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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第六章  ミュートラル公国
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第四話  暴食の虎

「いやぁそれにしても本当に助かりました!貴殿方にお会いできなかったと思うと………」


「本当だぜ!傭兵なんざマトモな奴はいないと思ってたが、改めねぇとな!」


現在、俺達は助けた商人達と共に公都を目指している。


俺達が傭兵と知って、助けてくれた礼として入門税を払ってくれるそうだ。


俺達が走るよりも遥かに遅いが、それでも今日中には着くだろうという事で、同行する事にした。


冒険者の男達も気の良い奴らで安心した。


ちなみに、生かしておいた盗賊二人は縛って馬車に転がしている。


「それにしてもこれほど街に近い所に盗賊が現れるとは…………油断しておりましたな。」


商人が顔をしかめて唸っている。


「やはり珍しい事なのか?」


「はい、通常は街と街の中間地点などに多く潜んでおります。あまり街に近いと、騎士達の討伐の対象となりますので。」


「遠ければ討伐されないのか?」


「そう言う訳ではございませんが、領地と領地の間に隠れられると、どちらの領地が討伐に当たるかで揉める事が多く、結果として討伐が長引き、その間に被害が出てしまうのです。」


「どうしてそんな事で揉めるんだ?とっとと兵を出して討伐すれば良いじゃないか。」


「領主様は基本的に出兵したがる事はございません。一度の遠征にかかる費用を考えると、どうしても保守的になるのです。それに、討伐に成功した際には領民からの名声も高まりますが、もし隣の領地に逃がしでもすれば、『討伐に失敗した挙げ句に隣の領地に被害を被らせた』という汚名を被る事になりかねません。」


「なるほどな………リスクを考えると、そう簡単に兵を遣わす事はできないのか。貴族ってのは外聞や体裁に煩いからな。」


俺の言葉に商人は苦笑気味だ。


「その反面、街の近くだとすぐさま討伐しようとするのですよ。」


「リスクが少ない上に得るものが大きいからな。」


街に近いという事は、それだけ領民にとって危機が迫っているという事だ。


それを討伐したとなれば、領主の得るものは大きいだろう。


名声とか名声とか名声とか、あと名声とか。


「そう言う事ですな。だからこそ、こんな街の近く………それも国の中心である公都の近くに盗賊が現れるなど、普通ではありません。」


「そうだよなぁ………」


……………ふむ、何やら無性に気になるな。


「よし、聞いてみるか。」


「はて、聞いてみる?」


商人が不思議そうに首を捻っている。


「本人達に聞いてみるのさ。その為に生かしておいたんだ。」


「しかし、そう簡単に喋りますかな?私が雇った冒険者達はCランクの方々です。それを数で勝っていたとは言え、あと一歩のところまで追い込んだのですよ。恐らく盗賊とは言っても成り立てのゴロツキではありません。」


それだけ胆が据わっているという事か。


だとしても問題ない。


「大丈夫さ。こっちにはこっちのやり方がある。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



公都を眼前に控えた最後の休憩。


本来なら必要なかったのだろうが、無理を言って休憩を取らせてもらった。


もちろん休む為ではない。


盗賊達を尋問する為だ。


街に行って兵士に引き渡したら、もうこちらでは手を付けられないからな。


俺は縛っている盗賊の一人を抱えて、少し離れた所へ行く。


そして盗賊の口に被せていた布を取った。


「今から俺が言う事を良く聞け、さもなくばお前にとって良くない事が起きる。」


「誰がてめぇの言う事なんか聞くか!」


口を開いて早々に逆らう盗賊。


俺は盗賊の小指を握って、外側に捻り折った。


「うぎっ……あ……ぐっ…………て、てめぇ………」


痛みに呻きながら睨み付けてくる。


今度は反対の小指を折った。


絶叫を上げる盗賊。


またもや睨み付けてくるが、そこには恐怖が刻まれているように見える(・・・・・・)


「て、てめぇ………この悪魔め………」


「そんな事を言われたら悲しくて余計に力が入ってしまうな。今度はもぎ取ってしまいそうだ。」


無感情に淡々と述べ、薬指を握った。


「ま、待て!やめてくれ!」


盗賊は怯えた様子(・・)で逃げようとする。


「さて、もう一度だけ言うぞ。俺の言う事を良く聞け。さもなくば………」


「わ、わかった!わかったから!!だからやめてくれ!!」


盗賊は慌てた様子(・・)で何度も頷く。


俺は静止の声を無視して、盗賊の薬指を捻り取った。


響き渡る絶叫。


悲痛な叫びを上げながら、盗賊は驚愕の眼でこちらを見てきた。


「どうして俺が指を取ったのか、わかっていないようだな。一つだけ言っておく。俺に嘘は通用しない。お前が怯えた振りをして、適当な事を抜かそうとしたのは知っている。………さて、どうしてくれようか。」


盗賊は今度こそ本当に怯えた顔をした。


身体を震わせて後ずさろうと踠く。


俺は男を再度抱えて、戻りながらこう言った。


「安心しろ。今お前にした事をもう一人の奴にもする。あいつが喋らなければ、もう一度お前に機会(チャンス)をやろう。だが、もしあいつが喋ったのなら、お前はもう不要となる。その時は、俺の玩具にでもなってもらおうか。」


男の震えが一段と強くなる。


もちろん俺にはそんな趣味はないが、この男は今こう思っている事だろう。


ーーーこの男ならやりかねない。


俺は馬車に戻り、縛られている盗賊の横に抱えていたそいつを転ばせた。


もう一人の盗賊は仲間の怯えた姿を見て目を剥いた。


「さて、次はお前だ。話を聞かせて貰うぞ。」


そう言って、盗賊を抱えて先程の場所へ戻って行った。


結果、こちらの男は前の男程には胆が据わっていなかったようで、三本折ったところで俺の質問に全て答えるようになった。


この男も馬車に転ばせて、商人達の元へ戻る。


セレス達が出迎えてくれた。


「おかえりなさいませご主人様。お疲れ様でした。」


「あぁ、無事に情報を確保できたよ。」


「そういうのは自分に任せてくれれば良いっすのに。」


レイが若干不満そうな顔で愚痴る。


「何だレイ、ご主人様のお決めになった事に文句でもあるのか?」


サリスが鋭く目を光らせてレイを見る。


「い、いや、そんなんじゃないっすよ!!だからその剣を納めて下さいっす!!」


レイが慌てて弁明した。


「まぁ落ち着けサリス。それとレイ、今回は別にお前に任せたくなかった訳じゃないぞ。一度くらい、俺もこういうの(・・・・・)を経験しておくべきだと思ったんだ。」


この世界は平和とは言い難い。


いつどんな敵が現れるとも限らない。


街の中で平穏に暮らすのなら良いかもしれないが、傭兵として世界中を旅するのなら、清らかなだけではいけないと思ったんだ。


「そ、そういう事だったんすか………自分こそ愚痴ったりして申し訳ないっす。」


「大丈夫だ、気にするな。………それより、あの盗賊に関してなんだがーーー」


ここで、あの盗賊から手に入れた情報を共有する事にした。




・あいつらは【暴食の虎】という盗賊団の一員らしい。


・【暴食の虎】は各地を転々としながら勢力を増やした盗賊団で、今やその数は三千を越える一大勢力となっている。


・彼らに餌にされた村や商隊の数は両手でも足りない。


・現在【暴食の虎】の拠点は公都から馬車で一週間程西へ行ったところにあり、小さな集団に別れて各々その場所に隠れて集まり、秘密裏に拠点を作った為未だ公都にもバレていないらしい。


・一週間後に公都へ直接踏み入る予定だそうだ。


・三千人で公都に踏み入っても制圧されて終わりじゃないかとも思ったが、それは盗賊幹部の命令であり、あの盗賊達はその後の事は何も知らなかった。




「ーーーという事なんだが。」


「公都へ総攻撃……ですか。」


「何やらキナ臭いですね。」


「自分も凄い嫌な予感がするっす。」


三人とも訝しむ様子を見せている。


「だよなぁ……………レイ、分身を三体ほど作って、盗賊の拠点へ向かわせてくれ。もちろん姿は隠したままな。」


「了解っす!」


「セレス、サリス、場合によっては拠点に踏み込んで殲滅する事になる。それだけの勢力を誇る盗賊団だ。さぞかし貯め込んでいる事だろうさ。」


俺はニヤリと笑みを浮かべた。


「畏まりました!」


「ご主人様のご命令とあらば。」


二人もやる気は満々だ。


「だがまぁ、とりあえずは公都へ向かおうか。話はそれからだな。」


休憩を終わらせて公都へ向かうべく、俺は商人達の方へ歩き出した。

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