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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第六章  ミュートラル公国
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第八話  公都のギルドマスター

盗賊団を壊滅させた俺達が公都に着いた時には、陽が落ちる寸前で門が閉まりかけていた。


「冒険者か?こんな時間に戻って来るのは珍しいな、閉門ギリギリじゃないか。」


門番がこちらに話しかけてきた。


「いや、俺達は傭兵だ。」


「傭兵だと……?」


門番が訝しむような表情をする。


傭兵というだけでも怪しいのに、俺達の風貌が特殊なのが原因だろう。


「………まぁ良いか。…………そいつは何だ?」


門番がレイが抱えている男を指差して言った。


「盗賊だよ。捕らえた盗賊は兵士に渡せば良いんだろ?」


「あぁ、それはそうだが………たった一人じゃ大した褒賞金も出ないぞ?」


「それはどうかな?こいつは【暴食の虎】の頭領だ。」


「……………は?暴食の虎?」


「あぁそうだ。勿論知っているだろう?」


「そりゃ知ってるが………あのなぁ、傭兵だか何だか知らないが、あまり兵士を嘗めるんじゃねぇよ。こっちだってそんなお遊びに付き合う程暇じゃねぇんだ。」


どうやらこの兵士は信じていないらしい。


「本当の事なんだけどな。」


「嘘も大概にしとけよ。たった四人で何をしたら大盗賊団の頭領を捕まえられるってんだ?」


どう説明したものかと考えていると、一人の男が近付いて来た。


「おい、何をやっているんだ?そろそろ門を閉めるぞ。」


「あ、隊長……それがですね……………」


どうやらこの男が門兵部隊の隊長のようだ。


門番が隊長へ事情を説明している。


「【暴食の虎】の頭領だと?何を馬鹿な事を………おい、そこの傭兵。その盗賊の顔を見せてみろ。俺はあの男の顔を知っているんだ。嘘は通用しないぞ。」


余計な手間をかけさせやがって、とでも言いたそうな苛ついた顔で、隊長が俺達に命令した。


サリスが前に出ようとするのを抑え、レイに抱えた頭領を下ろすように言った。


下ろされた男の顔を観察する隊長。


しかめていた顔がやがて驚愕の表情に変わり、段々と顔色が青くなっていった。


「こ、これは………まさか、そんな馬鹿な………」


震える手でポケットから眼鏡を取り出し、それを着けて再度観察する。


恐らく名前を見破る魔道具か何かだろう。


真実を悟った男は、もはや顔色が白くなっていた。


「どうしたんですか隊長?」


門番が事情が掴めずに困惑している。


門番の問いを無視した隊長が俺達に向き直り、勢い良く深く頭を下げた。


「申し訳ございませんでした!貴殿の仰った事は確かでした!こやつは間違いなく【暴食の虎】の頭領です!」


その後ろで門番が唖然としている。


それにしても突然態度変わったな。


「気にするな。わかってくれたなら良いさ。」


面倒なので早く話を進めよう。


「感謝致します!………それで、こやつの事なのですが………」


「好きにしてくれ。元からそのつもりだし。………あ、そいつが持ってた魔道具なんかはこっちで回収したが、構わないか?」


「勿論でございます。盗賊の保有物の権利は討伐者にありますから。」


「わかった。それじゃな。」


唖然としている門番に税を渡して中へ入ろうとする。


「お、お待ち下さい!!」


隊長が慌てた様子で止めてきた。


「何だ?まだ何かあるのか?」


「これだけの獲物ですから、できれば事情聴取をさせていただきたく…………それと、褒賞金の事なのですが。」


あ、忘れてた。


「事情聴取は明日にしてくれないか?今からギルドに行かないといけないんだ。褒賞金は事情聴取の後って事で。」


「か、畏まりました。宿泊されている宿を教えていただいても宜しいですか?」


「まだ宿は取っていないんだ。こちらから向かうから、どこに行けば良いか教えてくれ。」


という訳で事情聴取の場所を聞き、後の話は明日という事になった。


門番と隊長に別れを告げてギルドへ向かう。


ギルドの扉を開けると、騒いでいたはずの冒険者達が俺達を見て口を閉じた。


夜の酒場に似合わない静寂が漂う。


俺達は何も気にせず受付へ向かった。


ギルドマスターへの手紙を託した受付嬢へ話しかける。


「ギルドマスターは戻ったか?」


「は、はい、今は上におられます。」


ギルドマスターの部屋は二階と決まっているのだろうか。


「手紙は渡してくれたか?」


「はい、お渡ししました。ネクロ様方がお戻りになったら、部屋へお通しするように言い付かっております。」


「そうか、なら頼むよ。」


「畏まりました、こちらへどうぞ。」


受付嬢の案内でギルドマスターの部屋へ向かう。


ギルドの作りはウィーグの所と然程変わらないようだ。


規模はかなり違うが。


扉の前で受付嬢が止まった。


「ギルドマスター、ネクロ様方がお戻りになりました。」


「入ってくれ。」


「はい、失礼致します。………皆様、どうぞこちらへ。」


受付嬢が扉を開き、俺達を誘導する。


俺達が入ると、受付嬢は静かに出ていった。


「やぁ、君達が件の傭兵か。私はギルドマスターのヨハネスだ。宜しく頼むよ。」


そう言って手を差し出してきた。


ヨハネスはウィーグとは違った感じの男だった。


毛先が波打つ癖のある金髪を肩の上まで伸ばしており、気品漂う精悍な顔つきをしている。


年齢を感じさせる皺が多少あるが、纏う覇気は老齢のそれではなかった。


身体は鍛えられてはいるが、戦士という感じでもない。


魔術師なのだろうか。


「傭兵のネクロだ。宜しくな。」


差し出された手を握る。


それと同時に神眼を発動した。




【ステータス】

『名前』

 ヨハネス・フリール

『天職』

 魔術師

『スキル』

 体術Lv3

 魔力感知Lv3

 魔力操作Lv3

 風属性魔術Lv4

『称号』

 ギルドマスター幹部




スキルの数が少ないような気もするが、本来はこれくらいが普通だ。


むしろスキルレベル4を一つでも持っている時点で優秀な魔術師である事がわかる。


ウィーグもこんな感じだったので、ヨハネスも元Aランクの冒険者なのかもしれない。


最高位のSランクならどれほど強いのだろう。


いつか会ってみたいな。


「さて、突然だが本題に入ろう。」


ソファーに座らせ、自身も座った後に、ヨハネスがそう切り出した。


「指定傭兵団の件だな?」


「そうだよ。あのウィーグが認めるのなら問題はないのだろうし、私としても君達ほどの実力者ならば、と思うのだが………」


ヨハネスもウィーグと同様、俺達の実力を悟っているようだ。


「何か問題でもあるのか?」


「たとえ実力があったとしても、何の実績もない君達をいきなり指定傭兵団にするというのは、些か難しいものがあるんだよ。事実、大陸に存在する他の指定傭兵団は、何かしらの実績があって実力を認められているのだからね。」


「実績か………それならたぶん問題ないと思うぞ?」


「ほう?何か思い当たる節でも?」


「今日の事なんだがな。【暴食の虎】っていう盗賊団を壊滅させてきたんだ。」


「……………もう一度言ってくれないか?」


「だから、今朝【暴食の虎】を壊滅させてきたんだよ。頭領だけは捕まえたんだが、他は皆殺しにしてきた。頭領は兵士に渡したよ。」


そう言うと、ヨハネスは掌を額に当てて大きな溜め息をついた。


「…………君達には本当に驚かされるな。西の山脈へ行ったのかい?」


「知っていたのか?あそこに盗賊団が拠点を作っていた事を。」


「昨日知ったばかりだがね。昨日はその件で大公様に呼ばれていたんだよ。」


大公とは公国の統治者だ。


王国での国王だな。


「盗賊団壊滅の話はまだ知らないんだよな?」


「それは今日の事なのだろう?恐らく、今頃大公様の元へ報告がいっているのではないかな。…………しかし、今日あの山脈へ行っていたのなら、どうやって戻って来たんだい?」


「走った。」


他にどう言えと。


「……………分かった、君達を私の常識に当て嵌めるのはもう止めよう。」


何やら頭を抱えているが大丈夫なのだろうか?


「まぁ、そういう事なら話は早い。君達が【暴食の虎】を壊滅させた事が真実であるとされたなら、恐らく君達は大公様に謁見する事になるだろう。そして君達の力は認められて実績も十分。晴れて指定傭兵団に、という筋書きで構わないかね?」


「大公との謁見………か。面倒だな。」


「そう言わないでくれよ。あのお方は暗愚ではない。悪いようにはしないさ。」


「ギルドマスターであるあんたがそう言うなら多少は構わないが。俺は礼儀を重んじるつもりはないぞ?」


亜神になった影響だろうか。


偉そうにふんぞりかえるつもりはないが、人間相手にへりくだる気も起きない。


「大公様は認めて下さるかもしれないが、そうなると他の貴族はあまり良い顔をしないぞ?」


「俺達に喧嘩を売る奴は貴族であろうと潰してやるさ。」


「そこまでされると国としても黙っていられなくなると思うが。」


「その時は国ごと消してやる。」


実際にはそんな事しないが。


それくらいの覚悟と力を見せ付ければ大丈夫だろう、という話だ。


「勘弁してくれよ。君達が暴れまわったら洒落にならないじゃないか。」


「随分と持ち上げるんだな。俺達がそれほど力を持っている、と?」


「そりゃね。………僕は、場合によってはSランクの冒険者とだってマトモに戦う自身はあるよ。勝つかどうかは別だがね。だが、君達には………特にネクロ君、君とは戦える(・・・)気さえしない。」


「……………ふーん。」


何と言って良いかわからん。


Sランクの冒険者は最上級冒険者と言われる。


ABが上級。


CDが中級。


EFが下級だ。


これはそのまま魔物の等級にも繋がる。


Fランク三人で下級魔物と同等、そしてEランク一人で下級魔物と同等、といった感じだ。


そのまま上まで考えていくと、Sランク三人で最上級魔物と同等、という事になる。


たった三人でドラゴンと戦えると考えたら、やはりSランクの冒険者は特殊な存在なのだろう。


だが、俺達はそれぞれが通常の最上級種よりも更に強化された存在で、俺に関してはそれさえ越えた存在だ。


セレスとサリスの二人を相手取っても勝てる俺は、もしかしたら余裕で世界最強になれるのではないだろうか。


油断する訳ではないが、俺に勝てる存在がそう簡単に現れるとも思えない。


とするなら、ヨハネスの勘は間違ってはいないのだろうな。


「今日の話はこれくらいにしておこうか。【暴食の虎】について詳しく聞きたいが、それは大公様も交えてにしよう。」


「あぁ、わかった。…………あ、そうだ、魔物の素材を売りたいんだが、倉庫へ行っても良いか?」


「収納の魔道具を持っているんだったね。ウィーグの手紙に書いてあったよ。まだ解体人はいるはずだ。行ってみると良い。」


「わかった、ありがとな。」


「気にしないでくれたまえ。それでは、また後程。」


「あぁ、それじゃな。」


ヨハネスに別れを告げ、倉庫へ向かった。


その後、大量の魔物を取り出して解体を頼んだ。


そして、俺達はギルドを出て宿を取る事にした。

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