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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第六章  ミュートラル公国
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第十三話 大公との会談

「【暴食の虎】は何故公都を攻めようとしたのか、知っているか?」


「ふむ……それに関してはこちらでも探っているところなのだが、残念ながら未だ有力な情報は見つかっていないんだ。」


嘘だ。


「フィヨルド、俺に嘘は通用しないんだ。本当の事を言ってくれ。」


空気が冷たくなるのを感じる。


ハシドやヨハネスの視線も強くなっている。


「………君は何か特殊なスキルでも持っているようだね。あぁそうだ、私はその理由を知っている。しかし、そう簡単に話す訳にはいかないんだ。わかってくれ。」


「…………まぁ、お前にはお前の立場があるだろうしな。…………なら、俺が勝手に憶測を話させてもらう。」


ここで一息置く。


「【暴食の虎】は三千人を超える規模を誇る盗賊団だ。だが、それでも一国の中枢を真っ正面から攻める力があるかと言えば、そうではない。それはあいつらも知っていたはずだ。なのに攻めようとした。そこには何らかの理由、あるいは勝算があるはずだ。」


「…………ふむ、それで?」


フィヨルドが先を促す。


「国に勝てるとする勝算があるならば、それはおそらく………国だろう。」


誰かが喉を鳴らした。


「つまり君は、【暴食の虎】の背後にはどこかの国がある、と考えているのかね?」


「背後にいる、というよりは公都を攻めるという目的の下で提携しているのではないかと思っている。【暴食の虎】が公都に攻め込んでいる間に、その混乱を突く計画だったんじゃないかと思うんだ。」


「だとして、それは一体どこの国だと?」


「まず王国はありえない。あそこは兵士の練度が低いし、魔物増加の影響でそんな余裕はないだろうからな。次に、教国もないだろう。あそこは領土を広げる事には然程興味なんてないだろうし、間違っても盗賊と手を組んだりはしないはずだからな。」


「ならば残りは………」


「そう、帝国だ。」


フィヨルドは表情を崩さない。


だが、俺の神眼は見抜いた。


「どうやら……正解のようだな。」


誰も口を開かず、暫し静寂が場を包む。


やがて、フィヨルドが深々と溜め息をついた。


「……………参ったな。ネクロ、どうやら君は猪ではなく鷹だったようだ。力だけではなくそれほど思慮深いなんて………お手上げだよ。」


「認めるんだな?」


「ここまできて否定もできないだろう。君の言う通り、【暴食の虎】を唆したのはアルモンテ帝国だ。」


「やはりか………勝つ為にはどんなものでも利用するなんて、軍事国家らしいやり方だ。」


「帝国主義というものだな………だがね、こちらで入手した情報によると、どうやら今回の件は皇帝の知るところではないような気がするんだ。」


「何だと?…………つまり、公都の襲撃は帝国の総意ではない、と?」


「私は皇帝と知り合いでね。彼は勝つ為の手段は選ばない戦闘狂だが馬鹿ではない。もし彼が知っていれば、盗賊の力を借りて領土を広げたとしても、長い目で見ればその事実はマイナスにしかならないという事がわかるはずだ。」


「なら一体誰が?」


「残念ながら、そこまでは確証を得てはいないんだ。だが、帝国も一枚岩ではない、という事なのだろうね。」


「そうか………もう一つ聞きたい事があるんだが、帝国の誰かがその作戦を立案したとして、何故今なんだろうな?」


「それは………………」


フィヨルドが言い淀む。


そこで、ヨハネスが口を開いた。


「大公様、これなればネクロ君に全てを話すべきかと。何か協力してもらえるかもしれません。」


「私もヨハネス殿に賛成です、大公様。」


宰相も続けてそう言った。


「…………そうだな。ネクロ、君の事を信用して話すとしよう。良いかね?」


「ここで得た情報は決して外には漏らさないと約束しよう。」


「ありがとう…………実はね、私は数ヵ月前より体調を崩す事が多くなっていてね。医者からは何らかの病ではないかと言われているのだが、その実態がわからないんだ。」


「病気………?回復魔術は使わないのか?」


「使ったさ。しかし、一時的に良くなっても、また再発するんだ。それも、以前より病状が重くなってね。」


「通りで顔色が悪いと思ったよ。」


「帝国の何者かは、私が病に伏せているという情報をどこかから嗅ぎ付け、攻める機会だと思ったのではないかと考えている。………事実、私の身体がいつまで保つかわからないからね。絶好の機会ではあるのだろう。」


「原因もわかっていないんだよな?」


「わかっていたら既に対処しているさ。どんな医者も学者も、何もわからなかった。」


「病気の原因もわからない、実態すら掴めていない………か。」


「もし私が死ねば息子が跡を継ぐ事になるが、そんな時に帝国に攻められれば危機に陥る事は言うまでもない。ましてや一大勢力を誇る盗賊団にまで攻められたとしたら、この国は確実に終わっていただろう。君には感謝してもしたりない。」


「別に良いさ。俺達がしたくてした事だ。」


「君達とは今後も友宜をはかりたいと思っていたのだがね…………先の短いこの身では、それも成せないだろう。本当に残念だ。」


フィヨルドは悟ったような顔で微笑んでいる。


何とも言えなくなり、俺は口を閉じた。


そこで、後ろでレイが口を開いた。


小さな声で囁いてくる。


「旦那、大公様に神眼は使ったんすか?」


「いや、ステータスは見ていない。真偽の看破には使ったが。」


「神眼を使えば、その病気の原因とかわかるんじゃないっすか?」


……………………。


「流石だなレイ、その通りだ。…………完全に忘れてた。」


「………旦那ってたまに抜けてるっすよね。」


呆れたように言うレイを無視して、フィヨルドに神眼を発動する。


ステータスが表示され、さらに深く視ると、フィヨルドの現状を理解する事ができた。


身体は随分と衰弱しているようだ。


普通なら立っているだけでも辛いだろう。


今日は無理をしてここに来ているのかもしれない。


それだけ大事な話ではあった。


そしてその原因………というか実態なんだが。


「なぁ、フィヨルド…………」


「どうしたんだい?」


「俺には特殊なスキルがあってな。お前の身体の状態を知る事ができるんだが…………。」


「………何だって!?それはつまり、この病の原因がわかるという事かい!?」


落ち着いた態度を貫いていたフィヨルドが身を乗り出す。


ヨハネスやハシドも驚愕の表情をしていた。


「教えてくれネクロ!この病の原因を!どんな病なのかを!!」


「いや、まぁそれは構わないんだが…………何て言うか……………」


「ど、どうしたんだ?もしや、原因を知っても治せないような難病なのか?」


いや、治せないとかそういう問題じゃない。


だってーーー








「ーーーフィヨルド…………これ呪いやろ、病気ちゃうやんか。」

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