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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第五章  残された者達
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閑話   スィーリア

(ワタシ)が彼の前に現れたのは、単なる気紛れだった。


邪を司る者としてこの世界に生まれた(邪神)は、あらゆる生物の邪心を覗く事ができる。


気の遠くなるような永い時を、あらゆる邪心と共に生きてきた私だけれど、それで精神が崩壊するとかそういった事はないの。


何故なら神だから。


しかし、崩壊しないからと言って全く影響が無い訳ではないのよ。


神である私だって疲れる事くらいあるわ。


そういう時は楽しそうな人間の生活を見て心を落ち着かせるの。


人間の文化って興味深いわよね。


特に人間の作った美味しそうな料理なんて見ると、思わず頬が緩んでしまう。


私に食欲なんてものはないのだけどね。


だからその日も、適当に下界に目を通していたの。


そこで彼を見つけた。


商人に扮した邪心に満ちた男達に連行されていたその男の子は、身体中がボロボロで今にも死にそうだったわ。


その子の心も邪心に染まりつつあった。


あれは怒りだったわね。


それと復讐心。


その二つが彼の心をグルグルと渦巻いていた。


血のように赤黒いものが心を占領しようとしているのに、何か(・・)がそれを邪魔していたの。


キラキラしていてとっても綺麗だった。


好奇心………のような何か。


それと生きる意志。


とっても強い意志だったわ。


これらが心に疼く邪心を防いでいた。


私は気になったの。


何がそこまで彼の心を掻き立てるのか。


あのキラキラしたものの正体を、私は知りたかった。


だから死んだ彼の魂を神域へ呼び出した。


身体を呼ぶ事はできないから、彼が死んでからしか呼べなかったの。


そして、彼の魂が神域に入った事で、神の力を直接つかう事ができたわ。


その力で彼の情報、記憶を読み取ったの。


そこで知ったのよ。


彼の属性が術式によって封印されている事。


罠に嵌められて死んだ事。


その相手への復讐を望んでいる事。


彼には属性の事で気になったから呼び出した、なんて言ったけれど、実は単なる気紛れだったって事よ。


でもそのお陰で彼に会えたのだから、悪くはなかったのでしょうね。


話を戻すわね。


私は神の力によって彼の情報を読み取ったのだけれど、それでもあのキラキラしたものが何なのかはわからなかった。


おそらく、余程彼の心に深く結び付いていたのでしょうね。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



彼、ネクロ君は少し変わっているけれど、とても面白い子だったわ。


まさかあのキラキラしたものが『異世界に対する憧れ』だとは思わなかったけれど。


そんなものであんなドロドロした邪心に対抗した事に驚いたけれど、それだけネクロ君にとって大切なものだという事よね。


ネクロ君に祝福を与えようと決心したのは、ネクロ君が『生きてしたい事』を聞いたからね。


邪心に満ちた人間でも、たった一つの強い希望さえあれば、邪な人間にはならないのではないか、と期待したの。


少なくともそんな人間は見た事がなかったわ。


邪心を持っていれば、結局は邪な行動をする。


それは至極当然の事。


だから見てみたくなったの。


魂に結び付いた強い希望が、ドロドロの邪心に抗う事ができるという可能性を。


…………まぁ、その為に私のファーストキスを捧げたのは形式上仕方ないのだけれど。


やはり恥ずかしさは拭えなかったわね。


寵愛というのは一種の婚約のようなものなのよ。


神の大いなる恩恵を与える代わりに、祝福を受けた者は死後神の元へ召され、永遠に傍に侍る事となる。


つまり、ネクロ君はもう私の夫となる事を約束された存在なの。


これを教えたらどんな反応をするのかしら。


嫌がらないと良いけれど………。


ネクロ君のキラキラとした心に惹かれたのは否めないわね。


邪心に埋もれてきた私にとって抗えない魅力を放っていたもの。


……………誘蛾灯に集る羽虫って言ったの誰よ、出てきなさい。


とは言っても、それはほんのきっかけにすぎなかった。


ネクロ君は面白い子だったし、傍にこんな子がいたら楽しいかも、なんて軽い気持ちで祝福を与えたわ。


それからネクロ君の頑張る姿をずっと見て、ネクロ君と話している内に、少しずつネクロ君に惹かれていった。


けれどそれは恋愛感情なんかではなかったわ。


生徒の成長を喜ぶ教師………のようなものだったと思う。


人間と神との間には、それほどの差があるの。


それが一変したのは、やはりあの時かしら。


決闘裁判に勝利したネクロ君は、魔物という枠組みを越えて亜神になった。


亜神への進化というのは、通常の進化とは違うの。


存在そのものが作り変えられるような大規模なものだから、その間の身体は仮死状態になるの。


だからネクロ君を神域へ呼ぶ事ができた。


神域へ来たネクロ君を見た時には、心が高鳴ってしまったわ。


まるで卒業した生徒が訪ねてきてくれたら、凄いイケメンになっていた………という感じ。


見た目はそんなに変わっている訳ではないけれど、元々神は人間の見た目なんて大して見ないから関係ないわね。


私が驚いたのはその心、そして存在そのもの。


キラキラとした希望は更に大きくなっていの。


やっと外に出られるという事で、旅をしたい気持ちが強くなっていたのでしょうね。


そして、ネクロ君の存在が亜神となった事で、何と言うか…………近くなったの。


今まではネクロ君は結局は魔物(人間)だったから、決して好きになる事はなかった。


けれどネクロ君が亜神となって、存在の格が近くなった事で、仲の良かった幼馴染みを急に異性として意識し始めたような………そんな感覚を味わったわ。


それに加えてあの言葉。


ーーーこれでお別れなんて嫌なんだよ。


落ちたわ。えぇ落ちたわよ。


チョロインで悪かったわね。


突然現れた超イケメンの元教え子や、急に異性として意識し始めた幼馴染みなんかにあんな事を言われたら、女なら誰だってやられるわ。


私は決めたの。


ネクロ君は必ず私の(もの)にする。


私は追いかける事はできないけれど、彼がいつの日か死を迎えた時は、私の元へ来てくれると決まっているもの。


…………屍霊型の魔物や亜神に寿命はないけれど、だからと言って不滅じゃない。


生命力が無くなれば…………亜神となったネクロ君に勝てる存在がいるとは思えないわね。


いつか世界が寿命を迎えた時には、流石にネクロ君も消える事になるわね。


その時は私の夫になってもらいましょう。


そして天の神と地の神に頼んで、また世界を作ってもらうの。


そこをネクロ君と二人で見守る。


そんな未来を想像しながら、今日も私は陰ながらネクロ君を応援する。


ネクロ君………私、絶対に離さないからね。

この章だけで六人のハーレム確定………。


セレスとサリスを入れると八人………。


まだ旅すらしてないのに。


ネクロ君爆発しろ。

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