第十六話 脱出
サリスのステータスを一部変更致しました。
ご了承下さい。
すっかり慣れてしまった長い眠りからの目覚め。
いつも通りの水面から浮き上がるような感覚と共に、五感が働き出すのを感じた。
ゆっくりと目を開ける。
そこには、三人の人間がいた。
一人はサリス。
少し意匠の変わった高貴さを漂わせる執事服を着て、柔らかい笑みを浮かべて佇んでいる。
腰に掛けている二振りの細剣は、今まで使っていた物とは違っている。
何というか………神々しさを感じる。
あの細剣が神からの贈り物なのだろう。
二人目は……………誰だよお前。
サリスの執事服と同じく高貴さを漂わせるメイド服を着ている美少女。
赤い瞳を細めてニコニコと笑っており、長い金髪は頭の横のやや高い所で結ってある。
サイドアップポニーテルというやつだろうか。
幼さを感じさせる髪型が子どものような無邪気な笑顔に良く合っていた。
三人目は………………レイ………だよな?
忍者のような黒装束を着ているが、普段着けているはずの口当てを下げている為、にやけたイケメン面が露呈している。
くすんだ灰色の短髪に赤い瞳。
イケメンのはずなのに、関西のチャラ男のような雰囲気のせいで三枚目な印象を受ける。
見た目はレイなのだが…………透けてない。
これは一体どういう事か。
いや、良く見れば見慣れない首飾りをしている。
これが神からの贈り物だとしたら、それの効果かもしれない。
話したい事が色々あるが、まずは一言。
「…………お前誰だよ。」
俺は、メイド服を着た美少女にそう言った。
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二度に渡る激闘を制した深層の主の間。
そこに女の鳴き声が響いていた。
「ぐすっ……うぅぅぅ………酷いです………あんまりですぅ…………ぅぅぅぅぅ…………」
「だから謝ってるじゃないか。冗談だって。わかってたよ一応。」
「一応って……一応って何ですかぁ………ぅぅぅぅ……」
俺はいま、泣き崩れているメイド服の美少女、セレスを懸命に宥めている。
あの俺の言葉に酷くショックを受けてしまったそうだ。
しかし俺の気持ちもわかるだろう。
今まで骨だった奴が、急にメイド服の美少女になったのだ。
誰だって疑問に思うはずだ。
「うぅぅぅ………サリスの時はそんな事言わなかったじゃないですか!!」
「いや、それはお前…………サリスはサリスだからだろ。」
「だったらどうして私は違うんですかぁ!?」
「それはお前…………セレスがセレスだからだろ。」
「微妙に言い方が違います!ニュアンスはかなり違います!!」
また泣き出してしまった。
レイはやれやれと首を振って呆れている。
サリスはどちらの味方をすれば良いかとオロオロしている。
その後、サリスに手伝ってもらって何とか泣き止ませる事ができた。
「とにかく、セレスが人間になっているのは進化のせいなのか?それともその指輪の効果か?」
「これは指輪の効果です!人化の指輪って言うらしいです!」
…………ふむ、外したらどうなるのだろうか?
「セレス、外してみてくれよ。」
そう言うと、セレスは気不味そうな顔をして一歩引いた。
「その………外さないと駄目ですか?」
「一応見ておきたいと思ってな。………何か嫌な事でもあるのか?」
「嫌というか………折角人間の姿になれたので………。」
……………まぁ、セレスも何だかんだ女の子だからな。
好んで骸骨にはならないか。
「それに、進化した姿は………何て言うか………。」
何やら言いにくそうにしている。
「まぁ良いじゃないか。ちょっと見るだけだからさ。」
「うぅ………わ、わかりました。」
そう言うと、セレスは指輪に魔力を流し込んだ。
すると、あっという間にメイド服の美少女は赤い豪奢なマントを羽織った骸骨に変化した。
それだけなら今までと変わらないのだが、白かった骨は濃紺っぽい黒に染まり、眼窩に浮かぶ光の球は桃色に近い赤だったのが、血のように濃い赤になっていた。
……………これは………
「何と言うか……………禍々しいな。」
「だからなりたくなかったんですよぉ!!!」
再び泣き出すセレスを急いで人間に戻らせた。
あんな禍々しい骸骨の号泣する姿なんてR-18でも足りないな、なんて思ったが決して口には出さなかった。
「あーそれで、セレスは他に何を貰ったんだ?皆二つ貰ったんだろ?」
「は、はい………私は人化の指輪と、このメイド服を貰いました。」
「……………なにゆえ?」
「何ですかその言い方……………私はただ、サリスが執事服を着ていたので、それに合わせてメイドになろうかと……。」
「そんな理由で神から貰う物を決めたのか!?」
「むっ、ご主人様はわかっておられません!!ご主人様に仕える私達にとって、従者の身分の証となる服装は重要なんですよ!!」
「でもレイの服はそのメイド服みたいな神々しい感じがしないぞ?」
「自分の場合、役割的に目立っちゃ駄目っすから。褒美は他のにしたんす。」
苦笑気味にそう言うレイ。
「ふーん、何を貰ったんだ?」
「自分はこの首飾りっす!これに二つの効果を付けてもらったんす!」
なるほど、そう言うのもありだったか。
「その能力ってのは?」
「一つは見ての通り、身体の物質化っす!これで自分も一緒に表に出られるっす!」
「もう一つは?」
「風貌を変える事ができるっす!新しく手に入れたスキルと相性が良いんすよ!」
ほほう、新しいスキル?
それは楽しみだが、後で纏めてステータスを見る時のお楽しみとしておこう。
「サリスは何を貰ったんだ?」
「私も姉さんと同じく、この執事服を頂きました。壊れず汚れず、物理にも魔術にも高い耐性を持つ優れものです。」
「ほう、そいつは凄いな!」
「私の時と反応が違います!!」
何やらセレスが五月蝿いが無視する。
「それで、もう一つは?」
「ご覧の通り、こちらの剣です。」
二振りの細剣を抜いて見せてくれた。
銀色に輝く細身の剣は、光もないはずの地底でもどこか輝いて見える。
寒気がするような鋭い刃。
これをサリスが使うと思うとぞっとする。
「良い剣だな。」
「はい、僕にとって生涯の愛剣となるものですから。」
そう言って剣を納める。
最後に俺が貰った三つの物を教え、念話の指輪に全員の魔力を登録した。
そして全員のステータスを魔眼にて一人ずつ確認する。
【ステータス】
『名前』
ネクロ
『種族』
グリムリーパー
『スキル』
屍霊の魔王Lvー
神眼Lvー
拳王Lvー
超再生Lvー
魔力支配Lvー
『称号』
元無能魔術師
邪神の寵愛
屍霊の魔王
亜神
拳王
竜殺し
屍霊王殺し
神獣殺し
種族はグリムリーパー……………死神か。
この場合屍神とでも言えば良いのか?…………どうでも良いか。
スキルがかなり変わっている。
というより、限界突破して統合されたようだ。
『屍霊の王』+『闇属性魔術』=『屍霊の魔王』
『魔眼』が限界突破して『神眼』
『体術』+『格闘術』=『拳王』
『再生』が限界突破して『超再生』
『魔力感知』+『魔力操作』+『無属性魔術』=『魔力支配』
といった感じ。
だがこのようにスキルが統合されるのは、亜神となった俺だけの特権らしい。
……どうしてそんな事を知っているのか?
スィーリアに聞いた。それだけ。
亜神とか魔王とか仰々しい称号が沢山だ。
どうせ隠蔽するから構わんか。
【ステータス】
『名前』
セレス
『種族』
ノーライフキング
『スキル』
魔術合成Lvー
魔導の王Lvー
魔力感知Lv5
魔力操作Lv5
火属性魔術Lv5
風属性魔術Lv5
土属性魔術Lv5
魔力回復促進Lv5
『称号』
元賢者
ネクロの眷属
名持ち魔物
最上級魔物
魔導の王
スキル『魔導の王』はとんでもなく凶悪なスキルだ。
魔術を行使する際の魔力操作の補助、消費魔力の削減、威力の増強、範囲の拡大…………と、魔術師ならば垂涎もののスキルらしい。
セレスの魔術が更に大きく強くなるのか…………逆に使う場面が限られるような気もするが、そこは調整できるようだ。
【ステータス】
『名前』
サリス
『種族』
ノスフェラトゥ
『スキル』
吸血Lvー
剣闘の王Lvー
体術Lv5
剣術Lv5
再生Lv5
見切りLv5
魔力感知Lv5
魔力操作Lv5
無属性魔術Lv5
『称号』
元剣聖
ネクロの眷属
名持ち魔物
最上級魔物
剣闘の王
スキル『剣闘の王』は、剣を所持している際に全能力に補正をかけてくれるらしい。
単純な効果ではあるが、それだけに強力なものだと思う。
特に剣で戦う事に特化したサリスにとっては……。
【ステータス】
『名前』
レイ
『種族』
スペクター
『スキル』
霊魂の王Lvー
分身Lvー
体術Lv5
短剣術Lv5
投擲術Lv5
気配察知Lv5
気配隠蔽Lv5
魔力感知Lv5
魔力操作Lv5
無属性魔術Lv5
闇属性魔術Lv5
『称号』
元忍者
ネクロの眷属
名持ち魔物
最上級魔物
霊魂の王
『物理透過』が『霊魂の王』に変化している。
その効果にあまり大きな違いはないらしい。
透過中の行動に色々と補正が入るとのこと。
それよりも、レイが言っていた新しいスキルとは『分身』の事だったのか。
魔力を分配して分身を作る事できるらしい。
分配した魔力によって分身体の強さは変わるとのこと。
神に貰った物質化や変化の効果は、分身にも有効らしい。
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ステータスを確認した俺達は、これからの事を話し合った。
このダンジョンを出る為には、主の間の奥の扉を開いた先にある転移陣に乗れば良いとのこと。
脱出した後どこに向かうかを話し合っていた。
とは言っても、現在の情報を知っているのは俺だけなので、ほとんど俺が勝手に決めている。
「とりあえず、ダンジョンを脱出したら西のミュートラル公国に入ろう。一番近いのはホライズ教国だが…………宗教国家はまだ行きたくないし。」
何となくクセの強い奴が多そうな気がする。
固定観念だろうか。
「もちろん賛成です!」
セレスが元気に返事をする。
「ご主人様の行く所ならば、たとえ地獄でもお供致します。」
いや、そんなとこ行かないから。
「偵察は任せて下さいっす旦那ぁ!!」
頼りにしている。
「さぁ、それじゃ行こうか!」
久し振りの地上にワクワクしながら、俺達は転移陣に踏み入れたのだった。




