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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第五章  残された者達
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第一話  白峰春香

(わたし)白峰(しろみね)春香(はるか)は幼馴染みの少年に恋をしている。


眉目秀麗で文武両道、誰にでも優しくて明るい、頼れるリーダー青島秋人……………ではない。


私が好きなのは、容姿普通(ただし目は腐ってる)で成績優秀でインドア派、誰にでも優しいが少し元気が足りない、ゲームヲタクの富士崎根黒君なのだ。


彼と初めて出会ったのは、小学三年生の頃だった。


誰とでも仲良くなりたかった私は、三年生で同じクラスになった真冬ちゃんに話し掛けたんだ。


真冬ちゃんはいつも一人だったから、私だけでも友達になってあげたかった。


今思うと、凄く傲慢な感情だよね。


それに、真冬ちゃんは別に一人でいる事を苦にしていなかったんだ。


でも、その時の私はとにかく仲良くなりたくて、真冬ちゃんを追いかけ回していた。


最初は真冬ちゃんの素っ気ない反応に落ち込んでいたけど、いつだったか真冬ちゃんはこれが普通なんだって事に気付いたの。


それからは更に仲良くなれた気がした。


でも小学生ってそういう人間関係に意外と敏感で。


それまで私が仲良くしていた女の子達は、私が真冬ちゃんにべったりしてるのが気に入らなかったらしい。


私の知らない所で真冬ちゃんを虐めてたの。


それが段々エスカレートして、私の知るところになった。


私が止めようとすると、虐めっ子達は「この子と仲良くするか私達と仲良くするか、選んでよ!!」と言い出した。


今まで仲良かったはずの子達が虐めなんてしているのを知って怒っていた私は、「私は真冬ちゃんの友達だもん!!」と言い放ってしまった。


それからは虐めの日々だった。


真冬ちゃんと一緒に、私まで虐めの標的にされたのだ。


やがて春と夏が終わって秋が来た。


虐められる事に慣れつつ、そんな自分が嫌だった。


ある日、校舎裏で誰かと話している真冬ちゃんを見かけた。


私は真冬ちゃんが虐められてると思って慌てて走って行って割り込んだんだ。


そこにいたのが、真冬ちゃんの幼馴染みだと紹介された、根黒君だった。


根黒君は真冬ちゃんに問い詰めていた。


クラスメイトに虐められているんじゃないの、最近様子がおかしいよって。


真冬ちゃんは巻き込みたくなくて黙っていたみたいだけれど、私はこれで真冬ちゃんが救われる可能性があるならって、根黒君に全てを話したの。


話を聞き終わった根黒君は「そっか。」とだけ言って去って行った。


私はその反応に困惑して、そして怒った。


幼馴染みが虐められてるのに何だそれはーって。


でも真冬ちゃんは私に怒ってた。


どうして根黒に話したのって。


こんな事を知って、根黒がただで済ませるはずがないって。


私はその話を冗談だと思って聞いていたが、数週間後、その言葉の意味を悟った。


何と根黒君は、私達が虐められている際の映像や周りの人の情報などを集めて、教師に提出したの。


そして言った言葉が「速やかに対処して下さい。さもなければこの証拠を教育委員会へ提出します。」だった。


もちろん教師陣は大慌て。


見て見ぬ振りをしていた一部の教師は、最初はどうせ子どものイタズラだとでも思っていたようだが、根黒君が提出した資料の精密さを見て態度を一変させていた。


今ならわかる。


きっとこれが根黒君の本質なんだ。


いつも怠けていて、頼り無さそうに見えるけど、いざという時は誰よりも行動力があって、そして狡猾で執拗な人。


それを怖いと思う反面、幼心に憧れたのを覚えている。


その憧憬が恋心に変わったのは、中学一年生の頃。


中学生に上がって皆が異性を意識するようになった。


自分で言うのもなんだけど、私は色んな男の子から言い寄られるようになったの。


虐めの一件から真冬ちゃんと根黒君と一緒にいるようになり、五年生の頃に秋人君が入ってきた。


私はその三人とずっと一緒にいたいのに、皆を無下に扱う訳にもいかず、不満は募る一方だった。


そんなある日、いつものように男の子に告白されて断ったら、その男の子が逆上して襲いかかってきたの。


ちょっと危険な男の子だという事で、真冬ちゃん達から行かないように忠告されながらも、想いを無下にはできないと考えて来てしまった私が馬鹿だった。


中学校の体育館裏は校舎からかなり離れているし、その日はテスト前でどこの部活も休みだった。


放課後の体育館裏に助けなんて普通は来ない。


恐怖に身をすくませる私を助けてくれたのは、根黒君…………が呼んだ体育の先生だった。


忠告を無視して体育館裏に行く私を見た根黒君が、体育終わりに体育倉庫に忘れ物をしたとかなんとか嘘をついて、先生を連れてきていたの。


そこで先生を頼るところが根黒君らしくて、逆に嬉しかったんだ。


その男の子は先生が取り押さえて、結局転校する事になった。


後日、お礼をしに根黒君の家に行って、久し振りに二人で話してた。


その時に聞いたの。


「根黒君は好きな人とかいないの?」って。


そしたら「僕が好きなのはゲームだけ。」って言われちゃった。


何だかおかしくて、いっぱい笑った。


根黒君は変わらないんだなって思ったの。


周りの皆が変わっても、根黒君は変わらないって。


それが何故か嬉しかった。


でもちょっとだけ意地悪してみたくなったの。


だから「なら私の事は好きじゃないの?」って聞いたら、首を傾げて「好きだよ?」って普通に言ったの。


もちろん私の言葉は冗談だったし、根黒君はたぶん友達としてーとかそういう意味で言ったんだと思う。


けど私は密かに憧れていた男の子のストレートな言葉に、思わず心が高鳴るのを感じた。


それがきっかけ。


後はもう止められなかった。


気付いた時には目で追ってた。


気付いた時には良いところばかり見つけてた。


たぶん、恋ってそういうものだと思う。


真冬ちゃんも根黒君が好きな事は知っていたけど、だからと言って諦められる時期は、いつの間にか過ぎてしまっていた。


親友の恋敵になってでも一緒にいたいって。


そう思うくらいに好きになった。


だからこそ悲しかった。


こんなにも好きになった根黒君が、高校生になって私達を避けるようになった事が。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



事情は今でもわからない。


どうして根黒君が私達を避けていたのか。


どうして根黒君が傷付いていたのか。


どうして根黒君が……………私の想いを聞いてくれなかったのか。


あの時は悲しくて悲しくて、つい逃げてしまったけれど、もしかしたら何か事情があったんじゃないかって、今ではそう思う。


真冬ちゃんと秋人君に聞いても答えてくれなかった。


二人とも「それは根黒本人から聞くべき事だから。」って。


二人共、私と同じように根黒君の無事を信じている。


あの宰相は「フジサキ殿は現状に耐えられずに脱走致しました。」などと言ったが、そんなものはこれっぽっちも信じなかった。


根黒君はそんなに弱い人じゃないもの。


きっとあの人が何かしたんだ。


でも大丈夫。


きっと根黒君は帰ってくる。


そう私は信じている。


いつか彼が帰ってくる事を。


いつか、私の想いを聞いてくれる事を。


けれど、ただ待っているだけなんて私には耐えられない。


だからこっちから迎えに行くの。


絶対に諦めないんだから。


待っててね、根黒君。

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