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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第六章  ミュートラル公国
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第一話  外の世界

ブックマークが500件に達しました。


皆さんありがとうございます!!

転移陣に踏み込んだ俺達を、淡い光が包み込んだ。


その眩しさに思わず目を閉じていると、周りの空気が一変するのを感じた。


最初に感じたのは風だった。


身体を優しく撫でていく柔らかな風。


それと同時に懐かしい空気の香りが漂ってくる。


ゆっくりと目を上げると、澄んだ青空が一面に広がっていた。


久し振りに見える陽の光。


幾つかの真っ白な雲が優雅に泳いでいる。


俺はその光景を見て、思わず涙を流していた。


ーーーやっと、やっと外に出たんだ。


見慣れていたはずの空が、太陽が、風が、こんなにも素晴らしく美しいものだとは思ってもみなかった。


暫く空を見上げて感慨に浸る。


やがて涙を拭って徐に後ろを振り返ると、俺と同じく涙を流す三人がいた。


セレスは両手で顔を覆ってしゃがみこんでいる。


サリスは無言で太陽を見上げている。


レイは片手で目元を押さえながら空を仰いでいた。


俺よりずっと長くあの地獄に囚われていた三人だ。


その感慨も一際大きいのだろう。


俺は何も言わずに三人が満足するまで待ち続けた。


やがて一人、また一人と涙を拭う。


最後に涙を拭ったのはレイだった。


三人の中でも最も古い時代に生きたレイだ。


外の世界への渇望も、最も大きかったと言える。


「すみません旦那、お待たせしたっす。」


そう言ってポリポリと後ろ頭を掻くレイは、少し気恥ずかしそうだ。


「気にするなよ。気持ちはわかるさ。」


「はい、ありがとうございますっす。」


「あぁ………それじゃ、ここでゆっくりするのも悪くないが、予定通り公国へ向かおうか。」


「はい、ご主人様!」


「お供致します。」


「行きましょう旦那!!」


いざ、ミュートラル公国へ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お、旦那!もうすぐで最初の街に入るみたいっすよ!!」


レイがワクワクしたような声を上げる。


ダンジョンを脱出して三日、俺達はレイの案内で公国を目指していた。


何故レイが案内できるのかと言うと、予め分身を作って公国へ進めさせていたからだ。


そのお陰で道に迷う事なく、また俺達が食事も睡眠も必要ない事もあって、本来なら一週間以上かかる道程を三日で踏破する事ができたのだ。


ちなみに、道中の魔物は交代しながら倒して進んだ。


中級の魔物も幾らか現れたのだが、亜神率いる最上級魔物のパーティーに抗えるはずもなく、全て瞬殺して回った。


そして遂に、俺達は公国の街へと着いたのであった。


規模としてはそこそこ大きいと思う。


ホライズ教国と接する地の街だからだろうか、砦としての役割も持っているようだ。


門から入ろうとすると税を取られてしまう。


さてどうしようかと話し合ったところ、門を飛び越えてしまおうという事に決まった。


………金がないのだから仕方ないだろう。


外壁をぐるりと回ってレイに指定された位置につく。


先に透明になって上に行ったレイの合図を受けて、俺達は壁を走り出した。


間違ってはいない。


壁を走ったのだ。


俺達の身体能力をもってすれば余裕で可能だった。


という事で無事街に入る事が(侵入)できた俺達は、何をするにも金が必要だという事で、冒険者ギルドへ向かった。


既にレイが何人もの分身を作って街を廻らせている。


レイ本体は、街中で黒装束では逆に目立つだろうとの事で、見た目を変化させている。


変化の内容はレイに任せたのだが、何故かレイは赤地に白い南国の花が描かれたアロハシャツを着る金髪グラサンの男に変化した。


アロハシャツの下は何も着ず、ボタンは全開にして神製の黒いチョーカーを着けている。


オマケにしたカーキの短いワークパンツとビーチサンダルだ。


口調と相まってチンピラ臭が半端ない。


何故そんな姿なのかと聞くと「変化した時くらい派手にいきたいっす!!」との事だ。


もう何も言わない事にした。


道は人に聞かずともわかっていた。


ギルドへ行くのは、道中で倒した魔物を売る為だ。


魔物は全て俺が収納していた。


「旦那、ここが冒険者ギルドっすよ。」


案内された建物は、思っていたより立派なものだった。


俺が先頭に立って扉を開ける。


中には想像通りのギルド感満載の光景が広がっていた。


受付に佇む可愛い受付嬢達。


付属の酒場で昼間から酒を飲んでいる冒険者達。


入ってきた俺達を、訝しげに見詰めてくる。


そのあまりのテンプレ感に、俺は目を輝かせていた。


「ご主人様、ここにいては扉を塞いでしまいます。」


「おっと、そうだったな。受付へ行こうか。」


そう言って受付へ進む。


「いらっしゃいませ。本日は何のご用でしょうか?」


「討伐した魔物を売りたいんだが、解体していなくても大丈夫なのか?」


「解体量を差し引いても宜しいのであれば、こちらで解体する事は可能です。冒険者証はお持ちですか?」


「いや、俺達は冒険者じゃない。」


そう言うと、周りの冒険者からの視線が強くなったような気がした。


「えっと、傭兵の方でしょうか?」


「あぁそうだ。」


受付嬢が不審な者を見るような目線を向けてくる。


傭兵とは、冒険者ギルドに登録せずに魔物を討伐し、その素材を売って生計を立てる者の事だ。


ギルドに登録しないのには、何か後ろめたい事情がある、というのが一般的な見解だった。


その為、傭兵は冒険者からあまり良く見られていないのだ。


ちなみに、雇い主もいないのに何故傭兵と呼ぶのかというと、「ギルドに雇われる冒険者」に対し、「自らに雇われる私兵」と皮肉られた事が由来らしい。


その時、後ろから声をかけてくる者がいた。


「おい、お前さん傭兵っつったか?」


振り返ると、ガタイの良い男がいた。


「あぁ、そうだが?」


「ここはてめぇらみてぇな奴らが来る所じゃねぇよ。消えろ。」


「ほう、いつから冒険者ギルドは傭兵の立ち入りを禁止したんだ?」


「つべこべ言わずに消えろって言ってんだ。出て行かねぇってんなら、俺がてめぇをーーー」


男の言葉は最後まで続かなかった。


サリスが男の頭を鷲掴みにして、床に叩き付けたからだ。


周りの冒険者はサリスの動きを欠片も察知する事ができず、その状況に驚愕した。


「貴様はいきなり何なんだ?ご主人様を侮辱するとは、万死に値する。」


男は既に意識を失っているが、サリスは頭を掴む手に力を込めようとする。


このままでは男の頭は潰れ、あまり宜しくない光景が広がる事だろう。


「止めろサリス。殺す事はない。」


そう言うと、サリスは手を引いて立ち上がった。


「畏まりました、ご主人様。」


「あぁ………それで、ギルドは傭兵の立ち入りを禁止しているのか?」


受付嬢は唖然としていたが、俺に話しかけられてはっとした顔をした。


「い、いえ!そのような事はございません!!」


「なら良い。素材を売りたいんだがーーー」


俺が喋り始めたその時、またもや邪魔が入った。


「おい、一体どうしたんだ?」


奥の階段から降りてきたのは、これまたガタイの良い男。


だが、纏う雰囲気は先程の男の比ではない。


「ギ、ギルドマスター………いえ、その、えっと………」


受付嬢は何やら慌てているようだ。


「どうした、また喧嘩でも起きたのか?中では止めろっつってんのになぁ………。んで、今回はどいつが…………あん?誰だそいつら?」


男はやっと俺達に気付いたようだ。


こちらを見て怪訝そうな顔をした後、やがて驚きの表情を浮かべた。


おそらく、俺達の実力を多少なりとも読めたのだろう。


「おいおい、Sランクの冒険者でも来たのかと思ったぜ。お前らは?」


そう言って話しかけてきた。


「俺の名はネクロ。こいつらは俺の従者だ。俺達は傭兵さ。」


「傭兵だぁ?お前達みたいな奴らが何で傭兵なんざやってるんだ?」


「ギルドでランクが上がったりしたら指名依頼とかあるんだろう?俺達は縛られるのが嫌いなんだ。」


そう、それが俺がギルドへ入らない理由。


ギルドのランクはFからAまであり、その更に上にSがある。


実力とギルドからの信頼が一定を越えるとランクが上がり、Cランクになると指名依頼が入る事もある。


指名依頼は通常の依頼よりも報酬が高い代わりに、断る事ができないのだ。


また、ランクが高くなって様々な柵が増える事を危惧した為、冒険者ではなく傭兵として旅をする事にしたのだ。


「あぁ………まぁ、そういう奴らは確かに一定数いるがな。」


ギルドマスターと呼ばれた男は頭を掻きながらそう言った。


「傭兵でも素材の買い取りはしてくれるんだろ?」


「おう、そりゃ勿論だ。だがその前に、俺の部屋に来てくれ。お前達に話を聞きたい。」


そう言って背を向けて歩き出すギルドマスター。


俺達は顔を見合わせたが、仕方なく付いていった。

ネクロ「そう言えばすっかり忘れていたけど、この世界って数年前から魔物が増加&凶暴化してるんだよな?」


スィーリア「そうみたいね。それがどうかしたの?」


ネクロ「いや、元はと言えば魔物から王国を守る為に召喚されたんだったなって思い出してな。スィーリアは理由を知っているのか?」


スィーリア「もちろん知っているわよ。教えないけれど。」


ネクロ「何でだよ?教えてくれても良いじゃないか。」


スィーリア「流石にそこまで下界の事に干渉する訳にはいかないのよ。亜神であるネクロ君にだって、あまり情報を与える事はできないの。だから今までも大した事は教えていないはずよ。」


ネクロ「あぁ、まぁそう言えばちょっとした知識とか常識くらいしか教えてもらった事ないな。」


スィーリア「でしょう?もし魔物が増えている理由を知りたいのなら、自分で何とかしてみなさい。」


ネクロ「わかったよ。………って事でレイ、後は頼んだぞ。」


レイ「やっぱり自分なんすね。急に呼びつけたと思ったらそれっすか。人使い荒いっすよ旦那………。」


ネクロ「嫌なら調べなくて良いけど。」


サリス「ほう?レイ、貴様はご主人様のご命令を聞きたくないと、そう言うのか?」


レイ「全力で頑張らせていただくっす!!」

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