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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第四章  【悪霊の墓】深層
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第十五話 ご褒美

目を開けると、そこには懐かしい光景があった。


次元が歪んだような歪な空間。


最初にスィーリアと知り合った場所だ。


確か………神域、と言っていただろうか。


当時の事を思い返していると、背後に気配を感じて振り返る。


そこには彼女がいた。


「スィーリア………。」


「ここで会うのは久し振りね。ようこそネクロ君。」


「いや、ようこそって…………。どうしてまたここに?」


「今のうちに君と話しておきたくて私が呼んだの。どうせ一ヶ月ほど目を覚まさないのだし。」


「………は?一ヶ月!?」


「そうよ、進化すればするほど、それにかかる時間は延びていくの。」


「いや、それは何となくわかってたけど………そもそもどうして俺が進化するんだ?最上級が文字通り一番上じゃなかったのか?」


「一般には知られていないけれど、実は更に上があるのよ。とは言っても、そこに至る魔物なんてほとんどいないのよね。………まぁ、魔物という範疇に収めるのなら、最上級が一番上でしょうけれど。」


「どういう事だ?」


「最上級の更に上は、魔物であって魔物ではない、という事よ。亜神だもの。」


「あ、亜神?………神になるのか?」


「亜神は神ではないわ。神に最も近付いた、しかし神にはなれない生物………それが亜神よ。魔物として扱うなら、神級の魔物って感じかしら。」


「神級…………何でそんな事に……?」


「今まで進化の条件について、具体的に教えた事はなかったわね。邪神の祝福を得ての進化の条件を教えてあげる。まずーーー」


スィーリアに教えてもらった内容を纏めると、進化の条件は以下のようになる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【進化条件】

『下級→中級』

・邪神の祝福(下位)を受けている事

・従者を一体以上作る事


『中級→上級』

・邪神の祝福(中位)を受けている事

・従者を三体以上作る事


『上級→最上級』

・邪神の祝福(上位)を受けている事

・眷属を三体以上作る事

・眷属が上級種族である事


『最上級→神級』

・邪神の祝福(最上位)を受けている事

・最上級の魔物を三体以上討伐する事

・最上級ダンジョンを一つ以上踏破する事

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「それ以外にも、従者となった魔物は、基本的に主の進化に呼応して進化したりするわね。」


「あー……まぁ思い当たる節はあるな。………祝福の下位とかってのは何なんだ?」


「祝福にも種類があるのよ。貴方の持つ『寵愛』は最上位のものね。私も貴方以外に与えた事はないわ。」


「そうだったのか………どうしてそれを俺に?」


「…………それは秘密よ。」


「そうか………。」


「とにかく、そう言う訳で貴方はこれから亜神になるのよ。」


「んー…………別に困る事はないんだろ?」


「えぇ、もちろんよ。」


「強くなるなら良いや。………話はそれだけなのか?」


「いえ、後はご褒美の話。」


「ご褒美?」


「ダンジョン踏破のご褒美よ。貴方達各人に、神によって作られた道具をあげる。」


「そんな凄そうな物……良いのか?」


「最上級のダンジョンを攻略したのだから、それくらいないとおかしいでしょ。」


………よくわからんが貰えるものは貰っておこう。


「そうか………それで、何が貰えるんだ?」


「それは貴方が決めるのよ。因みに、貴方の眷属達には既に希望を聞いて渡しているわよ。」


「あいつらは何を希望したんだ?」


「それは本人に聞きなさい。」


それもそうか。


「んー………じゃあ俺は…………………」


難しいなこれ………。


俺は武器は使わないし、防具だって特に欲しいと思わない。


よし、外に出た後の事を考えよう。


まず気になるのは、俺達の存在だ。


ステータスを見るには鑑定宝珠が必要で、俺の魔眼のようなスキルは本でも読んだ事がなかったし、レイですらも知らなかった。


だから勝手にステータスを見られる心配は無いとは思うが、何かの拍子にステータスを開示しなければならない場面があるかもしれない。


そういう時の為に、ステータスを隠蔽する為の道具を持っていた方が良いかもしれないな。


「………スィーリア、鑑定宝珠とかからステータスを隠蔽するような道具が欲しいんだが。」


「それは良いわね。どこで何が起こるかわからないのだし、貴方達の場合はバレたら終わりでしょうし。」


スィーリアはうんうんと頷いている。


「主である貴方が眷属のステータスも隠蔽できるようにしておくわね。」


それは有難い。


「あぁそれじゃ頼むよ。」


そう言うと、スィーリアは掌を上に向けて目を閉じた。


すると掌に光が集まって耳飾り(ピアス)の形を取った。


光が消えて現れた耳飾りは、黒地に銀の装飾がなされたものだ。


一見地味だけど密かに漂う高級感。


俺の好みに合わせてくれたのだろうか。


早速左耳に着けてみた。


「良いわね、似合ってるわよ。」


スィーリアが微笑んで誉めてくれる。


「あぁ、ありがとな。」


「それで、二つ目は何にする?」


………………ん?


「二つ目?何の事だ?」


「さっきのはダンジョン踏破に対する私からのご褒美。二つ目は疑った事に対する聖神からのお詫びよ。」


「そんなものもあるのか…………律儀だな。」


「聖神は真面目な(ひと)ですもの。」


「貰えるものなら貰うさ…………しかし、何にするかな…………。」


他に旅をする上で必要なもの………あっ


「物を沢山収納する道具が欲しい。」


所謂インベントリだ。


旅をするには欠かせないだろう。


「なるほど、言ってみるわ。」


するとスィーリアはまた目を閉じた。


聖神と通信でもしているのだろうか。


通信………いや、通神?になるのか。


そんなどうでも良い事を考えていると、やがてスィーリアは再び掌を上に向けた。


淡い光が集まり、そこに現れたのは手袋(グローブ)だった。


………………何で手袋?それも指貫?


その手袋は黒い革製の指貫グローブだった。


頭の中にフラッシュバックする過去。


十四才の夏、指貫グローブ、眼帯、真冬に向けられた絶対零度の視線…………………。


悶えそうになる自分を抑え、頭を振って正気を取り戻す。


「これは………?」


「これを着けて触れた物は、異次元に収納する事ができるわ。それも無限にね。」


触って収納するから手袋なのか。


しかしそれなら指輪とかでも良くないか?


「何で指輪とかじゃないんだ?それと、どうして指貫なんだ?」


「その方が喜ぶと思って。」


「お前は何を知っているんだ!?」


思わずスィーリアの肩を掴む。


「何を?………いえ、何も知らないけれど?」


スィーリアは不思議そうに首を傾げている。


「ネクロ君は無手で戦うのでしょう?指先は器用に動かせた方が良いと思ったのだけれど。神製の道具は何があっても壊れないし、籠手としても使えるんじゃないかしら?」


「あぁ………そう言う事か。」


思わぬまっとうな理由に心の底から安堵の息を漏らす。


スィーリアは未だ首を傾げているが、墓穴を掘る前に話を進めてしまおう。


「納得したよ。これは有り難く使わせて貰う。」


そう言って手袋を着ける。


心がムズムズするような不思議な快感を得るが全力で無視した。


「それじゃ、次が最後ね。」

     「ちょっと待て。」


「…………?」


スィーリアは再び首を傾げる。


「二つだけじゃなかったのか?三つ目は何なんだ?」


「三つ目は亜神昇格のお祝いよ。だから貰えるのは貴方だけ。」


「それは………貰って良いのだろうか?」


「貰えるものは貰うって言ったじゃない。」


「それはそうだが…………まぁ良いや、わかったよ。」


「変なネクロ君…………それで、三つ目は何にするの?」


三つ目……………これは意外にパッと浮かんだな。


聖神と連絡を取るスィーリアの光景が頭を過る。


「離れた位置でも連絡を取れるような道具が欲しい。」


「あら、そんなもので良いの?」


「ん、外では結構普通だったりするのか?」


「いえ、そんな事はないわ。あったとしても極少数だし、それも範囲はそこまで広くないもの。」


「ならそれで良いよ。それで、一つお願いがあるんだが……………」


俺の言葉にスィーリアが不思議そうな顔をする。


「その道具で、スィーリアとも連絡を取れるようにしてくれないか?」


今度は驚きに目を丸くした。


「ど、どうしてそんな事を?」


「だって、もう俺達なかなか会えなくなるんだろ?」


更に目を見開くスィーリア。


「………どうして、それを?」


「最初にスィーリアが言ったじゃないか。『今のうちに君と話しておきたくて』って……。」


「よくそんな事覚えてるわね。」


スィーリアは若干苦笑気味だ。


「俺の予想は間違っていたか?」


「いえ、合ってるわ。流石に地上にそう簡単に現れる訳にはいかないから。」


「だったら、せめて連絡する事くらい許してくれよ。」


「……………どうして、私と話したいの?」


「スィーリアには本当に感謝してるんだ。スィーリアが祝福をくれたから、俺はいまここに立っていられる。もしスィーリアに会わなかったら、俺は自我も持たない屍霊になっていただろうし。」


「…………………そう。」


「だからさ、これでお別れなんて嫌なんだよ。………駄目か?」


スィーリアは顔を伏せて沈黙している。


俺が何も言わずに待っていると、やがてスィーリアはゆっくりと顔を上げた。


「………はぁ、仕方ないわね。そんなに私と離れるのが嫌だって言うなら、許してあげるわ。」


渋々……という言い方をしているが、顔に浮かぶ笑みは隠せていない。


何だかんだこいつも嬉しそうだ。


………………引きこもりのぼっちだからな。


「何か変な事を考えていないかしら?」


「何でもないさ。」


勘の鋭い奴め。


「………まぁ良いわ。それじゃ作るわよ。」


毎度同じく淡い光が集まる。


出てきたのは黒字に金の装飾が入った指輪だった。


デザインが耳飾りと似ている。


「これ、指輪だよな?」


手袋着けているし、着けられないじゃないか。


すると、俺の疑問を読んだようにスィーリアが口を開いた。


「一度手袋を外して、指輪を着けてみなさい。」


スィーリアの言う通りにする。


右手の手袋を外そうとしたら、左手の方を外された。


スィーリアを見ると、柔らかい笑みを崩さずにこちらを見ている。


……………別にどこでも良いんだけどさ。


人差し指に指輪を着けようとすると、薬指に着けさせられた。


スィーリアを見ると、柔らかい笑みを崩さずにこちらを見ている。


……………この世界ではどうなるのだろうか。


深く考えない方が良い気がする。


「それで、どうすれば良いんだ?」


「指輪に魔力を流してごらん。」


言われた通りにする。


すると、指輪が金色の光を発して、指に溶けるように沈んでいった。


「おぉ…………ファンタジー………。」


一人で感動していると、スィーリアが俺の左手を取って、そこに魔力を流し始めた。


指輪を着けた場所が金色に光る。


「こうやって魔力を登録したら、いつでも念話できるようになるわ。」


試しにやってみる。


頭でスィーリアと会話しようと念じると、何となくスイッチのようなものが脳裏に浮かび上がった。


それを押すイメージをすると、スィーリアと繋がった感覚を得た。


よくわからないがそんな感じだ。


説明するのは難しいが、口を開かずとも言いたい事だけを言える。


なかなか便利な道具を貰った。


左手に手袋を着け直すと、スィーリアが口を開いた。


「そろそろここを出た方が良いわね。」


「あー……そうか。」


何だか少ししんみりとした雰囲気になってしまう。


すると、スィーリアが小さく笑った。


「ふふっ………もう、そんなに寂しそうな顔をしないで?またいつか会えるわ。」


「そんな顔してない………たぶん。…………まぁ、話すだけならいつでもできるしな。」


お互いに微笑む。


「それじゃ、そろそろ行くよ。」


「えぇ、さようならネクロ君。またいつか会いましょう。」


「あぁ、それじゃあなスィーリア。またいつか………必ず。」


そう言って手を振った。


底に落ちていく感覚と共に、再び俺の意識は消えていった。

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