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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第六章  ミュートラル公国
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第七話  盗賊虐殺

明け方、東の地平線から僅かに太陽が顔を出そうかという時間、その男達は早朝にもかかわらず忙しく動き回っていた。


彼らは今や一大勢力を誇る大盗賊団【暴食の虎】の団員である。


先程、遂にこの拠点に最後の団員達が到着したところだ。


幾つかの隊は集まらなかったが、恐らく道中の魔物にでもやられてしまったのだろう。


彼らは特に気にはしなかった。


幹部の命令により、朝早くから各隊が集めてきた武具や道具などの点検、整備を行っている。


一国の都に攻め入ろうというのだ。


準備が早すぎて困る事はない。


万全を期する必要がある。


テントが張り巡らされている中を盗賊達が動き回る中、一人の男がソレ(・・)に気付いた。


その男がふと空を見ると、東の方に何やら赤い模様のようなものが浮かんでいるのだ。


彼は不思議に思って隣にいた同僚の肩を叩いた。


「なぁ……なぁおい!」


「あぁ?どうしたんだよ、早くしねぇと隊長にどやされるぞ?」


「いや、あれ見ろよ、あれ。一体何だと思う?」


「はぁ?あれってなん………………え?」


同僚の男は魔術師だ。


だから知っていた。


あれは魔術式陣(サークル)と言って、一定以上の強大な魔術が行使される際に現れるものであると。


しかし、そんな魔術を使えるのは宮廷魔術師くらいのものだ。


何故ここがバレた?


他にも敵はいるのか?


そんな考えが頭を過るが、彼の頭を占領したのは、たった一つの直感だった。


ーーーあれを食らえば、ただでは済まない。


「ぜ、全員逃げろ!今すぐ逃げるんだ!!」


彼は周りの仲間達に逃避を促す。


しかし、他の者達にはその危機感はなく、当然すぐに行動に移す事などできなかった。


いや、どちらにせよ、逃げる時間などありはしなかった。


困惑する彼らを余所に、魔導の王(ノーライフキング)の生み出す業火が燃え盛った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



目の前の広大な土地は、セレスの発動した『巨人の統べる炎獄世界(ムスペルヘイム)』によって、爆炎と黒煙と恐怖と恐慌に包まれた。


「流石だなセレス。進化して更に規模と威力が増したんじゃないか?」


「ありがとうございますご主人様!ご主人様の為に張り切っちゃいました!」


張り切られた盗賊達は堪ったもんじゃないだろうな。


「ご主人様、僕も早くご主人様のお役に立ちたいです。」


「わかってるよサリス。雑魚はセレスに任せて、俺達は後ろの方に控えている幹部共を潰しに行くぞ。」


殲滅力という点では、どうしてもサリスは……俺ですらセレスには劣る。


雑魚を一人ずつ倒していくよりは、逃げられる前に幹部を潰してしまおうという事だ。


「承りました。」


サリスが凶悪な笑みを浮かべて頷いた。


「セレス、雑魚の殲滅は任せたぞ。一人残らず燃え散らせ。」


「畏まりました!」


セレスがにこやかに笑って一礼した。


「レイ、お前は全体の把握と残党の討伐だ。分身をフルに使え。」


「了解したっす!!」


レイがビシッと敬礼をした。


その風貌と相まって、ヤクザの下っ端のようだ。


セレスとレイを残し、俺はサリスを伴って飛び出した。


黒煙の中で混乱している盗賊達を無視して奥へ進む。


レイからの念話がきた。


『旦那、黒い布を身体のどっかに巻いてるのが幹部っす!もうすぐ見えるはずっす!』


「了解した。サリス、黒い布を巻いた奴を狙え。」


「承りました。」


やがて煙が薄くなってきた。


前方に黒い布を腕に巻いた男がいた。


「おい!これはてめぇらの仕業か!てめぇら一体なにもーーー」


喋っている途中だった男は、高速で近付いたサリスによって瞬く間に蜂の巣にされた。


見ればパラパラと同じように黒い布を腕や頭に巻いた男達がいる。


「サリス、お前は右から回れ。」


「はい!ご主人様、ご武運を!!」


駆け出したサリスとは反対に、左手へ向かう。


後方では二度目の爆撃がなされていた。


立ちはだかる男の顔面に拳を振り抜く。


その瞬間、男の首から上が跡形もなく消し飛んだ。


俺を囲もうとしていた男達がその光景に唖然とする。


俺は幹部だけを狙って、一人ずつ頭を消し飛ばしていった。


消し飛ばした頭の数が二桁に突入した時、一人の男が現れた。


神眼を発動すると、その男が【暴食の虎】の副頭領である事がわかった。


『どうやら副頭領は二人いるみたいっすよ。一人はいまサリスさんの所に向か………あっ、死んだっす。』


哀れなり副頭領。


まぁステータス的にも大した事ないみたいだし、サリスの突きを捌けるとも思えないからな。


そんな事を考えながら、何やら叫んでいる男を闇の槍で撃ち抜いた。


胸に大穴を開けて倒れる副頭領。


三度目の業火が降り注ぎ、恐らく盗賊は残り数百といったところか。


三千の数を誇った盗賊団もあっという間に七割以上の人員を失い、団員達は混乱してマトモに動く事すらできていない。


現実を直視できずに呆然としている者、踞って頭を抱えて震えている者、恐慌状態で武器を振り回している者など、見るに耐えない奴らばかりだ。


「今まで散々他人を貶めてきたんだ。覚悟してもらうぞ。」


別に正義感を持って攻め入った訳でもないのだが、何となくそう言ってみた。


それから数人ほど殺した後、レイから念話が入った。


『旦那!盗賊の頭領が迂回して逃げようとしてるっす!』


「何だと?………部下達が虐殺されてる中、自分だけは逃げようってか、舐めた真似をしてくれるじゃないか。」


『旦那の左方を移動中っす!三人の護衛もいるみたいっす!』


「了解した。ありがとう、レイ。」


レイとの念話を切り、進行方向を左へ変更する。


林を突っ切って進むと、四人の男達が見えた。


更に速度を上げて近付き、四人の進路を塞ぐように飛び出した。


男達は驚いて声を上げるが、即座に神眼を発動し、頭領以外の三人に闇の槍を撃ち飛ばして息の根を止めた。


「てめぇ一体何者だ?俺達が【暴食の虎】だと知ってこんな事をしてんだよな?」


流石に三千人の盗賊を従えただけあり、頭領は混乱せず冷静に剣を構えて俺を睨み付けてきた。


「勿論知っているさ。しかし、思ったより歯応えがなかったな。虎というより子猫の方が合っているんじゃないか?」


「随分でけぇ口を叩くじゃねぇか。」


「俺達とお前達との格の違いは既に見せ付けたと思うが。」


「………どうしてこんな事をしやがった?」


「ちょっと気になる事があったんだ。何故お前達は公都を攻める?三千人で公都を攻めたところで勝つ事はできない。国ってのはそんなに甘いもんじゃない。お前らが公都に攻め入るのは、それなりの理由があるはずだ。」


頭領は何も言わずに佇んでいる。


この男は拷問したところで口を開くような男じゃないだろう。


これ以上は時間の無駄か。


「わかった、もう良い。後は牢屋で尋問でも何でもされてくれ。」


俺が拳を構えると、頭領も警戒を強くした。


ステータス的には副頭領よりもかなり上だが、技量はディアボロス等に比べればまだまだ未熟だ。


俺は高速で近寄り、構えられた剣の上から拳を叩き込んだ。


折れた刀身が舞い上がり、頭領は後方に吹き飛んだ。


死んではいない。


頭領は公都へ連れて行くからだ。


右手ではセレスによる最後の爆炎が上がっていた。


レイからの念話が入る。


『殲滅完了っす!お疲れ様っす。』


「あぁ、レイもお疲れ様。頭領は俺が確保した。戻るとしようか。」


この日、一大勢力を誇った大盗賊団【暴食の虎】は、構成員がたった四人の傭兵団によって崩壊させられた。

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