表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第六章  ミュートラル公国
50/83

第三話  盗賊

翌日、朝早くからギルドへ向かった俺達は、職員に昨日と同じ部屋へ通された。


扉を開けて部屋へ入ると、正面の机で何かの書類を書いていたウィーグが顔を上げた。


「おぉ、お前らか。随分と早い時間に来たんだな?」


「なるべく早くここを出ようかと思ってな。」


「何だ、じゃあ今日にでも出ていくのか?もうちっとゆっくりしていきゃ良いじゃねぇか。」


「話し合ったんだが、どうせなら公都でゆっくりしようって事になったんだ。」


この街は城塞都市だから、あまり楽しむものはないからな。


「そうか……まぁ止めはしねぇけどよ。…………ほれ、昨日のうちに書いといたぜ。」


そう言って封筒を渡してきた。


盾と剣が重なったギルドの紋章で封がしてある。


これが推薦状か。


「それを公都のギルドマスターに見せてみな。そっから先はお前ら次第だ。」


「感謝するよウィーグ。その内また顔を出しに来るぜ。」


「おう、お前らの名がここまで届くのを期待してるぜ!」


ウィーグと握手を交わして、ギルドを後にした。


ちょっとしか接する事はなかったが、ウィーグの人の良さが良くわかった気がする。


またいつか必ず来よう。


そう思った。


ギルドを出た俺達は、そのまま門に向かい、街を出て公都に足を向けた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「どうだレイ、分身の調子は?」


「今のところ何の問題もないっすね。既に何人かは近くの街に入ってるっすよ。」


「………やっぱりその能力は反則だな。」


ウィーグに別れを告げて、今日で一週間になる。


途中で街を一つ通ったが、語る程の特色もなく、一日で出てしまった。


レイの分身は現在四十体作っている。


おまけに変化の力でそれぞれ別の姿をとらせている。


どうしてそんな事をしているのかと言うと、四ヵ国に十体ずつ向かわせて、国の中枢都市を中心に様々な情報を集める為だ。


四十体も作れるとは思っていなかったが、レイとしてはまだ余裕があるらしい。


その分、分身体の戦闘能力は低くなっているが。


「公都まではあとどれくらいで着きそうなんだ?」


「このペースだとあと一週間ってところっすかねぇ。走れば今日中にでも着くっすよ?」


歩いて一週間なのに走ったら一日なのか。


それも俺達の身体能力をもってすれば、という話だな。


「歩いて行くのも旅の醍醐味だろ。…………まぁ、飽きたら走るか。」


「そうっすね。」


「旅と言えば馬車ですよね!お金が貯まったら馬車を買いませんかご主人様?」


「馬車か………急ぎたい時はどうするんだ?」


「えっと、ご主人様が収納なさる……とか?」


「馬車は良くても馬は収納できないぞ。」


「あ、そうでした………。」


セレスが若干落ち込んでいる。


そんなに馬車に乗りたいのだろうか。


「姉さんは動物が好きなんですよ。たぶん、馬の世話とかしたかったんじゃないですか?」


サリスが俺に近寄って耳打ちしてきた。


「そう言えばそんな事も言ってたな。しかし馬かぁ…………いざという時、俺達が走った方が速いからな………。」


「確かにそうですね。いっそのことドラゴンでも飼いますか?」


「えっ、どうやって?」


「野生のドラゴンを捕まえて調教するのです。ご主人様ならば可能なのでは?」


「………それは普通にある事なのか?」


「まさか、最上級の魔物であるドラゴンを倒す事さえ人間にとっては不可能と言えるのに、捕まえる事などできる訳がないではないですか。」


「だろうと思ったよ。その案は却下だ。そもそも、調教とかして仲間にするのは俺の趣味じゃない。」


「それもそうですね、出過ぎた真似を致しました。」


「さっきから何をお話してるんですか二人とも?」


「そうっすよ、自分達を除け者にしないで欲しいっす。」


こそこそと話していた俺とサリスに、セレスとレイが抗議をしてきた。


「あぁいや、何でもない、気にするな。それよりもやはり少し急ごうか。なるべく早く公都に着きたいし。」


慌てて話を逸らした。


三人の了承を得て、俺達は軽く走り出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



公都まで残り少し、といったところで緊急事態が起きた。


「ーーーん?………旦那、何か先の方で騒動があってるみたいっす。」


「騒動?具体的には?」


走りながらレイに聞く。


「えーっと…………これは、盗賊っすね。誰かが盗賊に襲われてるみたいっす。数は15っすね。」


盗賊か………。


ここまでの道程では偶々出くわさなかったが、この世界で盗賊というのは決して珍しくはない。


税を払えなくなった農民や街から逃げ出した罪人、食うのに困った者達など、盗賊になる人間は後を絶たないのだ。


盗賊を殺して、そいつらが溜め込んでいる宝物(ほうもつ)なんかを手に入れる事を、盗賊狩りと言ったりする。


今後傭兵として暮らすなら、ただ魔物ばかり相手するのではなく、盗賊狩りをするのも悪くないなと考えていた。


今回の件は良い機会かもしれない。


「よし、助けに行くぞ。」


「畏まりました!」


「お供致します。」


「了解っす!!」


三人の返事を受け、俺達は速度を上げた。


やがて見えてきた。


真ん中にあるのは馬車。


馬車には商人と思われる人間が乗っている。


それを囲むように冒険者らしき三人の男達が、更にそれを囲むように、十五人の盗賊達がいた。


冒険者は何とか応戦しているが、その数に圧されて劣勢気味だ。


俺はそこに近付き、冒険者に向けて声を上げた。


「そこの三人!加勢する!!」


冒険者は一瞬こちらを見たが、すぐに正面に警戒を戻した。


盗賊達は急な乱入者に反応し、リーダー格の男の命令で五人がこちらに向かってきた。


「愚かな………燃え散りなさい。」


向かってきた盗賊達を、セレスが一瞬で燃やし尽くした。


その刹那の出来事に、冒険者も盗賊も唖然としている。


それを無視して俺とサリスが高速で走り寄り、盗賊達を瞬殺して回った。


初めての殺人だが、特に何も感じなかった。


これも魔物になった影響だろうか。


それとも自我のある屍霊を殺した経験があったからだろうか。


答えはわからなかった。


念の為、盗賊を二人生かしておいた。


あっという間に盗賊達を片付けた俺達に、冒険者は何も言えずに驚愕していた。


しかし、やがて正気に戻っておそるおそる口を開いた。


「あ、あんた達は……一体………?」


「俺達は傭兵だ。お前達を、助けに来たんだ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ