想い人やその父親までもが人間を庇い、想い人の妹も懐いている様子。


想い人が取られるような気がして、焦ってしまったのではないか、と察した。


「はぁ………わかったよ、戦えば良いんだろ?」


「ご主人様、僕がやりましょうか?」


「却下だ。そんな殺気立ってる奴にやらせる訳ないだろ。」


「しかし………」


「まぁ、すぐ終わらせてくるから待ってろよ。」


「………承りました。」


残念そうな顔で引き下がるサリス。


あいつに任せたらノールが死んじまうよ。


「覚悟は良いか人間?」


剣を構えてこちらを睨むノール。


「あぁ、いつでもどうぞ。」


だらんと脱力して棒立ちする俺。


「貴様、武器はどうした?何故構えない?」


「俺は武器なんて使わないし、構える必要もない。」


「………馬鹿にしているのか?」


一層殺気立つノール。


「別に。どうでも良いから早く終わらせよう。早くエルフの里に行ってみたい。」


「貴様………望み通り、すぐに終わらせてやる!!」


そう言って飛び出してくるが、飛び出した瞬間に倒れ伏した。


その後ろには右手で手刀を作っている俺。


周りのエルフ達が目を剥いて唖然としている。


ウルシアルやエル、ニルでさえも何も言えずに固まっていた。


いや、まぁ何て言うかーーー






ーーーしてみたかったんだ………首トン。

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