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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第二章  クリストル王国
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第四話  無能魔術師

無能魔術師


一部の貴族やクラスメイト達から、僕はそう呼ばれている。


ステータスを鑑定したあの日から、既に一週間が経過している。


周りの人が僕を見る目は冷たくなる一方だ。


クラスメイトには非戦闘職もいた。


鍛冶師や錬金術師などだ。


だが、それならそれでできる事はある。


戦闘職の支援をする事ができる。


だが僕は違う。


属性を持たない魔術師など何の役にも立たない。


何をしたって一般人の域を出ない。


異世界人で唯一人、素質を持たない。


貴族ばかりか騎士や使用人まで、僕を蔑むようになっていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おい見ろよ、あいつが無能魔術師だぜ。」


「魔術師のくせに属性なしって………何ができんだよ。」


「何か暗いし、性格も悪そうね。」


「他の人達とは大違いね。」




そんな言葉ばかりが聞こえてくる。


秋人達は変わらず接してはくれるが、彼らと話す時間はあまりない。


学習の時間は全員一緒だが、鍛練はグループ別に行われる。


近接戦闘のグループ。


魔術のグループ。


非戦闘職のグループ。


僕は一応近接戦闘のグループに入っている。


他にできる事がないからだ。


だが、他の戦闘職に比べて、天職が魔術師である僕は身体能力が低い。


日に日に傷付いていくだけだった。


だが、そんな辛い立場でも、変わらず接してくれる人はいた。


あまり認めたくはないがーーー


「お疲れ様ですネクロ様。今日はまた一段とボロ雑巾のようになっておられますね。」


毒舌ギャグメイドと化した、ミレイだ。


ミレイは何故か僕に対して冗談や毒舌をはく事が多い。


他の人とそんな風に話しているのを見た事はないのだが。


最初はミレイにも愛想を尽かされたのかと思ったが、彼女の目に僕を蔑む色はない。


単純に遊んでいるだけのようだ。


僕自身、彼女とのやり取りに心が救われていた。


「うるさいよミレイ。誰がボロ雑巾だ。」


「勿論ネクロ様に決まっているではありませんか。ボロ雑巾が気に入らないのなら、ゴミクズとでも言いましょうか。」


「いい加減にしないと泣くよ。王女様に言い付けるぞ。」


「おぉ、プライドの欠片もないその物言い。流石はネクロ様ですね。」


感心した様子を見せる彼女にジト目を向ける。


「そんなにじっと見られては照れてしまいます……。何をするつもりなのですか、私は使用人ですよ?」


「何で顔を赤らめてるんだよ……。何もしないよ。」


「私の純情を弄んだのですね!この鬼畜!悪魔!ネクロ様!!」


「僕の名前をそこに並べるのは止めてくれ!!」


前言撤回。全く救われない。


げんなりとした僕を見て満足したのか、彼女は夕飯を取りに部屋を出ていった。


彼女は何をしに来たのか………。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



学習によってこの世界の事は色々とわかってきている。


・この世界には人間以外にも、エルフやドワーフなどがいる。エルフは大陸の西の大森林に集落を作って暮らしており、ドワーフは大陸の北の山に暮らしている。


・大陸には四つの人間の国がある。

 まずは僕達を召喚した東のクリストル王国。

 国王と貴族によって統治されている。

 異種族との関係は普通。

 二つ目は西のミュートラル公国。

 貴族と商人によって統治されている。

 異種族との関係は良好。

 三つ目は南のホライズ教国。

 教会が統治する宗教国家だ。

 人族至上主義の為、異種族との関係は最悪。

 四つ目は北のアルモンテ帝国。

 皇帝による専制君主国家だ。

 異種族を軽んじる傾向がある為、関係は悪い。


・魔術の属性は火、水、風、土、光、闇の六種類あり、光属性は非常に珍しく、闇属性は更に珍しい。


・大陸各地にはダンジョンと呼ばれるものがあり、内部には様々な魔物や罠がある。


・冒険者ギルドに登録している冒険者は、討伐依頼や採取依頼、お手伝い依頼なども受ける、派遣社員のような役割を持っている。


・ギルドに登録せずに魔物を討伐し、素材を売って生計を立てる人々を傭兵と言う。


・魔物には級というものがあり、それによって危険度を把握する事ができる。下級、中級、上級、最上級の四つ。


・スキルにはレベルがあり、最大レベルは5。レベル4から極端に少なくなるらしい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



飯を食って風呂に入った僕は、王宮図書室へ向かった。


最近は暇な時間はここで本を読んで過ごしている。


まともに鍛練もできていない現在、僕にできる事と言えば情報を集める事くらいだ。


魔物についての本を読んでいると、後ろに近付く気配を感じた。


振り返ると、さっと本棚の後ろに移動した。


隠れているつもりなのだろうか。


手と頭が見えているのだが……。


気付いてない振りをするのも無理があったので話しかける。


「そんな所で何をしてるのさ、真冬?」


少し時間を置いて、観念したように小柄な少女が姿を表した。


「ん……どうしてわかった?」


「いや、普通に気付くから……。頭見えてたし。」


「むぅ………不覚。」


何なんだその言葉遣いは。


真冬が醸し出す不思議さに懐かしさを感じた。


「真冬も本を読みに来たの?」


「違う、根黒を見かけたから、ついてきた。」


「あぁ、そうなんだ。」


「ん………根黒は何してるの?」


「見ての通り、読書だよ。情報は大事だからね。」


「根黒は偉い。鍛練の後にも、そうして頑張ってる。」


真冬が少しだけ微笑んでくれた。


でも………違う。


「僕には………これくらいしかできないからね。」


真冬が悲しそうな顔をする。


「ん……根黒、気にしてる?」


何を?だなんて聞き返す必要はなかった。


「まぁ……ね。そりゃ、少しは気にするさ。」


「大丈夫。根黒には根黒にできる事がある。きっとそれを見つけられる。」


珍しく真冬が饒舌だ。


何故か真冬はそう確信しているらしい。


僕はそこまで自信を持つ事はできないが。


しかし、幼馴染みにここまで信頼されるというのは、悪いものではなかった。


「うん………ありがとう、真冬。」


「ん……がんば、根黒。」


そう言って小さな両手を握ってぐっとする。


暫く話して真冬と別れた。


ほんのちょっとの、けれど大きな勇気を貰った気がした。

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