第一話 エルフとは
俺、復活!
お待たせ致しました。
公都を旅立って三日、俺達の目の前には樹海とも言える大森林が広がっていた。
本来なら一日でも着ける距離だったのだが、グラニには緩やかに移動するよう頼んでいたのだ。
それでも一般的な馬車に比べれば余程速いのだが。
なにせ通常なら一週間はかかる道程だ。
それをのんびり動いて三日。
グラニが如何に速いかが良くわかるだろう。
「ここが公国の大森林か………確かにデカイな。」
十メートル程跳んで見てみたが、森の端は見えなかった。
「この森のどこかにエルフがいるんすねぇ。」
「そう言えば、お前もまだ確かな場所はわかっていないんだったな?」
「流石に分身体じゃ結界を見付けられなかったみたいっす………。」
レイが悔しそうな顔をする。
レイの言う結界とは、その昔他種族との交流を嫌ったエルフの願いに応えた地神が作ったものだそうだ。
地神がエルフの願いに応じた理由はわかっていないが、一説にはエルフが最も自然を愛する種族であるから、となっている。
その結界には他種族の侵入を防ぐ力があるらしいが、強力な力を持った者や、エルフに認められた者は入る事ができるという。
「まぁ、俺達ならその結界も抜けられるだろ。頼むぞ、レイ。」
「合点承知っす!必ず見付け出すっす!!」
ビシッと敬礼をするレイ。
気合いは十分だ。
「エルフってどんな方々なんでしょうね、ご主人様?」
セレスがワクワクしたように聞いてくる。
「そう言えばお前達も会った事はないんだったな。」
「エルフを幻想の種族と言う人がいるほど、彼らは人前に現れませんからね。」
サリスが顎に手を当ててそう言った。
エルフが何故それほど他種族を拒むのかは謎である。
やはり他種族から虐げられた歴史でもあるのだろうか。
そもそも、エルフとはどのような存在なのか。
それを確認していこう。
まず、エルフは精霊と呼ばれる高位の存在に加護を受けた部族が進化した種族である。
つまり、エルフは元を辿れば人間なのだ。
精霊の加護によって多大な魔力と長い寿命を得たのだが、その結果人間であった時に備わっていた繁殖力が著しく低下したという。
その為、エルフの総数は決して多くない。
短命の者でも三百年は生きるが、新たな生命が芽吹くのも百年に一度、といった程度らしい。
また、人間の平均を遥かに越えるのは魔力量だけでなく、魔術に関しても優れた才を発揮するようだ。
うん、テンプレだ。
精霊に加護を貰い、あらゆる面で人間を越えた彼らはプライドが高く、他種族を見下すのが普通であるという。
うん、テンプレだ。
ちなみにこれらの情報は書物やレイが各地から集めたものによる。
だから間違っているかもしれないし、合っているかもしれない。
丸っきり間違いという事もないだろう………と願っている。
「あ、そうだセレス。お前、当分の間は火属性は禁止だからな。」
「えっ!?ど、どうしてですかご主人様!?」
「だって森だし。」
周りを見てみろ。
一面木と草花だぞ。
「それくらい操作できます!森を燃やしたりはしません!」
「だとしても駄目だ。文献によると、エルフは火を嫌うらしい。まぁ、自然を愛するっていうならわからなくもないがな。」
「そんなぁ…………」
セレスが落ち込んで俯く。
「これも修行だ。たまには風と土だけで戦ってみろよ。」
「うぅぅ………わかりましたぁ………」
渋々と涙声で了承するセレス。
そんなに嫌か。
「それからサリス、お前もあんまり高圧的な態度は取るなよ。」
「ご主人様、僕はご主人様に高圧的な態度など取った覚えはありません。」
「いや、俺にじゃなくてな?……エルフにだよ。」
「?………何故ですか?」
何故ですかときたよ。
それも真顔だよ。
本当にわかってないみたいだよこの娘。
「あのな、エルフってのはもうわかっている通り、プライドの高い種族だ。そのエルフに対してお前がいつも通りに接してみろ。どうなる?」
サリスが深く考え込む。
「……………エルフ共がご主人様の偉大さに涙します。」
「このお馬鹿!!お前の頭の中で何があったんだよ!?」
どうせこんな事だろうと思ったよ!
「とにかく、簡単に罵倒するような事はやめてくれよ。俺達は喧嘩しにきたんじゃないんだ。間違っても開口一番に『貴様らがエルフか。何だその眼は?ご主人様を睨み付けるなど、万死に値する。』とか言って掴みかかるんじゃないぞ?」
サリスがハッとした顔をする。
まるで、何故バレたのか、とでも言いたげな顔だ。
「何故お分かりになったのですか!?」
「もういいよ。」
本当にいいから。
サリスにはもう言っても無駄かもしれない。
いや、こいつの事だから何だかんだ言って俺の命令に逆らう事はないと思うけどさ。
それに、サリスの気持ちもわからなくもない。
プライドが高い事で有名なエルフの里に見た目人間の俺達が入り込んだら、間違いなく面倒な事になるだろう。
それは俺達に少なからず非がある。
他種族が嫌いだとわかっていて侵入するのだからな。
だから、今回はこちらから歩み寄るべきだ。
だからこそ、あまり刺激を与えるべきではないのだ。
だがもし、もしこちらが歩み寄っても否定するというのなら。
それだけでなく、こちらに危害を与えようとしてくるのなら。
その時は、非常に申し訳ないがーーー
ーーー理不尽な目に合って貰おう。




